廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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ガガンボ類の検索

以前から、ハエやカの名前が分かるといいなと思っていました。先日、「絵解きで調べる昆虫」という本を手に入れたので、検索表のもっとも初めに出てくるガガンボ類について調べてみようと思いました。

実は、以前、水生昆虫を調べている知り合いがいて、一緒に調べてみないかといわれて始めたのですが、環境調査で水生昆虫を調べておられる方は多く、また、その関連の本も多く出されていたので、私は成虫を集めてみようと思って、少しだけ標本を作ったことがありました。カゲロウ、トビケラ、カワゲラ、ヘビトンボなどです。その時に、ガガンボも少し展翅してみたのですが、さっぱり名前が分からないので、途中で止めてしまいました。その時の標本が少しだけ残っていたので、検索をしてみようと思い立ったのです。それから、3日間。苦しみに苦しみぬいて、やっと結論めいたところまでたどり着きました。

イメージ 1

調べたのはこの4種類です。おそらく、科が違うのではと思って選びました。

まず、a)の個体についてです。

イメージ 2

結論的には、a)はガガンボ科ガガンボ属になりました。その時に使った検索の項目が右側に書いてありますが、○は「絵解きで調べる昆虫」、●は「日本産水生昆虫」(東海大学出版会)に載っていた項目です。まさか、「日本産水生昆虫」がこんなに役立つとは思いもよりませんでした。この本の約半分はハエ目についてで、成虫の検索表も充実していました。翅脈の名称は「日本産水生昆虫」によっています。「絵解きで調べる昆虫」とは一部違う名称があったので、その場合は(...)で書いてあります。

イメージ 3

ガガンボ科はSc脈がR1脈で終わるという、上の写真のi)の矢印の部分を見つけるとほぼ決定的です。ii)は前脛節端にある一本の距棘、iii)は単眼がないことを示す頭部の写真です。

イメージ 4

b)はヒメガガンボ科カスリヒメガガンボ亜科という結論です。ガガンボ科と違いは、Sc脈が翅縁に届くところです。a)のガガンボ科もb)のヒメガガンボ科も種類数が多くて、種の特定までは至りませんでした。

イメージ 5

c)はR4とR5に分かれたり、M1とM2に分かれたり、また、A脈が1本だったりと特徴的な脈相をしているので、科の特定は簡単でした。この場合は種類数が少なく、また、「日本産水生昆虫」では翅の模様で検索していくやり方だったので、とうとう種の同定までできました。種までたどり着くとちょっと感動しました。でも、実はこんな検索をしなくて、昔、翅の絵合わせだけで決めた名前と全く同じだったのです!

追記2016/04/22:菅井 桃李さんから、「最近、オビコシボソガガンボについて少し調べたら、ガガンボ類の大家、中村剛之先生が交尾器を精査したところ、原記載通りの交尾器を持つものは関東地方一帯でしか見付からなかったそうです。」というコメントをいただきました。ということは、これも違うかもしれませんね。上の検索は「日本水生昆虫」に載っているコシボソガガンボ亜科6種についての種の検索だったのですが、「日本昆虫目録」には12種が載っていました。このうち、オビコシボソガガンボ Ptychoptera japonicaの項の備考には、再記載T. Nakamura and T. Saigusa, "Taxonomic study of the family Ptychopteridae of Japan (Diptera)", Zoosymposia 3, 273 (2009)の中部以西の記録はおそらく誤同定となっていました。Zoosymposiaも手に入らないし、その後どうなったのかもよくわかりません。たぶん、違うのでしょうね

追記2016/04/22:C. P. AlexanderによるP. japonicaの原記載は次の論文に載っていました。

C. P. Alexander, "Report on a collection of Japanese crane-flies (Tipulidae), with a key to the species of Ptychoptera [part]", Can. Entomol. 45, 197 (1913). (ここからダウンロードできます)

この中に載っている
P. japonicaの翅の模様は上の写真の個体のものとよく似ています。ついでに♂交尾器の図も出ていました。上の個体は♂みたいなので比べてみたいと思います。ただ、乾燥標本なので果たして分かるかどうか

イメージ 6
最後のd)の種は一番大変でした。「絵解きで調べる昆虫」では、消去法で最後にはヒメガガンボ科にたどり着くのですが、M4の部分がどうしてもヒメガガンボ科のものと異なります。半ば諦めていたのですが、「日本産水生昆虫」のヒメガガンボ亜科の検索を行うと、意外に早くオビモンヒメガガンボ族にたどり着きました。

イメージ 7

その決め手は、i)の複眼に毛が生えているという点〈矢印)、ii)触角の節の数、及び、翅脈で矢印のつけたsc-r脈の位置、M3とM4脈との関係などです。ただ、「日本産水生昆虫」では、ガガンボ科ヒメガガンボ亜科オビモンヒメガガンボ族になっているのですが、「原色日本昆虫大図鑑III」ではオビヒメガガンボ科に格上げになっていました。

どうやらガガンボの上位分類がだいぶ変更になっているようです。そこで、その変遷についても調べてみました。

イメージ 8
これは、原色日本昆虫図鑑(1977)、Manual of the Nearctic Diptera (MND)(1981)、日本産水生昆虫(2005)、原色昆虫大図鑑(2008)、それから、最近のPetersenらの論文(2010)を比べたものです。例えば、ヒメガガンボについて辿ってみると、科→亜科→亜科→科→亜科と複雑に変わっています。オビヒメガガンボについては、亜科(?)→族→族→科→科と大出世をしています。検索に3日間もかかったのは、時代と共に変化する、このややこしい分類のためでした。でも、少しずつ、ハエ目にも慣れていく感じがします。

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最近、オビコシボソガガンボについて少し調べたら、ガガンボ類の大家、中村剛之先生が交尾器を精査したところ、原記載通りの交尾器を持つものは関東地方一帯でしか見付からなかったそうです。

オビモンヒメガガンボで検索したらここが出たので、報告までに(笑)

2016/4/20(水) 午後 3:50 [ 菅井 桃李 ] 返信する

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菅井 桃李さん、こんばんは
旅行に行っていてお返事が遅れてしまいました。
だいぶ前の記事だったので内容を忘れてしまっていたのですが、「日本水生昆虫」に載っているコシボソガガンボ亜科6種での種の検索だったみたいです。「日本昆虫目録」には12種が載っているのですが、japonicaについての中部以西の記録は誤同定となっていました。このときの論文zoosymposiaも手に入らないし、その後どうなったのかもよくわかりません。たぶん、違うのでしょうね。情報どうも有難うございました。

2016/4/21(木) 午後 9:34 [ 廊下のむし ] 返信する

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