廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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先日、マンションの廊下の壁に黒っぽい小さなトビケラが止まっていました。ちょっと前にトビケラの科の検索を行ったことがあったので、今回もやってみようと思って採集してきました。

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止まっていたのはこんなトビケラです。翅の長さが1cm足らずの小さなトビケラです。いつもだったら、絶対に見過ごすところなのですが、今回はちょっと調べてみようと思って採集したのです。

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採集してから実体顕微鏡で観察し、その後、展翅したら、翌日には立派な標本になっていました。そこで、もう一度、展翅を外して実体顕微鏡で詳しく調べ直してみました。

「原色昆虫大図鑑III」に載っているトビケラの科の検索表を使って調べていくと、最終的にコエグリトビケラ科♀にたどり着きました。その時使った検索表の項目は次の通りです。

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これを写真で確かめていきます。

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追記:Fig.5を改変しました

番号は検索表の項目の番号です。まず、項目2の単眼については、Fig.2を見ていただくと分かるように、単眼があります。従って、ここはYESになります。次に項目3については、Fig.3を見ていただくと、小顎肢には全部で5節あるので、ここはNO、次の項目6もNOになります。

次の項目8は分かりにくいのですが、Fig.5の脈が先端で分岐するかどうかについての項目です。どの部分をいうのかよく分からなかったので、文献を調べてみると、"The Insects and Arachnids of Canada" Vol. 7という本(download可能、ただし、フランス語)の中で、Fig. 286にApatania属(コエグリトビケラ属)の翅脈の図が出ていて、Fig. 5に載せたようなIからVまで番号が振られていました。おそらく、これのことだろうと思って見てみると、前翅、後翅ともにIV叉がないので、この項目はNOということになります(実は、項目8については最初無視して、後から付け加えました)。

項目9と11は小顎肢の節の長さに関するものです。項目9はFig.3でも見えるように、第5節は第4節とほぼ同長なのでNO。項目11は写真では分かりにくいのですが、第1節は第2節より明らかに短いので、ここはYESになります。

項目12は翅脈に関するものです。Fig.5を見ると、後翅のM脈は末端で3つに分かれています。従って、NOということになります。項目13はFig.4のように、前脚脛節の距は1本だけなので、YESです。最後に、項目14は前翅長に関するものなので、測ってみると約9mmでYESとなり、コエグリトビケラ科の♀にたどり着きました。(追記:翅脈の名称を電子ジャーナルの文献 S. Chuluunbat et al. Mongolian J. Biol. Sci. 8-1 (2010)Apatania mongolicaの図に従って書き換えました。M脈の名前の付け方が間違っていました。文章もそれに従って変更しました

「日本産水生昆虫」によると、コエグリトビケラ科は近年エグリトビケラ科の亜科から独立した科で、日本にはイズミコエグリトビケラ属、コエグリトビケラ属、イワコエグリトビケラ属、クロバネトビケラ属の4属が知られているそうです。それぞれの属に属する種については「トビケラ専科」というホームページに詳しく載せられています。

コエグリトビケラ科の属への検索は「日本産水生昆虫」に出ていました。これもたどっていくと、結局、コエグリトビケラ属に辿り着くのですが、その時使った検索の項目は次の2項目です。

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項目1の「後翅の中室は閉じる」についてはだいぶ迷いました。翅脈の名称が分からなくて、中室の位置もよく分からなかったからです。先に紹介した"The Insects and Arachnids of Canada" Vol. 7のFig. 286はApatania zonellaというコエグリトビケラ属の種の翅脈が載っていました。さらに、ネットで調べていると、Chuluunbatの論文にApatania mongolicaの翅脈とその名称が載っていました。これらの図を参考に中室の位置をFig. 5のようにmと書くと、確かに中室は開いています。また、展翅前に撮影した中胸小盾板(Fig.6)を見ると、瘤状隆起は明らかに2つです。これらの結果から、項目1をNOにしました。(追記:翅脈の名称を電子ジャーナルの文献 S. Chuluunbat et al. Mongolian J. Biol. Sci. 8-1 (2010)Apatania mongolicaの図に従って書き換えました。M脈の名前の付け方が間違っていました。文章もそれに従って変更しました)(追記:Fig. 5に加えたnygmaという点は、Encyclopedia of Entomology 2nd ed. p. 2655-2658によると、トビケラ目、シリアゲムシ目、ハチ目などで見られる構造で、機能的にはよく分かっていないのですが、発生段階で翅脈が分岐するときに必要とされる構造かもしれないとのことです)(追記:Fig.5の後翅の矢印の部分はApatania zonellaの翅脈では離れているので、翅脈が交差していると考えるよりも、2つの翅脈が接していると見た方が良いようです

項目3の前翅のSc脈はFig.5に示すように、c-r横脈のところで止まっています(矢印の部分)。従って、YESとなり、コエグリトビケラ属にたどり着きました。実際、Apatania zonellaApatania mongolicaの翅脈と比べてみるとよく似ているので、間違いなさそうです。

ここから、種への検索は手立てがなかったのですが、「トビケラ専科」によるとヒラタコエグリトビケラApatania aberransが最も普通にいる種ということなので、文献を調べてみました。ビワコエグリトビケラの記載論文(H. Nishimoto, Jpn. J. Ent. 62, 775 (1994))の中に、ヒラタコエグリトビケラ♀の交尾器の図(Fig. 5)が出ていました。

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その図と写真(Fig. 7)とを比較すると、非常によく似ているので、おそらくヒラタコエグリトビケラで間違いないと思うのですが、どの程度似ていればよいのか分からないので、今回はヒラタコエグリトビケラ近傍の種というのが結論になります。

いつも見過ごしているトビケラですが、種まで分かってたいへん楽しくなりました。これからもどんどん調べてみたいなと思います。

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