廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この間からケバエ科の虫がマンションの廊下にたくさん集まってきていました。一度、名前を調べてみようと思って、いくつか採集してきました。採集してきたのは♀だったのですが、よく見ると次の3種類のケバエが含まれていることが分かりました。

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一番上のaは前胸背が黒いのですが、脚は大部分茶色です。bは前胸背と脚の大腿部が先端を除いて茶色、残りは黒です。最後のcは前胸背も脚もだいたいは黒くなっています。体長はそれぞれ、4.5mm、6.5mm、6mmくらいです。いずれの個体も前脚の脛節の先端に二股になった刺があります(図の矢印)。

検索については、なにぶんにも素人がやっていますので、間違っていることも多いと思いますが、悪しからず・・・。まず、これらがケバエ科に属するかどうかは、日本環境動物昆虫学会編の「絵解きで調べる昆虫」を参考にして調べることができます。その部分を抜粋して書くと、

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のようになります。例として、一番上の写真aの個体で調べていきます。
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この種は最終的にBibio aneuretusと同定される種ですが、ガガンボやアミカでなければ、C脈(翅の肋骨の役目をする脈)が外周を巡るかどうかで、チョウバエやカの仲間から区別されます。Fig.2のように外周を回るC脈は翅の上半分だけしかありません。さらに、Fig.2を見るとM脈で囲まれた部分がないので中室はありません。また、Fig. 1で示したように、単眼があって、さらに、Fig.2で示すようにM脈とCu脈で囲まれた第2基室があります。最後にRs脈はR2+3脈になるだけで分枝ができません。このことから、この個体はケバエ科であることが分かります。結局、翅脈のパターンを見るとケバエ科であることがほぼ分かります。

次にケバエ科の属の検索ですが、これには、D. E. Hardy and M. Takahashi, Pacific Insects 2, 383 (1960)という論文を用いました。この論文はこちらからpdfがダウンロードできます。この論文は英語で書かれているので、必要な部分を抜粋して訳してみました。

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これによると、先程も出たRs脈の分枝がないという点と、写真aからcの矢印で示した1対の刺があることで、Bibio属であることが分かります。

ここから先の種の検索も同じ論文に載っています。これも同様に必要な部分だけを抜粋して訳してみました。

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先ほどのBibio aneuretusと推定される個体を例にして、この検索表で追いかけていきます。①と③は同じような内容で、Fig.1cの写真を見ると分かりますが、前脚脛節の刺は先が尖っていて、なおかつ、長さはだいたい等しくなっています。②は、Rsと書かれた部分の脈の長さとr-mと書かれた脈の長さの比較で、両者はほぼ等しいのでこの項目はOKになります。④は翅に関する部分で、翅は無色透明なので、⑥に跳び、♀なので、さらに、⑱に跳び、胸部が黒なので、㉒に跳びます。さらに、Fig.2のM脈は2本に分かれ、共に翅の縁まで届いているので、㉓に到達します。翅の色を確かめ、さらに、前脚腿節裏側を見てみます。

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Fig.3に示すように、確かに腿節裏側の先端に近いところで、かなり太い毛が生えています。これらのことから、この個体はBibio aneuretus(キスネアシボソケバエ)だと思われます。(追記:B. aneuretusは「原色昆虫大図鑑III」と「札幌の昆虫」に出ていました

同様のことを他の個体でも行ってみます。

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この個体は基本的に先ほどと同じ道を辿りますが、⑱で胸の色が茶色なので、⑲に跳びます。頭部はFig.4aの写真を見ると分かりますが、丸い形をしていて、Fig.4bに示すように口肢が触角の近くから出るので、㉑に進み、脚の脛節と跗節が黒いので、Bibio simulansになります。なお、⑲の「軸節の柄」はcardo stipitesの訳だったのですが、よく分からなかったので、飛ばしました。(追記:Hardy and Takahashi(1960)によると、♀の場合、脛節と跗節の色だけでB. simulansとB. omaniを区別することは不可能だろうということが書いてありました。従って、ここではB. simulans(メスアカアシボソケバエ)またはB. omani(和名なし)とした方がよいでしょうまた、これまで報告してきたB. omaniはB. simulansまたはB. omaniとした方がよいと思われます。なお、前者は「原色昆虫大図鑑III」に載っています)(追記2:神奈川県立生命の星・地球博物館の渡辺恭平氏によるヒメバチ科の形態用語辞典によると、cardoは軸節、stipitesはstipesの複数形で蝶咬節と訳すそうです。いずれも小腮の主要構成部分で、「stipesは基部でcardoと,先端でgalaelaciniaと関節し,側方で小腮肢を伴う」と書かれていました。この意味はこれから勉強してみます

最後の個体は全身真っ黒です。各部の写真を示します。

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この場合は検索表の④で翅が色づいていることから、⑤に進み、Bibio singularisになりました。(追記:Hardy and Takahashi (1960)によると、B. singularisは北海道に分布し、発生時期も6月と今回の個体とは合いません。もう少し検討が必要なようです

結局、3種とも異なる種類のBibio属になりました。この検索表は基本的に色や形で分類しているので、分かりやすいのですが、例えば、前脚の内側と外側の刺が同長と言われても、どの程度を同長としてどの程度を違うとするのかなどははっきりしません。翅の色も薄く色づくというのがどの程度をいうのかが判断しにくい点もありました。結局、何種類かの標本と比較しながら検索するようにできているようです。いずれにしても、この検索が合っているかどうかは、この論文自身が記載論文になっているので、その内容と確かめなければいけないのですが、それはまた後程してみたいと思います。

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ケバエは双翅目にしては分かりやすいですが、やっぱり簡単ではないですよね。

検索表で分からない部分は専門家に聞くしかありませんね。 削除

2014/4/29(火) 午後 1:34 [ 通りすがり ] 返信する

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通りすがりさん、いつもコメント有難うございます。
検索表を使いこなすのは、私のような素人にとっては、どれも難しい感じがします。でも、調べていくと何かが少しずつ分かってくるのが、逆に楽しみになってきました。これからもぼちぼちと進めていきますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

2014/4/29(火) 午後 3:06 [ 廊下のむし ] 返信する

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