廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この間から見ていたノミバエの顕微鏡写真を何枚か撮ったので、ここでまとめて載せておきます。ノミバエの幼虫は植物の腐ったものや動物の屍体などに発生します。また、家屋害虫としても、大量のノミバエが家の中に侵入したという報告もあります。体長がわずか2mmほどの小さいハエなのですが、何かとお騒がせのハエのようです。

このノミバエ、マンションの廊下でこの間から2種類も見ることができました。

イメージ 1

イメージ 2

この2種です。色が全然違いますが、頭の格好が似ているので、何となく同じ仲間かなと思ったら、ノミバエの仲間でした。体長は双方共わずか2mmです。

ノミバエについてはZiramさんに詳しく教えていただき、だいぶ分かったきました。というか、難しいということが分かってきたという方が正しいかな。種類はどれだけいるかほとんどわからないような状態らしいのですが、とりあえず、検索表を使って属の検索をしてみました。

使った論文は次の2つです。

金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

この中の検索表を使うと、上の2種ともトゲナシアシノミバエ亜科メガセリア属に到達しました。そこでまた、必要な部分だけを抜粋して載せます。

イメージ 14


イメージ 3
上が金子氏らの検索表、下が田中氏の検索表です。この検索表の項目は基本的に同じ内容です。そこで、今日は検索表を順番に見ていかないで、その要点だけを確かめることにします。いつも言いますが、素人がやっていますのでそのつもりで見てくださいね。(追記:Ziramさんから、田中氏の検索表で「微刺毛列」と言うのが「氈毛列」で、この写真の「剛毛列」に一致しますとのコメントをいただきました。氈とはカモシカ(氈鹿/羚羊)を指す漢字で、カモシカの毛のように短く茂ったように見えることから付いた名前かと思われますとのことです。どうも有難うございました

最初に上の黒い種からです。まず、ノミバエ科かどうかの科の検索はその変わった翅脈からだけで判断できますので、ここでは省略します。

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

これまでに載せた写真ばかりですが、各部の名称などを入れました。検索表にはいろいろな項目が載っていますが、トゲナシアシノミバエ亜科の特徴としては

○脛節は基部2/3に独立した剛刺毛を欠く
○触角上棘毛は斜下方に彎曲している
○中胸側板は常に2個に区切られている

この3つです。一番上の写真を見ても、脛節の基部に剛刺毛はありません。また、3番目の写真を見ると、触角上刺毛は下を向いていることが分かります。さらに、次の写真で中胸側板を見てみます。

イメージ 7

前の方から前脚、中脚の基節が下側に見えますが、その上にある側板は中脚では2分しています。ということでトゲナシアシノミバエ亜科らしいことが分かります。

メガセリア属へは、

○後脚脛節背面には1 列の氈毛列があり,後背面には氈毛列にそってほとんど常に1 列の毛列がある

という特徴を見てみます。

イメージ 8

後脚脛節の背面には剛毛列と絨毛列が並んでいます。この2種類の毛は同じ所に生えているわけではなく、背面の両端に生えています。ということで、メガセリア属らしいことが分かりました。さらに、次の条件で亜属が分かります。

中胸上前側板に細毛、刺毛を欠く           メガセリア亜属
中胸上前側板に細毛があり、ときに刺毛も具える アフィオカエタ亜属

この写真の種を見てみると、中胸側板の上の方(中胸上前側板)に短い毛と少し長めの毛が生えていることが分かります。それで、アフィオカエタ亜属であることが推測されます。ということで、この種はトゲナシアシノミバエ亜科メガセリア属アフィオカエタ亜属らしいことが分かりました。これ以上はよく分からないのですが、次の論文

林利彦ほか、「関西地方におけるフユイエノミバエ(新称)による冬期の家屋内大量侵入被害(双翅目,ノミバエ科)」、衛生動物 50, 157 (1999). (ここからダウンロードできます)

を見ると、家の中に大量侵入したフユイエノミバエMegaselia meconicera (Speiser, 1925)と細かな特徴がよく似ていました。最終的には交尾器を見ないといけないと思いますが・・・。

2種めについては次の写真を見てください。

イメージ 9

イメージ 10

イメージ 11

イメージ 12

イメージ 13

色は全く違いますが、基本的には最初の種とまったく同じような構造をしています。ただ、中胸側板の2分され方が少し異なっています。もっとも違うのは中胸側板の上側(中胸上前側板)に毛がないことです。従って、アフィオカエタ亜属ではなくて、メガセリア亜属の方に属するのではないかと思います。こちらはここまででした。(追記:Ziramさんから、「今回のノミバエですが、検索表に照らせば中胸上前側板の毛の生え方を見るに同定は間違いないと思います。」というコメントをいただきました。どうも有難うございました。とりあえず、ホッとしました

ただ、ノミバエ科の全貌自体がまだよく分かっていないようで、亜科の名前についても論文で結構違っていました。例えば、Disney and Cumming (1992)では、Aenigmatiinae、Metopininae、Phorinae、Termitoxeniinae、Thaumatoxeninaeの5つの亜科が書かれていたのですが、Brown (1992)ではこのうち3つしか一致した名前がありませんでした。ネットでも亜科が載っていないサイトがほとんどでした。いろいろと難しい仲間ですね。でも、属あるいは亜属に近づけただけでも親しみが湧いてきました。

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[雑談および用語補足]
2003年に、しかも日本語の検索表が出ていたのですね。私の本職は「花粉が特定の虫にだけ運ばれる→花の種が分離→進化になる(?)」のような内容についての研究で、ノミバエ科はちょうど対象の花に来る虫の1つでした。「Megaselia」の英語ばかりで検索していたので、まさかこんな便利な検索表が既にあったとは…完全に見落としていました。(私のサンプルには顔が突出しているものはいなかったと思うので誤同定はなくMegaseliaだとは思いますが:誤同定怖い…)

あと、田中和夫氏の屋内害虫 24, 67 (2003)で言っている「微刺毛列」と言うのが私が知っている「氈毛列」です。[検索表のキー6番の形質ですし]

氈とはカモシカ(氈鹿/羚羊)を指す漢字で、カモシカの毛のように短く茂ったように見えることから付いた名前かと思われます。

おそらく剛毛列は挿図1bに見られるように微刺毛列と一緒になっていると思います(写真と同じ)

2015/1/29(木) 午後 6:52 [ - ] 返信する

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[本題]
今回のノミバエですが検索表に照らせば中胸上前側板の毛の生え方を見るに同定は間違いないと思います。

P.S.
古い研究室で中胸側板を綺麗に撮影できる顕微鏡が無いので羨ましいです。逃避していなければ私の研究の続きを後輩がやっているはずなので撮影法を教えてあげて欲しいぐらいです。

2015/1/29(木) 午後 7:27 [ - ] 返信する

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Ziramさん、コメント有難うございました。同定が合っていそうでほっとしています。論文を見ても専門用語が分からず、いつも四苦八苦しています。

> 私の本職は「花粉が特定の虫にだけ運ばれる→花の種が分離→進化になる(?)」のような内容についての研究で、ノミバエ科はちょうど対象の花に来る虫の1つでした。

楽しそうな研究ですね。何か目的があってやれるのはいいですね。私の場合はただ虫を見ているだけで先の展望はありません。でも、虫を拡大してみると思わぬ構造が見つかるのでそれが楽しみで続けています。

> あと、田中和夫氏の屋内害虫 24, 67 (2003)で言っている「微刺毛列」と言うのが私が知っている「氈毛列」です。

そんな感じもしたのですが、ちょっと自信がなくて飛ばしてしまいました。どうも有難うございました。

撮影方法はいつでもお聞きください。私も試行錯誤でやっていますが、研究のお役に立てれば幸いです。

2015/1/29(木) 午後 8:19 [ 廊下のむし ] 返信する

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