廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

全体表示

[ リスト ]

先日、マンションの廊下で小さなクモガタガガンボを見つけました。見つけたクモガタガガンボというのはこんな虫です。

イメージ 1

この虫は翅が退化し、天敵のいなくなった冬に、雪の上を歩き回るというので有名です。およそガガンボには似ていないのですが、それでも、ガガンボ科ヒメガガンボ亜科ホシヒメガガンボ族クモガタガガンボ(Chionea)属に属しています。先日のブログに書きましたが、検索表で調べた結果、カネノクモガタガガンボらしいことが分かりました。

イメージ 2

折角なので採集してきて、少し調べてみました。向きを変えようと思ってピンセットで腹を押さえていたら、右の部分が少し潰れてしまいました。体長は4.1mm。脚が異様に長くて、確かに翅はありませんが、よく見ると痕跡のようなものがあります。腹の後ろには長い産卵管が見えています。

さて、調べると言ってもどこをどう調べて良いのやらさっぱり分からないので、クモガタガガンボの特徴が書いていないかなと思って、少し文献を探してみました。「原色昆虫大図鑑III」には載っていませんでした。代わりに、「日本産水生昆虫」には載っていましたが、

イメージ 3

わずかこれだけでした。脚の基部には基節があるのですが、それが左右に開いているのは上の写真でも分かります。さらに、ネットで調べていると、こんな報告が見つかりました。

K. Tanida, "白山麓で採集されたクモガタガガンボ(ユキガガンボ), Chionea sp.(昆虫;双翅目)の雌成虫について"、石川県白山自然保護センター研究報告 14, 43 (1987).(こちらからダウンロードができます)

ユキガガンボともいうのですね。この中で、谷田氏は真冬の白山の雪の上でクモガタガガンボ♀を1匹捕まえたそうです。体長6mm。いろいろと調べて見ると、カネノクモガタガガンボの♀と非常によく似ていることが分かりました。ただ、断定できないので、Chionea sp. としています。この報告には説明と共に詳細な図も載っていたので、これをもとにして今回の個体も調べてみようと思いました。

原文は英語なのですが、虫の外見的特徴の部分を私の拙い英語力で訳してみました。

イメージ 4

特徴は頭部、翅、脚、産卵管に分けて書かれていたので、表にまとめてみました。まずは触角が11節であることと、触角各節の特徴について書かれています。私もその部分を見てみました。

イメージ 5

非常に変わった触角です。柄節は円筒形で強い剛毛があります。梗節も円筒形と書かれていますが、写真では先端部分に行くに従いやや膨れています。この写真では、鞭節第1節(触角第3節)が楕円体のように見えますが、これは向きの問題で実際は円錐形に近いです(次の写真を見て下さい)。その他の鞭節は細長くて、長い刺毛が生えています。ということで、だいたいは書かれている内容と合っています。

イメージ 6

この写真は頭部を横から見たところです。先ほどの触角で鞭節第1節が円錐形というのが分かるでしょう。口肢が見えていますが、4節で各節がほぼ同じ長さというのも合っています。

次は翅についてでです。上の写真でも前脚と中脚の間に細長くて白いものが見えますが、これが翅の痕跡でしょう。

イメージ 7

この写真では翅がもう少しはっきり見えます。さらに拡大してみました。

イメージ 8

こんな感じになりました。翅脈のようなものは見えませんが、全体にやけに白く見えます。

次は脚に関するものです。脚は長くて、腿節と脛節はほぼ腹部と同じ長さという記述がありますが、上の写真を見る限り、腹部の長さよりは短く見えます。跗節についてはその部分だけを拡大してみました。

イメージ 9

跗節第1節が長いというのはまさにその通りで、第2節のほぼ3倍というのも当たっているようです。ただ、第4節が第3、第5に比べて短いようです。

最後は産卵管についてです。この部分の写真を載せます。

イメージ 10

イメージ 11

上は横から、下は背側と腹側からの写真です。各部の名称は谷田氏の報告にある図を参考につけてみました。報告にあるように、2対の長い硬化した突起が見えます。こういうのをvalve(弁)というのですね。背側にあって長いものを尾角(cercus)というようで、書いてある通り、先端近くで少し上に曲がっています。あまり、先は尖っていませんが・・・。腹側にあって長さが半分くらいのものをhypogynial valveというようですが、日本語訳が見つかりませんでした。これが刀の形だというのですが、上側を刀の刃だと思うとそう見えなくはありません。刃の方にはやや長い毛が生えています。逆に下側には粗い毛が基部近くに生えているというのも記述通りのようです。

ということで、細かいところで若干異なるところもありますが、大まかには記述とよく合っています。九大の目録にはChionea属は3種ということになっていますが、通りすがりさんによるとその後も増えているようなので、カネノクモガタガガンボというのもまだ怪しい感じですね。それにしても変わった形の虫ですね。

追記:今回は顕微鏡写真を撮るのにずいぶん苦労しました。この間、色々と調べて分かったつもりだったなのに・・・。背景として黒いスポンジを置くと、コントラストが強くなりすぎ、また、スポンジの泡のような模様が背景に写ってしまってどうも変になります。背景が白いとやはり全体に霞がかかったような写真が撮れます。結局、2枚のスライドグラスの間にスペーサを入れて、背景をなくしてしまって撮ったのが、触角の写真でした。生物顕微鏡で5倍の対物鏡を用いています。それでも、ちょっとコントラストが強すぎる感じですが、逆に幻想的な雰囲気が出てきました。うーむ、なかなか難しい

この記事に

閉じる コメント(2)

顔アイコン

不気味といっていい姿ですが、部分部分を見ていくと、精巧に作られた未来兵器という感じがします。部品の連結のような中で細胞や神経組織が生きている、生き物って不思議ですね

2015/2/8(日) 午前 7:31 [ あおやまはるま ] 返信する

顔アイコン

確かに不気味ですね。クモガタという名前が分かるような気がします。あおやまはるまさんは何でも未来兵器に見えてしまうみたいですね。でも、確かに外観は不気味でも、各部はたいへん精巧に作られていますね。

2015/2/8(日) 午前 7:50 [ 廊下のむし ] 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事