廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

全体表示

[ リスト ]

2月24日の記事に、ノミバエにしてはやや大きめのハエを見つけたと書きました。いままでのノミバエとは少し違うようです。そこで、今回詳しく調べてみました。

イメージ 1

対象となるのはこんなハエです。体長は3.5mmで、小さいといえば小さいのですが、以前調べたノミバエが体長2mmほどだったので、それから比べるとだいぶ大きな感じがします。採集して検索したところ、トゲナシアシノミバエ亜科のWoodiphora属になったのですが、その後、いろいろ調べていくと、だんだん分からなくなってしまいました。

イメージ 2

まず初めに背側からと側面側から撮った写真を載せます。これがノミバエ科であることは、次の独特の翅脈を見るとすぐに分かります。

イメージ 14

翅脈の名称はManual of Nearctic Diptera Vol. 2(ここからダウンロードができます)に従ってつけました。(追記:翅脈の名称が間違っていたので図を修正しました。R→R1。ケアレスミスです

ノミバエについては以前にも詳しく調べました。その時には次の2つの論文が大変役に立ちました。

金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

この中に書かれている検索表に従って、今回もこのハエを調べていきたいと思います。ただし、いつも言うようですが、ハエにはまったくの素人で間違っているところも多いと思いますので、そのつもりで見て下さい。まず、初めの金子氏の検索表で必要なところを抜粋したものを載せます。

イメージ 3

赤字で書いた部分は特徴が一致しないところ、黒字が一致するところです。矢印に従って進んでいくと、一か所赤字がありますが、Metopoininae(トゲナシアシノミバエ)亜科のWoodiphora属にたどり着きます。そこで、それらを順番に確かめていきたいと思います。

イメージ 4

イメージ 5

これは、胸の側面を撮ったもので、下はそれを拡大したものです。中胸下前側板の下の方で白くなっている部分は、黒く平坦で金属光沢を持っているのでこのように見えています。前脚基節が2つあるように見えるのは、反対側の脚の基節が一緒に写っているためです。初めの項目は、前胸気門が胸の横についているか、上についているかという点ですが、写真のように横についています。その位置も中胸上前側板の上端を延長した線上、あるいはちょっと下にあります。従って、この記述はだいたい合っているようです。

2番目の項目は脛節の剛毛の話です。その部分の写真を載せます。

イメージ 6

これは後脚の脛節の写真です。独立剛毛がある場合には脛節の根元側1/3のところの背側に2本の剛毛があるのですが、これにはありません。あればノミバエ亜科になり、なければトゲナシアシノミバエ亜科になります。従って、トゲナシアシノミバエ亜科ということになります。さらに、後背部にかなり良く発達した氈毛列というのもありません。

イメージ 7

この写真はその部分を拡大したものです。脛節には腹側末端を除いて特別な刺毛列も剛毛も見えません。これに対して跗節には2列に並んだ毛列が見えます。

イメージ 8

これは中脚の写真ですが、やはり顕著な剛毛は見えません。ただ、先端近くで背側の毛が少し長くなっています。

次に触角上剛毛を調べてみます。

イメージ 9

イメージ 10


ノミバエは小さい割に頭には長い剛毛がたくさん生えています。金子氏の論文の図に従って、剛毛に名前を付けてみました(図では「原色昆虫大図鑑III」にならって刺毛と書いています)。写真は顕微鏡下で焦点位置を変えながら数十枚写真を撮り、後で深度合成ソフトで合成したものですが、このソフトの欠点は背景に構造がある場所(手前と後ろで構造が重なる場合)での剛毛がうまく再現できない点です。従って、剛毛がちょっと見にくくなっています。ただ、触角上剛毛には長い第1と短い第2の2種類の剛毛があることは、Fig.9でもよく分かると思います(向こう側の剛毛には焦点を合わせていないので写っていません)。問題はこの毛の向きです。検索表では斜下方となっていますが、この写真からは真上もしくはやや後方になっています。さらに、Fig.8を見ると、互いに離れる方向を向いています(発散的)。このあたりがしっくりとはきません。

最後の中胸側板が2個に区切られるという点はFig. 3あるいはFig. 4を見ると分かると思います。ということで、トゲナシアシノミバエ亜科でだいたいはよさそうです。さらに、次の3番目の項目では後脛節背面には毛の列がないのでWoodiphora属ということになりました。

イメージ 11

同じようなことは田中氏の検索表でも確かめられます。この場合はさらに簡単で、脛節に独立剛毛がないこと、それに後脛節背面に刺毛列がないことで、トゲナシアシノミバエ亜科Woodiphora属になります。

検索の上では、これで問題なさそうなのですが、触角上剛毛の向きが気になったので、もう少し調べてみました。Manual of Nearctic Diptera Vol. 2に載っているノミバエ科の亜科、族、属への検索表で、必要な部分だけを抜粋するとこんな感じになります。

イメージ 12

原文は英語なのですが、つたない英語力で訳してみました。やはり赤色は特徴が一致しない点、黒色は一致する点を示しています。青色ははっきりわからないところです。最初の方は上の検索表と一緒なのですが、問題は項目20辺りです。20bがWoodiphora属に向かう道なのですが、触角上剛毛は前傾し、強く発散することはないと書かれています。逆に20aのBecherina属の特徴を見ると、今回の個体とかなり一致しているような気もします。ただ、この本で扱うWoodiphora属は1種だけなので、かなり特殊な性質を書いているのかもしれません。

というところで、今回はここで行き止まりになってしまいました。いつも中途半端ですね。ついでに撮った写真も載せておきます。

イメージ 13

これは触角刺毛を写したものですが、細かい毛の生えた長い刺毛でした。

今回も検索はもやもやで終わってしまいましたね。顕微鏡で観察していると、ノミバエもだんだん馴染みなってきたのですが、検索表だけではすまない難しさもだんだんと身にしみて分かってきました。(追記:Woodiphora属の一般的特徴を調べようと思ったのですが、文献がどれも手に入らずお手上げでした。金子氏の論文にも少しだけ出ているのですが、著者自身は観察したことがなく、しかも、検索表と説明が矛盾していてあてにならない感じです

この記事に

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事