廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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廊下のむし探検 第501弾

最近は虫があまり多くないですね。虫が少ないので、つい、ハエの仲間を撮影してしまいました。今日はまずユスリカ科からです。

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一番上は触角がふさふさなので♂ですね。後の2つは♀のようです。上の♂はやや大きかったので、採集してきました。体長は4.8mm。そこそこの大きさです。でも、毒ビンに入れていたら翅がくちゃくちゃになってしまって、どうにも伸びません。翅脈で検索をするので翅が伸びないとどうしようもありません。

半ば諦めていたのですが、以前、通りすがりさんに教わった展翅法を思い出しました。これは弘前大の中村剛之氏が考案した方法で、剥離紙の裏側を使って液浸標本を展翅する方法です。剥離紙の裏側はくっつかないので乾燥しても剥がすことができるそうです。くっつかないという意味では接着テープの接着面の反対側もそうだろうと思って、スライドグラスに接着テープを貼り付け、その上に消毒用アルコールを一滴落としました。そこに翅がくちゃくちゃになったユスリカを裏返しにして置き、アルコールの中で針を使って翅を伸ばしました。

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こんな感じです。

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確かに翅は伸びて展翅が出来ました。ただ、アルコールの中に入っているのでコントラストが低くて翅脈は辛うじて見える程度です。でも、これで少しは検索が出来ました。「日本産水生昆虫」の亜科への検索表を用いると、1) m-cuがあり、2) R2+3があり、3) R2+3が分岐せず、4) m-cuはFCu(Cuの分岐点)より翅の先端に近いという条件でヤマユスリカ亜科になります。ここから先の検索表がないので、今日はここまでです。

追記:翅脈の名称を、初め、「日本産水生昆虫」を参考にしてつけていたのですが、どうも納得がいかなかったので、Manual of Nearctic Diptera (MND) Vol. 1の方を参考にしました。前者ではMがM1+2、CuA1がM3+4、CuA2がCu1になっていました。また、FCuはcubital forkの略で、Cu脈の分岐点を指しています

追記:ユスリカ科の翅脈について書かれた論文を見つけました。

B. Lindeberg, "Nomenclature of the wing-venation of the Chironomidae and of some other families of the Nematocerous Diptera", Annal. Zoolog. Fennici 1, 147-152 (1964). (ここから1ページ目だけが読めますが、JSTORに登録すると画面では全部読めるようになります)

M脈とCu脈あたりを読んでみたのですが、分かりにくい論文です。要は翅脈の発達をニセヒメガガンボ科→ブユ科→ヌカカ科→ユスリカ科と進んでいくと考えています。最初のニセヒメガガンボ科では第2基室があって、そこからM脈もCu脈も出ています。ブユ科では極めて狭いながらも
第2基室らしきものがあって、そこからM脈が4本とCu1脈が出ています。これに対して、ヌカカ科、ユスリカ科では第2基室はなくなり、後ろの脈に分岐だけが残っています。従って、これはM4脈とCu1脈が途中まで融合したものだと解釈したようです。さらに、ヌカカ科ではm-cu横脈はなかったのですが、ユスリカ科にはあるので、これは後からできた横脈だということになります。

筋はまがりなりにも通っている感じなのですが、この論文の被引用件数が12、その後、翅脈に関する論文でこの論文を引用している論文がないことからどれだけ信じられているのかどうか分かりません。ただ、その後に出ている論文ではこの分岐をM4とCu1としているものと、CuA1とCuA2としているものの2通りがあるようです。翅脈の名称はともかくややこしいですね。翅脈について論じるときは必ず図を書いておいて、私はこの方式で名前をつけてますよと書いておくべきだと思いますね
)(追記:上の写真ではM脈とCuA1脈の間にも翅縁に届かない脈がありそうなのですが、翅脈なのか、翅の折れ目なのか、擬脈なのか分かりません。翅の後半部分にも似たような感じの脈がありそうです。後半部分については、「日本産水生昆虫」では翅縁に届かないCuP脈とAn脈の2つが書かれています

追記2015/03/20:三枝豊平氏の学会発表原稿や予稿を集めた、"Homology of Wing Venation of Diptera"(2006)という原稿集が見つかりました《ここからpdfがダウンロードできます》。この中で、翅脈の名称についてのコメントが載っていました。それによると、上の図でCuA1と書いた脈はM4、CuA1、M4+CuA1などと過去の論文では様々に書かれています。筆者はTillyard, Linnean Soc. New South Wales 44, 533 (1919) 《ここから本がダウンロードできます》の見解に賛成し、M4という名称が適当であると述べています。Tillyardは"M4"脈とCuA脈は毛に覆われているのに対し、その間をつなぐm-cu横脈には毛がないので、"M4”脈をCuA脈とつないで考えるのは適当でないと書いています。これに対する反論では、1) "M4"脈はCuA脈と同じ凸脈である、2) "M4"脈はしばしばCuA脈とつながって分岐をつくるので同種の脈である、という根拠で前者をCuA1、後者をCuA2とすることを主張しています。これに対して、三枝氏は凸脈、凹脈という概念は翅の末端付近では不明確であること、また、化石昆虫ではCuA脈は単独であることが多く、これに対してM脈は一般に分岐していることなどから、M4脈とすることが妥当としています。タマバエやユスリカなどで、M4脈とCuA脈に途中から分岐しているような形態を取るのは、翅脈の退化(reduction)によるもので、おそらく、飛翔のために強度をかせぐためであろうと述べています。この見解に従えば、上の図でCuA1、CuA2と書いた部分はM4、CuAと書く方がよいのかもしれません

このまま展翅標本もできるかなと思ったのですが、ちょっと甘かったです。アルコールが染み込んだ接着テープが下の接着剤も溶かしてしまったのか、接着テープが剥がれて盛り上がってきました。耐水性がないと駄目みたいです。

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次はガガンボの仲間です。上はいつものガガンボダマシ、さて下は何でしょう。そこで、写真を拡大してみました。

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これは各部の拡大です。これらの写真から検索ができます。「絵解きで調べる昆虫」の検索表を使えば、1) 中胸背にV字型の溝があり、2) 単眼なし、3) R脈が3-4分岐、4) A脈が2本、5) R1脈の終点が翅縁に届く、6) Sc脈の終点が翅縁に届く、という条件でヒメガガンボ科になります。さらに、7) 触角が14節、8) R2脈が独立という条件から、Elliptera、Limnorimarga、Antocha、Helius属のいずれかになります。この中ではElliptera属が近いかなと思ったのですが、はっきりはしません。でも、写真でも結構検索ができるでしょ。本当は口器を撮影したら、属まで進めたのですが・・・。なお、この場合の翅脈の名称は「絵解きで調べる昆虫」に従っています。

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これはキノコバエかなと思うのですが、採集しなかったので分かりません。

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次はトビケラです。この2匹は共に採集してきました。調べてみると、この2匹は共に同じ種で、おそらく、ヒラタコエグリトビケラの♂だろうと思います。先日調べたトビケラがこの種の♀でした。今回も顕微鏡写真を撮ったので、また、次回にお見せします。♂と♀では腹端だけでなく、いろいろと違っていました。

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蛾ではフユシャクがいました。ホソウスバフユシャクが2匹。

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それに、ギフウスキナミシャクも2匹。

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カバナミシャクはなかなか分かりませんね。ウスカバナミシャクに似ているような気がしますが・・・。

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こうなるともっと分かりませんね。ガラス窓に止まっていました。

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キリガはこの1匹だけ。シロヘリキリガです。

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最後はこの間もいたクモです。たぶんネコグモだと思います。触肢の先が膨らんでいるので、♂かもしれませんね。さらに亜成体くらいかな。

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難しいユスリカやヒメガガンボが続いた後に、分かり易い蛾が来た時の安心感(笑)
でも、Eupithecia以外のものは未見なんですよね。
Eupitheciaだって未見のものかもしれないですけど。 削除

2015/3/17(火) 午前 9:12 [ 通りすがり ] 返信する

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ユスリカもヒメガガンボも難しいですね。今日は翅脈の名前の付け方を勉強しようと思って、三枝氏の発表原稿を読んでみました。ガガンボダマシとシリアゲムシを比較して論じているのですが、なかなかその意味が分からず、ガガンボダマシを捕まえてその翅脈を見ながら格闘中です。

Eupithecia、また、学名ですね。カバナミシャクの仲間のことですね。これにはいつも苦労します。今日は天井に10匹ほど止まっていたのですが、ほとんどパスしてしまいました(笑)。

2015/3/17(火) 午後 6:06 [ 廊下のむし ] 返信する

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