廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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昨日、ケブカクチブトゾウムシかなと思われる個体の写真を出したところ、通りすがりさんから、「羽化後にしか残っていない牙がまだある新鮮な個体ですね。脱出時にのみ使う様で、その後に脱落するんですが・・・。」というコメントをいただきました。

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昨日出した写真はこんな写真です。全く気が付かなかったのですが、確かに片側だけ牙のようなものが生えています。以前に出した写真も調べてみました。

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これも片側だけ牙のようなものがありますね。

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これは両側の牙があるように見えます。こんな牙があって、それがそのうち脱落するなんて・・・、大変興味をそそられますね。それで、少し文献を探してみました。日本語の論文は見つからなかったのですが、英語の論文は見つかりました。英語ではdeciduous mandibular processesというようです。直訳すると、「脱落性大顎突起」とでもいうのでしょうね。これについて書かれた論文として、よく引用されているのは次の論文です。

R. T. Thompson, "Observations on the morphology and classification of weevils (Coleoptera, Curculinoidea) with a key to major groups", J. Nat. Hist. 26, 835 (1992). (ここからpdfがダウンロードできます)

weevilはゾウムシのことです。簡単に要約してみると、脱落性の大顎突起はゾウムシでよく知られている現象です。この突起は大顎に付属したものではなくて、大顎そのものの一部であると考えられています。その意味で、mandibular appendages(大顎付属物)とか、false mandible(偽大顎)とかいう表現は正しくありません。大顎から脱落する部分は種類によって大きく異なっています。大顎の大部分を脱落させる種もいれば、先端がわずかに脱落するものもあり、あるいは、全く脱落しない種類もいます。

脱落するのは蛹から脱皮してしばらくの間で、このことから、土中で脱皮した後、土を掘って外に出て行く時に使われるのであろうと考えられています。「脱落性大顎突起」が脱落した後は、「脱落痕」のようなものが残りますが、脱落部分が僅かなときはすり減ってしまってほとんど見えなくなることもあります。脱落部分はそれ以外の部分とは、点刻や毛がないことで区別できます。

これまで、ゾウムシの長い口吻はストローのようなイメージを持っていたのですが、実は先端に大顎があるのですね。当たり前かぁ。木の幹や穀物に穴を開けたりするのだから・・・。それで、ゾウムシの大顎と脱落痕を実際に見てみたくなり、手元にある標本で見てみました。

イメージ 4

最初はこのケブカクチブトゾウムシらしき個体です。この口の部分を見てみましょう。

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ちょっと尖った口の先端です。明らかに脱落痕と思われる痕が左右に見られます。その他に大顎らしきものも見られます。このことからクチブトゾウムシでは大顎の大部分が脱落するのでしょうね。

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これはスグリゾウムシで、これも口があまり尖っていません。

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どれが脱落痕か、どれが大顎かも分かりませんが、これもほとんどが脱落するのでしょうね。

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次はタコゾウムシspです。これも口はあまり尖っていません。

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でも、立派な大顎が見えます。脱落痕のようなものは見えませんが・・・。

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次は口の長いマダラアシゾウムシです。この口の先端を見てみます。

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こんな長い口の先端に鋏みたいな大顎があるのですね。これも脱落痕がどれなのかはっきりしません。

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最後はこんな長い口を持つエゴシギゾウムシです。この長い口の先端も拡大してみます。

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こんな風になっていました。やはり大顎らしいものが見えますね。脱落痕は分からないのですが・・・。

結局、はっきりと脱落痕が見えたのはクチブトゾウムシだけでした。でも、あの長い口器の先端に大顎らしきものがあるのを初めて知りました。上の論文にはいろいろな種類で、♂でも♀でも、脱落する部分があることが図示されていました。本当なのかなぁ。まぁ、人間で言うと乳歯が抜けるようなもので、それほど不思議ではないのかもしれませんが、何となく面白いですね。(追記:Thompsonの論文で脱落性大顎突起が図示されているのは、ゾウムシ科クチブトゾウムシ亜科、チョッキリゾウムシ科、イボゾウムシ科のものでした。ひょっとして、これらの種類に限られているのかもしれません。論文にはその辺りが詳しく書かれてはいませんでした。クチブトゾウムシなどの短吻群は土中に卵を産み、一方、長吻群は固い植物組織中に卵を産むので、 短吻群では大きな大顎は必要なくて、そのかなりの部分を脱落させるのかもしれませんね

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一回分のネタになってしまいましたね。
想像ですが、蛹化する場所によりそうな気がしてます。
土中ならこういうものは必要が無いのではないかと思うので、植物体の中で蛹になるものに必要性を感じるからですが、実はゾウムシの生態をあまり知りません(笑) 削除

2015/4/8(水) 午前 0:16 [ 通りすがり ] 返信する

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お陰様で、面白い話を知ることができました。おそらくそんな気がします。論文を見ると、ほとんどがクチブトゾウムシで、チョッキリ、イボゾウムシが少しだけ出ていました。クチブトゾウムシは土の中に卵を産むそうなので、それに対応した形態なのですね。それにしても面白い話のヒントをどうも有難うございました。

2015/4/8(水) 午前 6:48 [ 廊下のむし ] 返信する

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