廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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先日から小さなハチがマンションの廊下に来ています。あまりに小さいので、初めはハチなのかどうなのかも分かりませんでした。でも、蜂屋さんから、ハチの中で最も原始的なグループの仲間と聞いてから、俄然興味が出てきました。Wikipediaを見ると、ナギナタハバチ科は現存5属50種以下の小さなグループなのですが、その起源は三畳紀にまで遡ることができ、化石に残っているとのことでした。三畳紀というと、今から2億年前で恐竜がいて、最初の哺乳類が出てきたころでした。(追記:ナギナタハバチ科の化石の論文をちょっと見てみました(T. Gao et al., Acta Geolog. Sinica 85, 528 (2011))。これまでにオーストラリア、南アフリカ、キルギスタン、中国北東部などで化石が見つかっていて、古くは中生代三畳紀からの化石がでているそうです。それを調べて、中生代から新生代にかけて4亜科36属が記録されているとのこと。化石なのにと思ってしまいました。こんな感じに残っているみたいですね

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この間からマンションの廊下にいるハチというのはこんなハチです。体長はわずか3mm弱。一匹捕まえてきていつものように顕微鏡で観察しようと思ったのですが、毒ビンの中で濡れてしまい翅がなかなか開きません。無理に開こうとすると翅が破れそうなので、諦めようと思ったのですが、試しに消毒用アルコールの中に入れてみたら、すんなり翅を開くことが出来ました。でも、こんな液体の中でぷかぷか浮かんだ状態で、いつものように焦点位置を変えながら写真を何十枚も撮れるだろうかと、はなはだ不安でした。でも、やってみるものですね。何とか撮ることができました。

ついでに検索もしてみようと思って、吉田浩史著、「大阪府のハバチ・キバチ類」(西日本ハチ研究会、2006)に載っている検索表を使ってみました。検索の結果、マダラナギナタハバチらしいというところまで達しました。その過程をお見せしながら、このハチの特徴を調べてみたいと思います。まず、検索表でマダラナギナタハバチに至る部分を抜粋したものが次の表です。

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この表は上から、科、亜科、属、近畿産の種の検索が並んでいます。これを順番に見ていきたいと思っています。まずは全体像からです。

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上は背側から、下が腹側からの写真です。長い産卵管と奇妙な触角が目立ちますね。検索項目の①は触角の位置ですが、次の写真を見てください。

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これを見ると触角は複眼の間から出ています。従って①はOKですね。これを撮影するときには、消毒用アルコールをプラスチックシャーレの蓋に一滴落とし、そこにペフ板を切ってつくった小さな板を入れ、それにハチを立てかけるようにして写しました。スライドグラスだとアルコールと馴染みよくて、液体が盛り上がらなくて広がってしまうので駄目でした。

②と③は触角についてです。

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検索表に書いてある通り、第3節が長くて、その先にいくつかの節が細い糸状についています。なお、最後の第11節は2節に分かれているのかどうか判断がつきませんでした。2節に分かれているとしたら、全部で12節ということになります。

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③の後半は径室に2横脈があることなのですが、アルコールの中に翅を入れているので、コントラストがつきにくくて困りました。これは透過照明で撮影して、後で全体を暗くし、コントラストをつけたものです。辛うじて翅脈が見えました。径室の横脈は矢印で示しています。

④は産卵管鞘についてです。

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これは産卵管鞘を横から見たものです。薙刀状というのが分かるような気がします。次の⑤は亜前縁脈についてですが、亜前縁脈はFig. 6に矢印で示していますが、大変見にくくなっています。でも、よく見ると上に大きく曲がって前縁脈に接していることが分かります。これでナギナタハバチ属が確かめられました。

次からは近畿産に限った種の検索です。この表の中には他の種についても載せておきました。⑥'の産卵管鞘の下側は直線状というのはFig. 7を見ると分かります。この形が重要みたいです。次は後脚の爪についてです。

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後脚の爪には特に構造がありません。従って、これもOKですね。この撮影もひやひやものでした。アルコールの中で脚もゆらゆらしているのを動かないようにじっとするまで待って静かに撮影しました。最後の⑦は前翅長と産卵管鞘の長さの比較です。

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図で表すとそれぞれ矢印で示した部分になります。実際に測ってみると、前翅長は産卵管鞘の長さの約2.1倍になり、マダラナギナタハバチであることが分かりました。先の本の説明によると、2005年にBlankらが従来までマダラナギナタハバチと言われている中に2種(X. variegataとX. tecta)あることを示したことによっています。ただ、♂では交尾器形状で分かるのですが、♀では産卵管鞘の長さで決めなければならないので曖昧なときもあるとのことでした。

以上で、無事検索は終わって、マダラナギナタハバチらしいことが分かりました。液体の中での深度合成なので、どうなるかと思ったのですが、何とかうまく撮れました。この方法は小さいハエで翅がくちゃくちゃになったものにも使えるかもしれません。

ついでに撮った写真を載せておきます。

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これは頭部と胸部です。

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それに胸部から腹部にかけてです。

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腹側から頭部と胸部を写したものです。ナギナタハバチは独特の触角と脚のような口肢が特徴なのですが、その口肢が写っています。

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ちょっと暗くなってしまいましたが、触角第3節付近を拡大したものです。

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最後は背側から写した産卵管鞘です。

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