廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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廊下のむし探検 第661弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。今日はこの蛾からです。

イメージ 1

この蛾を見ると思わず顔をしかめてしまいます。というのも、似た種がいて見分けられなかったからです。そこで、今日はじっくりと調べてみようかと思いました。まず、これはクビグロクチバという名前のつくヤガ科シタバガ亜科Lygephila属の蛾です。この属には「標準図鑑」に9種が載っています。このうち分布から5種を除くことができて、クビグロクチバ、アサマ、ヒメ、ナニワの4種が残ります。大きさや外見から最初の2種は除けるので、結局、私の住んでいるところではヒメとナニワの2種が残ります。

このうち、ナニワについては次の論文に詳細に書かれています。

S. Kinoshita and N. Sasaki, "A New Species of the Genus Lygephila BILLBERG from Japan (Lepidoptera, Noctuidae)", Tyo to Ga 37, 209 (1986). (ここからダウンロードできます)

この論文は、これまでヒメクビグロクチバ L. rectaと言われていた種に♂交尾器がまったく異なる種が混じっていたということが分かり、この種にL. ogatai (ナニワクビグロクチバ)という名称を与えました。Post-MJ Edition 1によると、その後、たぶん1988年に、この種はL. lilacina (Butler, 1978)と同一だと分かり、和名はそのままで学名が変更されました。しかし、ナニワとヒメの違いについてはこの論文に詳しく書かれているので、その部分を和訳して書いてみることにします。

①L. ogataiの前翅前縁部は灰褐色かいくらか淡い色だが、L. rectaでは多かれ少なかれ暗褐色に色づく
②腎状紋の内縁はL. ogataiでは凹形であるが、L. rectaでは凸形
③L. ogataiでは環状紋の位置に大変小さい白い点が見分けられるが、L rectaではほとんどの個体で見られない
④前翅亜外縁線は、 L. ogataiではCu1近くで背景色に溶け込むが、L. rectaは翅端近くから後縁までずっと走る

これらはいずれも前翅についての特徴なので、先ほどの写真にその特徴となる部分を書き込んでみます。

イメージ 2

翅脈の名称は「標準図鑑」を参考にしてつけました。まず、①は矢印で示した領域が暗褐色か灰褐色かという点です。次に、②はこの黒い紋(腎状紋)の左側が凸か凹か、③は矢印の部分に白い点があるかどうか、④は白い亜外縁線が後縁まで続くか、CuA1脈辺りで消えてしまうかという点です。

私の標本箱を見ると、ヒメかナニワか分かりませんが、合わせて7匹ほどの標本があるので、そのうち3匹の前翅写真を撮って、この個体とともに先ほどの①〜④について評価してみました。

イメージ 3

そして、L. recta (ヒメ)の特徴に合っていると思われるところには+1を、L. ogatai(L. lilacina;ナニワ)の方に合っていると思われる特徴には-1を付けました。特徴がはっきりしないものには0とか、-0.5とかの点がついています。そして、それぞれで合計点を出してみました。すると、Aはヒメで、Cはナニワでたぶん間違いないのではと思われました。Bが微妙ですが、白い点があり、亜外縁線がCuA1辺りで消えているので、たぶん、ナニワの方かなと思われます。

さて、今回の個体は、①の前翅前縁の色は暗褐色なので+1、②の腎状紋の内縁は直線的なので0、③の白い点がわずかに見えるので-0.5、最後の④の亜外縁線は後縁まで達していそうなので+1。ということで、合計点が+1,5になり、ヒメクビグロクチバの方かなと思いました。微妙な場合もありますが、ヒメかナニワかはなんとか区別できそうな感じです。ところで、今回は①〜④について重みをつけずに足しあわせたのですが、おそらく重要な特徴とそうでない特徴があると思うので、重みつきで足す方がよいのではと思いました。(追記:ささきさんから、標本AとB、それに今回の写真の個体はヒメ、標本のCはナニワだと教えていただきました。腎状紋と前翅前縁部の色でほとんど同定できるそうです。どうも有難うございました

その他の蛾も載せます。

イメージ 4

これはオオエグリシャチホコです。

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そしてモモスズメです。

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そして、これはキシタホソバかなと思ったのですが、写真では大きさがよく分からないので、はっきりとはしません。

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それに、この間もいたウスバフタホシコケガです。

イメージ 8

それにフタスジシマメイガです。

最初のクビグロクチバで精力を使い果たしてしまったので、残りの虫は次回に回します。

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閉じる コメント(6)

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ヒメクビグロクチバの仲間は同定が難しいですね。ナニワの記載をした張本人としてコメントさせてください。
生態写真はヒメ、標本写真のA,Bもヒメ、標本写真Cがナニワですね。このヒメクビグロクチバ群にはもうひとつキタヒメクビグロクチバL.subrectaというのがいて、当初は北海道特産と考えられていましたが、その後中部・関東地方でも記録されました。それも案外低地で。近畿にもいるかもしれませんので、一人でも多くの人に注目して欲しいと思います。 削除

2015/7/28(火) 午前 6:59 [ ささき ] 返信する

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ささきさん、コメント有難うございました。実はコメントしていただけるだろうと思って書いていました。

Bはヒメの方ですか。だいぶ迷ったのですが、亜外縁線が後縁に届かないということより、腎状紋の形の方が決めてということでしょうか。

そうですか。キタヒメもいそうなのですね。内横線上の暗色点や外縁部の暗色点列などが手がかりでしょうか。

2015/7/28(火) 午前 9:14 [ 廊下のむし ] 返信する

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確かにBはナニワっぽいですね。でも、これは記載論文に書かなかったっけ?、前翅の前縁がヒメではやや暗色、ナニワでは地色と同じ、という特徴があるんです。腎状紋と前翅前縁部の色でほとんど同定できますね。キタヒメは僕は実物を見ていないので何とも…。これからの研究課題です。 削除

2015/7/28(火) 午後 0:05 [ ささき ] 返信する

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ささきさん、コメント有難うございました。論文にはヒメとナニワの4つの違いが書かれていました。〜井汰葦錙↓⊃嫋紋、G鬚づ澄↓ぐヽ葦鐇。私はこの中でとい重要なのかなと思ったのですが、むしろ、,鉢△世辰燭里任垢諭よく分かりました。キタヒメはこれから気をつけて見てみます。どうも有難うございました。

2015/7/28(火) 午後 3:53 [ 廊下のむし ] 返信する

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2013/6/6に長野で見付けたのは、ヒメクビグロクチバかキタヒメクビグロクチバか…
標準図鑑によると、正確にはオス交尾器とか。 削除

2015/7/29(水) 午後 10:04 [ 通りすがり ] 返信する

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クビグロクチバも難しいですね。私の標本箱を見てみたのですが、クビグロクチバ、ヒメ、ナニワの3種みたいでした。長野に行くといろいろな虫がいるでしょうね。昔、山登りで何度も行ったのですが、その時は虫にはちっとも興味がなくて・・・。

2015/7/30(木) 午後 9:13 [ 廊下のむし ] 返信する

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