廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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通りすがりさんから、アブにもいろいろな種類があるということを聞いて、一度アブを調べてみたいと思っていました。検索表もあるのですが、♀用しかありません。ところが、マンションの廊下で探してみると、いつも♂ばかり。ずっと残念に思っていました。先日、「虫展」の準備のために標本箱を整理していると、アカウシアブらしい♀の標本が見つかりました。そこで、早速、検索をしてみました。

まず、アブ科の属への検索です。これは、次の2つの文献に載っていました。

H. Hayakawa, "A key to the females of Japanese tabanid flies with a checklist of all species and subspecies (Diptera, Tabanidae)", Jpn. J. Sanit. Zool. 36, 15 (1985) (ここからダウンロードできます)、

河合禎次、谷田一三著、「日本産水生昆虫」(東海大学出版、2005)

前者は英語、後者は日本語です。比べてみると、内容的にはほぼ一致しました。そこで、後者の日本語の方を使うことにしました。

アカウシアブはアブ属なので、その部分に至る検索表の項目を抜粋して書くと次のようになります。

イメージ 1

それに、全体の写真と関連する各部の写真を載せます。なお、各項目に関連するところにはその項目と数字を加えてみました。

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

Fig. 1は全体の写真です。かなり大型のアブです。Fig. 2は触角です。かなり変わった形をしているでしょう。そして、Fig. 3は後脚脛節の写真です。①から説明していきます。Fig. 2を見ると、触角は全部で7節、基部から柄節、梗節と呼び、その先を鞭節と呼んでいます。鞭節は5節からなっています。鞭節第1節を環節と呼んでよいのかはよく分かりませんが、鞭節が5環節以下であることは確かです。②はFig. 3を見ると分かりますが、距棘はありません。③はFig. 1のようにほぼ透明です。

さらに、④は触角の背突起に関するものです。Fig. 2の奇妙な突起が背突起ですが、これが短いというのはもっと長いヒゲナガサシアブ属があるからです。⑤は次の写真を見てください。

イメージ 5

単眼瘤がなくて、複眼には毛が生えていません。⑥はFig. 1に示す通りです。⑦の触角鞭節の背突起が大きいというのはツナギアブ属に比べての話です。短いといったり、大きいといったり、比較対象で表現が大きく変わるのでややこしいですね。でも、これでアブ属になりました。

次は種への検索です。これには次の論文を用いました。

早川博文、「日本産アブ科雌成虫の分類 1.アブ属ウシアブ群、アカウシアブ群及びその関連種」、東北農試研究資料 10、35 (1990). (ここからダウンロードできます)

これは絵解きになっているので、大変見やすい検索表です。そのうち、アカウシアブに至る部分を抜粋して書くと次のようになります。

イメージ 6

ここでは、主に翅脈、額瘤という複眼間にある構造、それに触角第3節についての特徴を用います。まず、翅の写真を載せます。

イメージ 7

翅脈の名称は

Manual of Nearctic Diptera. Vol. 1 (1983). (ここからダウンロードできます)

を参考にしてつけました。⑧はR5とM1脈が広く開いているというのですが、対比するシロフアブ群はこの2つの脈が翅縁でほぼ一致しているので、それに比べると広く開いているという意味です。⑨の中額瘤はFig. 4に示しましたが、実ははっきりしません。下額瘤ははっきりしているのですが、それに続く部分というので矢印を書いてみました。でも、確かではありません。いずれにしても紡錘形ではないので、OKだと思います。⑩も同じです。

⑪はFig. 5に示してありますが、この標本の場合、R4脈は滑らかに湾曲して翅縁に達しています。ウシアブ群などでは矢印で示した部分に小さい枝が出ます。そして、⑫はまた触角鞭節の背突起です。今度は「著しく突起する」というのですが、これも比較の問題だと思います。でも、とにかくアカウシアブ群に至りました。

⑬は触角第3節基部が橙黄色、⑮は全体が橙黄色、いずれもOKです。⑭は腹部に背側に中央三角斑がないことなのですが、Fig. 1を見ると、確かに三角斑はありません。ということで、無事にアカウシアブになりました。

なぜ、検索が♀だけかというと額瘤という複眼間の構造を使うからで、♂では複眼が接しているのでこの構造がありません。外国の論文や本を見ても、大体同じ検索表なので、これはこの世界での伝統なのでしょう。いずれにしても、アブ検索の練習ができました。これで後は♀待ちです。

追記:次の本には♂の種への検索表も出ていました。

H. J. Teskey, "The horse flies and deer flies of Canada and Alaska: Diptera: Tabanidae", Insects and Arachnids of Canada Handbook Series 16 (1990). (ここからダウンロードできます)

これを参考にすれば♂の検索もできるかな

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またもや長いこと拝見できなかったのですが、今日はアカウシアブでしたか。鮮明な写真に特徴が示されているので、実物を見なくても分かりやすいですね。自分が実際に検索している気分になります。

複眼の微毛について、ハナアブの経験で見落としかけたことがあります。実体顕で見る場合に、ピント位置をずらしながらよく見ないと気付きにくいんです。「まばらに生えている・・・」等という場合は要注意です。

大型アブ類は、私の場合ヤマトアブを見る(採る)ことが多いです。
もっと様々な種類をみたいものです。 削除

2015/8/6(木) 午前 8:50 [ ほし ] 返信する

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ほしさん、こんばんは。
アブがなかなか分からなくて、手元にあるアカウシアブ♀の標本から勉強を始めたところです。検索してみるとちょっと分かったような気になるのがいいですね。でも、♀用の検索表しか見当たらなくて、マンションに来るのは♂ばかりで困っています。複眼の微毛もこれから注意して見ることにします。どうもアブやハチは怖さが先に立って、なかなか採集しようという気がおきないのが問題ですね。

2015/8/6(木) 午後 8:10 [ 廊下のむし ] 返信する

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やっぱり一度検索してみるというのは大事ですよね。
一度やってみると次からはどこをどう見れば良いのかわかって、検索の流れも掴めますし。

アブは環境で種類が違って面白いですね。
こちらはキスジアブの他に多く見られるのは、ヤマグチキンメアブと非吸血性のマツムラヒメアブですね。
何れも6月から7月なんで、今は見られませんが。 削除

2015/8/6(木) 午後 10:17 [ 通りすがり ] 返信する

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検索もそうなのですが、図鑑や論文に書いてある特徴を1つずつ確かめていくというのが大変いい勉強になりますね。言葉も覚えられますし、一つ分からないことがあると気になって気になって、つい、いろいろな文献を調べてしまうので・・・。本当は確かめたことをスケッチすればよいと思うのですが、私は絵が下手くそで、仕方なく写真を撮っています。これもどう写せば見やすいかというのでだいぶ苦労しますが・・・。地道な作業ですが、こういうことが大切かなと思って、これからも続けていきたいと思います。

アブ、知らないものばかりですね。それにしても私の住環境とはずいぶん違うようですね。

2015/8/7(金) 午前 7:02 [ 廊下のむし ] 返信する

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本当に勉強熱心ですよね。
私などは毎回忘れてしまって、少しやっては思い出すと言う程度です。
趣味の虫に割ける時間も減ってますし、忘れてしまう傾向は強まりそうです。

明日、長野の山の中から一旦千葉に戻ります。
庭木の藪を伐って軽トラで運ぶ度に、車にウシアブとオオイタツメトゲブユが集まって大変な1日でした(笑) 削除

2015/8/10(月) 午後 9:25 [ 通りすがり ] 返信する

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アカウシアブ1の他は、沢山のウシアブとヤマトアブでした。
メスを誘引するには、やっぱり車かドライアイスかな?
林縁や藪の近くでやると、吸血性のものは簡単に採れるかも。 削除

2015/8/10(月) 午後 10:44 [ 通りすがり ] 返信する

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・・・とかっこよく書いてはみたのですが、実は、やったことをすぐに忘れてしまうのでちっともはかどらないのです。左から右へどんどん抜けていってしまって・・・。でも、調べると何か新しいことが分かるので、それが面白くて調べているみたいです。

長野と千葉という全く違う環境が体験できてうらやましい感じです。長野は昔、山登りで何度も行ったので、ちょっと懐かしいです。

あまりアブのメスを誘引したくはないなぁ。できたら、死んでいるのが見つかるといいけど。でも、一度、この辺りにいる種をひと通り捕まえて調べてみるのもいいなぁ。日本産アブの種・亜種100余。何となく魅力のある数字です。

2015/8/11(火) 午前 7:18 [ 廊下のむし ] 返信する

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