この間からちっちゃなハバチに悩まされています。どうも検索がうまくいきません。そこで、今回はいろいろな本に載っている検索表をすべて試してみることにしました。だから、もやもやした結果に終わることをご承知おきください。でも、こうやって悩むのも勉強のうちだと思って頑張ってみます。
体長は6.1mmの小さなハバチです。特にこのハチに興味があったというわけではなくて、たまたまいたので捕まえたというだけだったのですが・・・。 まずは何科になるか調べてみました。ここで、2つの本を参考にしました。まずは、「絵解きで調べる昆虫」です。このハチはとりあえずハバチ科になると思われるのですが、その検索の過程を書いてみます。 次は、「原色昆虫大図鑑III」です。これも書いてみます。 これを一つづつ調べていきました。例によって、参考にする写真を載せます。また、検索の項目に関係するところには記号とその内容を書き入れました。 まず、検索表の①と②はすぐに分かるので、③を調べてみます。中胸背には横溝はありません。次の④は次の写真を見てください。 どうもはっきりしないので、次は「原色昆虫大図鑑III」の検索表を使ってみました。aは良いとして、bの最初は先ほどの④と同じ項目です。後半の後翅の翅脈については次の写真を見てください。 次は亜科への検索です。これはもっぱら翅脈で検索をします。ハチ特有の翅脈の呼び方が出てくるので、復習のために以前に出した図をもう一度出しておきます。 さて、検索を始めるのですが、まず、「絵解きで調べる昆虫」に載っているハバチ科の検索表を使ってみます。 もっとも重要な点は、⑪で示したように、R+M?と書いた翅脈の両側の合流点が離れているか、あるいは、一点で接するかという選択です。この個体では明らかに離れているので、赤矢印の通り進むことになります。さらに、⑫で示した肘脈基部は直線状なので、疑いもなくハバチ亜科になります。 ところが、別の検索表を用いてみます。 ㉑、㉑'と書いた文の上にある数字がそれなのですが、R+M脈の長さは1m-cu脈の長さの1.02倍になり、ほとんど同長です。つまりどちらも合わないことになります。そこで両方の道を進むことにすると、左側はハバチ亜科になります。右側の道を進むと、先ほど同じ肘脈基部が直線かという㉒の項目になり、次に㉓の第1,2反上脈は同じ肘室につながるかという項目があります。上の写真を見るとともに同一の室につながっているので、そちらを選ぶと、最終的にヒゲナガハバチ亜科になりました。 (追記2016/02/17:第1肘横脈が間違っていました。1m-cuではなく、2r-mの基部側にあるRsと書いた脈でした。従って、基脈と肘脈の亜前縁脈との合流部間の距離は第1肘横脈の長さよりは十分に長いので、ハバチ亜科に進むことになります。そこで、もう一度検索を試みたのですが、「絵解きで調べる昆虫」でも「大阪府のハバチ・キバチ類」でも検索表の最初に前翅肛室の形状を選ぶ項目があります。ところが、写真のように基部は完全に融合し、先端だけに肛室があるような形状を選ぶことができず、そこから先に進めません。どうやらハバチ亜科ではなさそうです。「大阪府のハバチ・キバチ類」の標本写真を見ると、基脈と肘脈の亜前縁脈との合流部が離れ、2r脈がなく、基部は完全に融合して先端だけに肛室があるような種がヒゲナガハバチ亜科には見られます。やはりヒゲナガハバチ亜科かもしれません。それではどうして、検索表でそちらにいかないのでしょう) まだ、はっきりしないので、今度は外国の本の検索表を使ってみました。使ったのは次の本です。 H. Goulet, "The genera and subgenera of the sawflies of Canada and Alaska: Hymenoptera: Symphyta", Insects and Arachnids of Canada Handbook Series, 20 (1992). (こちらからダウンロードできます) このハバチ科の亜科への検索表をつたない語学力で訳してまとめたのが次の図です。 多くの亜科が関係していたので、YESか、NOで選ぶ形式で書いてみました。ポイントとなるのは図中の㉛から㉟までの条件です。実際にやってみるとこの個体ではこれらすべてが満足され、ハチ屋さんから教えていただいた通り、ヒゲナガハバチ亜科になりました。翅の写真に詳細を書き込んでみました。 ちょっとごちゃごちゃしてしまいましたが、まず、㉛については翅脈間の角度は79度になり、まぁ、範囲に入っています(検索の文を合わせるために翅脈の名称をRとしています)。㉜は合流地点間の距離と1m-cu横脈の長さの比ですが、2.3倍となり、これも範囲に入ります。さらに、㉝は2つの翅脈の延長線が縁紋側で交わるかという点ですが、確かに交わります。これらの条件でハバチ亜科は除外できます。㉞は2Aと3Aが完全には輪郭を描いて室をつくらないという項目なので、これもOKです。最後の㉟は1Rs室に2本の横脈がつながっていることを示していて、これもOKです。この場合は、あまり問題となるところはなく、ヒゲナガハバチ亜科になりました。 ハチ屋さんの意見を踏まえて、たぶん、ヒゲナガハバチ亜科なのだろうと思って、「絵解きで調べる昆虫」で属の検索も行ったのですが、交尾器の辺りの記述がどうもよく分からなくて、今のところちょっとお手上げです。ただ、検索のために写真を何枚か撮ったので、一応、載せておきます。 顔と触角を写したものです。 腹を背側から撮ったものです。腹部第1背板の辺りに十字の模様がありました。 前脚と中脚は淡色で、後脚腿節の途中から黒色になっていました。腹部の腹側も淡色です。 腹部末端の写真です。上が横から、下は腹側からです。これは♀なのでしょうか?よく分かりません。 最後は脚の爪です。こんな二重の爪になっていました。これも検索では使うので、撮ることは撮ったのですけど・・・。 それにしても、ハバチの検索は難しいですね。いったいどの本を信じたらよいのかさっぱり分からなくなりました。 (追記2016/02/18:「絵解きで調べる昆虫」で属の検索に挑戦しました。検索した結果、ヒゲナガハバチ亜科Pristiphora属ではないかと思ったのですが、その部分の検索表を書いてみます。 まず、㊵と㊶は共にFig. 10を見るとすぐに分かります。また、脛節、跗節に特に異常が見られないことはFig. 13に、腹部末端節に異常がないことはFigs. 14と15を見ると分かります。また、㊹の頭盾下縁はFig. 3を見ると分かりますが、広く窪んでいますが、中央が湾入することはありません。従って、これもOKです。最後の爪はFig. 16を見ると、爪に歯はあるもののその基部に基片という出っ張りはありません。ということで、Pristiphora属になりました。合っているかなぁ) |
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Pristiphora属を調べていたらこちらへ入りました。
難しいことは分かりましたが闇の中にいるようですね。
まだまだ解明が進んでいない分野なのでしょう。
またいろいろ参考にさせて頂きます。
2016/7/13(水) 午前 5:29 [ バンビ ]
バンピさん、初めまして。
今、あらためて自分の記事を読み直してみたら、混とんとした内容ですね。ハバチの検索をしてみようと思い立ったのですが、検索表の初めの部分で躓いてしまって・・・。でも、今では少し事情が分かったので、もう少しすっきりさせることはできると思います。これまで、いろいろな虫の検索をしてきましたが、ハチは私にとっては強敵でなかなか立ち向かうさえできません。その中ではハバチや有剣類は情報があるので、少しは攻められるかなと思っています。こんな風に暗中模索をしていますので、よろしくお願いします。
2016/7/13(水) 午前 6:56 [ 廊下のむし ]