廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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アリガタバチっていうのは何となく「有難い」ハチみたいで、前から気になっていたのですが、本当は「蟻形蜂」なのですね。それでも、一度調べてみたいなと思っていたら、先日捕まえることができました。

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捕まえたのはこんなハチです。体長は9.0mm、前翅長は6.1mm。そこそこ大きなハチです。まず、このハチが本当にアリガタバチかどうかというところから調べていくことにしました。そこで用いたのは、いつもの検索表です。

日本環境動物昆虫学会編、「絵解きで調べる昆虫」、文教出版 (2013)

この本は絵解きで分かりやすいので本当に役立ちます。ハチ目の検索表からアリガタバチ科に至る項目を拾っていくと次のようになります。

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各項目に番号をつけていき、関連する写真にそれを書き込みました。今回は種までいくつもりなので、全部で⑳まであります。そのため図がやや複雑になってしまいました。まず、一番基本的な①の腰のくびれと②の機能的な翅から確かめていきます。

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この写真を見ると、確かに腰がくびれていて、翅は機能的です。これで①と②は確かめられました。次の③は頭頂にトゲがあるかないかで次の写真を見て下さい。

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これは頭部を上から見たところですが、頭頂は平らです。従って、③はOKです。④は翅脈が退化しているかどうかですが、次の写真を見て下さい。

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前翅と後翅の写真です。一応、翅脈があるので、これが退化しているかどうかは見ただけでは分かりませんが、スズメバチ上科やヒメバチ上科と比べると貧弱な感じはします。退化したためかどうかは系統的に調べていく必要があります。ここでは、とりあえず退化しているとして進んでいきます。なお、翅脈の名称は

H. Goulet and J. T. Huber (eds.), "Hymenoptera of the world: An identification guide to families", Agriculture Canada Publication (1993) (ここからダウンロードできます)

を用いましたが、すべての脈には名前が書かれていませんでした。そこで、文献を探したのですが、見つかりませんでした。次の④の後半の部分では、後翅には確かに翅脈で囲まれた室はありません。従って、④はOKです。

追記2015/08/29:蜂の系統進化と翅脈の退化については次の論文に少し触れられています。

M. J. Sharkey and A. Roy, "Phylogeny of the Hymenoptera: a reanalysis of the Ronquist et al. (1999) reanalysis, emphasizing wing venation and apocritan relationships", Zoologica Scripta 31, 57 (2002). (ここからpdfがダウンロードできます)

この論文はRonquistの解析に37個の翅脈の形質を加えて解析したという内容です
。もっとも、Ronquistの論文でも翅に関しては38個の形質が含まれているので何が違うのか・・・

⑤は後脚転節の節数ですが、次の写真を見て下さい。

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この写真で示すように転節は1節です。⑥は後翅に肛垂があるかどうかですが、Fig. 4の矢印で示した部分が肛垂です。これでセイボウ上科になりました。

⑦と⑧は触角についてです。触角の写真を載せます。

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数えてみると全部で13節ありました。従って、⑦も⑧もOKです。⑨は腹部の節数ですが、Fig. 1に示したように見える部分では6節ありました。従って、これもOKで、結局、アリガタバチ科になりました。

次は亜科、属、種の検索ですが、ここでは寺山守氏の日本産ハチ類検索表PDFファイルの中にある「アリガタバチ科の種検索」をお借りして調べてみました。この検索表には絵がついているので、非常に分かりやすくできています。まず、亜科の検索です。

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⑩は前伸腹節についてなのでその部分の写真を載せます。

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トゲアリガタバチ亜科では前伸腹節の後縁両端がトゲのように突出しているのですが、この個体はそんなことはありません。また、Fig. 1に示しましたが、腹部第2節は特に大きいということはありません。これで⑩はOKです。次の⑪については、どれが後胸なのかが分からず迷いました。でも、図の部分でよいようです。この部分が大きいというのがムカシアリガタバチ亜科の特徴のようです。でも、とりあえずムカシアリガタバチ亜科になりました。

次は属への検索です。

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この検索表は雄と雌に分かれています。雄には翅があり、雌には翅がありません。⑫の肩板と単眼はFig. 7とFig. 2を見て下さい。ともにあります。次の⑬は腹部第2背板に孔や凹みがあるかどうかですが、特にありません。⑭は頭盾の形です。ここで台形というのは、台形の形で頭盾の先端が突出するという意味です。Fig. 2を見るとそんなことはありません。頭盾についてはもっと大きな写真を撮ったので後でFig. 10も見て下さい。また、複眼には短毛がまばらに生えているだけでした。交尾鈎というのはどれを指しているのか分かりませんでした。少なくとも、腹端の表には出ていないではと思いました。従って、これはパスします。

次の⑮は単眼の配列です。Fig. 2に見るようにほぼ正三角形に配列しています。さらに、Fig. 3の翅脈を見ると、外縁紋脈というのがあります。また、Fig. 7を見ると、前伸腹節は複雑な皺で覆われています。これで⑮はOKになりました。次の⑯は大顎についてです。大顎には歯が4本ありますが、その一番内側の歯が頭盾の方向を向いています。また、頭盾前縁はほぼ直線状です。さらに、触角挿入孔辺りは凹んでいます。触角末端節はFig. 6を見ると分かりますが、細長く先端は尖っています。長さは幅の3倍以上であることは確かです。最後の挿入器についてはよく分かりませんでした。これをパスして、ムカシアリガタバチ属になりました。

次は種への検索です。

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⑰はOKなので、⑱を調べてみます。頭部の点刻については相対的な表現で判断できませんが、次の前伸腹節は皺で覆われているので、この部分はOKだと思います。さらに、頭幅を測ってみると1.6mmありました。これでツヤムカシアリガタバチを除外できます。⑲は前胸背板の形ですが、台形になっていて段差のあるような形をしています(この部分は文章では分かりにくいです。もとの検索表についている図68と69を比較して判断するとよいと思います)。これでカタマルムカシアリガタバチを除外できます。最後の⑳の大顎が4歯というのはすでに見ました。Fig. 2を見ると、頭盾前縁がゆるく凹んでいるのが見えますが、後のFig. 10を見るともっとよく分かります。交尾鈎は分からないので飛ばすと、結局、ムカシアリガタバチになりました。合っているかどうか分かりませんが、とりあえず種まで行けたので嬉しいですね。

他にもいくつか写真を撮ったのでついでに載せておきます。

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頭部の写真をいくつか撮ってみました。

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ついでに生物顕微鏡を用いて頭盾の拡大も撮ってみました。前縁が少しだけ凹んでいることが分かります。でも、何だかロボットみたいですね。

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