廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この間、やや大きめの羽アリを見つけました。

イメージ 1

こんなアリです。体長は8mm、前翅長9mm。触角が伸びていて、頭部がこんな恰好なので、たぶん、雄アリです。雄アリは「日本産アリ類画像データベース」に属までの検索表が載っています。早速やってみると、ヤマアリ亜科オオアリ属になりました。でも、検索表の最後のところでオオアリ属とトゲアリ属に分かれるところがどうもはっきりしなくてもやもやしていました。試しに、トゲアリの雄アリで画像検索してみると、アリを飼育されている方が雄アリの写真を出していて、それにそっくりでした。そこで、もう一度最初から検索をしてみることにしました。

雄アリの亜科への検索表のうち、必要な部分だけ上のデータベースから抜粋すると次のようになります。

イメージ 2

これを写真で確かめていきたいと思います。例によって、写真に検索表の番号と項目を書き込んでみました。

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Fig. 1は横から見たところです。全身が長い毛で覆われていることが分かります。腹部第1節がちょっと歪んでしまっていますが、気にしないで下さい。

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次は頭部です。字がいっぱいですが、このくらい顔に関する項目が多かったということです。まず①は大顎がそれほど大きくなくて、また、頭の形が横長でないことを意味しています。②は額隆起線が後方に向かって広がっているという内容です。写真では額隆起線が少し見にくいのですが、拡大して見ると線が入っていることが分かります。

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さらに腹部末端の亜生殖板というのが図の矢印の部分ですが、これの突起が1つというのは何を意味しているのか・・・。よく分かりません。

Fig.1から腹柄節が1節だという③はすぐに分かります。④は触角挿入部が大顎から離れていること、それに頭盾が消失していないこと、それに額隆起線があることなどですが、いずれもOKです。⑤は大顎の歯が粗いことと、腹柄節の幅に関するものです。次の写真を見て下さい。

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腹柄節はM字型をしていますが、特に横長というわけではありません。⑥は腹部第2節の前縁が第1節の下に入り込んでいることを意味しています。

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さらに、盾板と小盾板の間に変わった模様は入っていません。ということで、ヤマアリ亜科に到達しました。

次は属への検索です。やはり検索表を抜粋して載せ、通し番号をつけました。

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最後の部分はトゲアリ属とオオアリ属の両方への道を書いておきました。まず、⑦は大顎が鎌状でないことを言っています。Fig.2を見ると、一見、鎌状のような気がしますが、サムライアリ属はもっと大きな鎌になっています。⑧は次の写真を見てください。

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ご覧のように触角は13節あります。最後の13節目が薄っぺらいのですが、これについては後で拡大した写真を載せます。⑨は次の写真に載せました。

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中胸側板上の黄色の部分の拡大写真を左上に載せました。鱗状の構造が見えます。⑩の前伸腹節の気門はFig. 4に載せましたが、スリット状です。⑪の触角挿入部は頭盾から離れたところにあることがFig. 2から分かります。さらに、後胸側腺の開口部はFig. 7にあるようになくなっています。これで、トゲアリ属かオオアリ属かという段階に達しました。

最後の決め手は頭部が複眼の上と下で比較して、下側が細くなっているかどうかです。Fig. 2に黄色の矢印を入れてみましたが、この写真を見る限りは細くなっていないので、トゲアリ属になります。でも、実は最初ここで間違ってしまいました。もう一つ条件があります。それは腹部第1節背面に剛毛があるかどうかです。Fig. 4を見ると、背面はつやつやしていて剛毛はありません。最初は腹部にも毛が多いので、剛毛があるとしてしまいました。でも、分かってしまうと検索表の通りで、この個体はトゲアリ属で間違いないようです。

トゲアリ属で本州に生息するのは、トゲアリ亜属のトゲアリとマルトゲアリ亜属のチクシトゲアリの2種です。残念ながら、ここから先の雄アリの検索表がないので、ここでストップです。ですが、後者はまれなので、たぶん、トゲアリの方ではないかと思っています。「日本産アリ類全種図鑑」(学研、2003)によると、トゲアリの結婚飛行は9ー11月なので時期も合っています。

トゲアリは一時的社会寄生という変わった生活をすることが知られています。これについては、「日本産アリ類全種図鑑」に詳しく載っています。これによると、結婚飛行を終え交尾した女王アリは翅を落とした後、クロオオアリやムネアカオオアリなどの巣の中に入り、働きアリに馬乗りになってそのまま数日間押さえ込み、匂いを体に移すそうです。その後、宿主の女王アリを殺して、そのまま女王アリとして居座ります。働きアリから栄養を受け取り、自分の卵を産んで宿主の働きアリに育てさせます。トゲアリの働きアリの数が増えてくると、本来の巣である木の洞に集団移動します。この頃になると、宿主の働きアリは寿命で死んでいくので、結局、トゲアリだけの巣が出来上がるというわけです。

トゲアリやチクシトゲアリの雄アリの記述がないかとあちこち探し回ったのですが、結局、次の論文にちょっと載っているだけでした。

A. C. F. Hung, "A revision of ants of the subgenus Polyrhachis Fr   Smith   (Hymenoptera:
Formicidae:  Formicinae)", Oriental  Insects 4, 1 (1970). (ここからpdfがダウンロードできます)

この中で、トゲアリの雄について書いてありました。その部分を訳してみると、

雄:黒くて毛が多い;黄褐色の毛が脚を除いて体全体を覆う。大顎は尖った先端を持ち、そしゃく縁には歯がない。中胸背板は湾曲していて、胸部には棘がない。腹柄節の棘は短く、結節がある。後翅には中室はない。交尾器は・・・

となります。大したことは書いてありません。腹柄節の棘が短いことは写真でも分かりますが、結節(tuberculate)って何だろう。このように雄アリの情報があまりにも少ないので、検索に使わなかった写真も少し載せておきます。

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まずは翅脈の写真です。翅脈の名称は次の論文によっています。

M. Yoshimura et al., "Male-based Keys to the Subfamilies and Genera of Japanese Ants (Hymenoptera : Formicidae)(Systematics, Morphology and Evolution)", Entomol. Sci. 5, 421 (2002). (ここからダウンロードできます)

なお、この論文にはトゲアリ♂の頭部と腹部第1節の走査電顕写真も載っていました。

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触角の先端はスプーンのようになっています。

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腹部末端の拡大写真です。

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頭部は何枚か写真を撮りました。口肢が長いですね。

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これも頭部の写真です。やや後ろから。

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前胸背板後縁に少し短い棘のようなものがあります。実はこれを見て、ひょっとしてトゲアリ属かもと思いました。

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最後は変わった形の腹柄節を斜め上前から撮ったものです。

アリは、働きアリの情報は多いのですが、雄アリや雌有翅アリの情報は驚くほど少ないです。これは巣を見つけると働きアリばかりいるからでしょうが、私のマンションには雄アリや雌有翅アリばかりがやってきます。情報を増やすためにもいろいろと捕まえて写真を撮っておこうかなと思いました。

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