廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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昨日に引き続いてヒメバチを詳しく調べてみました。

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対象としたのはこんなハチです。長い産卵管があるので♀ですね。これはヒメバチ科だと思うのですが、せめて亜科だけでも分からないかなと思って検索をしてみました。用いた検索表は、渡辺恭平氏のImformation station of Parasitoid waspsというホームページ(HP)にあるヒメバチ科の亜科への検索表です。ただ、この検索表は全部で81項目もあるので見ただけで嫌になってしまうのですが、今回はじっくりと調べてみました。検索の結果はトガリヒメバチ亜科になったのですが、その過程をちょっとまとめてみました。

追記2015/12/28:上記HPでは検索表を含めて、いくつかのページは引用不可となっていることに気が付きました。そこで、この際、この検索表のもとになった以下の本の検索表とトガリヒメバチ亜科の説明を自分で翻訳することにしました。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

専門家と違って怪しい翻訳になってしまうのですが、上記HPの訳を参考にしながら頑張って訳してみました。以後の検索表や写真の中の説明はこの私の訳にすべて置き換えました)

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検索表を見ていくと、いくつかの亜科を分ける項目と、亜科一つだけを調べていく項目があります。前者を四角で、後者を菱型で表してみました。上に紹介した本では一つの項目が3つから4つの小項目から成り立っています。これらすべてを書きあげていくのは大変なので、上の模式図では、亜科一つだけを調べる項目では代表的な特徴だけを書いてあります。こうやってまとめてみると何となく検索の流れが見えてきます。

これらの検索項目を1つずつ写真でお見せしていけばよいのですが、かなり大変な作業になるので、四角で囲んだ部分と、各論でトガリヒメバチ亜科の特徴を書いたものと、検索表でトガリヒメバチ亜科を決定する項目(上の模式図の⑧〜⑩)についてだけ写真でお見せすることにします(実際にはすべてを調べていくのですが・・・)。いつものように写真に項目の内容を書き込んでいったので、写真だけを見ていけばよいようになっています。

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さらに、これは上記の本に載っているトガリヒメバチ亜科の特徴を、私の拙い語学力で訳したものです。これらを写真を見ながら簡単に説明していきたいと思います。

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まずこれは横から見たもので、体長は約10mm。腹が上下に押されたようなヒメバチ・トガリヒメバチ型の体形です。⑦に書いてある♀の尾節はどれのことを指すのかよく分かりませんでした。(追記2015/12/29:♀の尾節(female hypopygium)は上の本に図が出ていました。産卵管が出てくる腹節のことを意味しているようです。よく腹部腹側で三角形に飛び出した部分から産卵管が出ている種がいますが、こういうのを「目立つ(conspicuous)」と言い、今回の個体ようにどこから出ているのか分からないようなものを目立たない(inconspicuous)と言っているみたいです。ここでは後者を不明瞭と訳してしまいました

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次は頭部です。頭盾は⑫にあるように盛り上がっています。また、顔面と頭盾は溝で分けられていることになっているのですが、この写真では中央部分の境目がはっきりしません。ここがちょっと気になるところです。

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次は頭部を横から見たところで、頭盾が隆起していることが分かります。

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これは胸部側面の写真です。まず⑬の前胸側板下方後角というのは白矢印で示した部分だと思うのですが、強く突出してはいません。中胸側線は浅い溝なのですが、広がりながら中胸基節近く(赤矢印)まで伸びています。また、epicnemial carinaという溝が中胸側板の前縁部に走り、その先端(黄矢印)は前胸背板後縁の中点(黄矢印)より高いところまで達しています。ということで、書いてあることと一致しています。

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これは頭部と胸部を背側からみたところです。複眼の内側に白い模様がありますね。これだけでも種が分かるのかもしれません。

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次は翅脈です。前翅に鏡胞があり、それが五角形であることが分かります。この五角形には柄がありません。さらに、後翅M+Cu脈が緩やかに湾曲しています。この「湾曲」という表現がもっと強く曲がるべきなのかどうかは判断できません。②の前翅2m-cu横脈は完全です。これが「管状(tubular)」というのは、翅脈が体液の通る管として明瞭に走っていることを示している表現だと思います。これに対応する表現で星雲状(nebular)翅脈というのがありました。訳が正しいかどうか分かりませんが・・・。後翅2/Cu脈(これはCuの2番めの脈という意味のようです。翅脈の名称を必要な部分のみこの表現に基づいて直してみました)が明瞭だということ、それに、1/Rs脈と1r-m脈の長さを比べると1/Rs脈の方が長いことがすぐに分かります。

追記2016/01/03:翅脈の表現については次の論文に詳細が載っていました。

W. R. M. Mason, "Standard drawing conventions and definitions for venational and other features of wings of Hymenoptera", Proc. Entomol. Soc. Wash. 88, 1 (1986). (ここからpdfがダウンロードできます)

この中で、Masonは翅脈の状態の呼び方が統一されていないので、その定義をしたいという意図で、翅脈が退化していく過程として次の3つの状態を規定しました。液体が流れる完全な翅脈をtubular vein、液体は流れないが翅の膜がその部分だけ厚くなったnebulous vein、それに単に折れ目になってしまったものをspectral veinと呼ぶようにしたのです。spectralは幽霊のようなという意味で、透明で時々見えたり見えなかったりするからだということです


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これは前伸腹節を上から見たところです。複雑な隆起線が上部にだけついています。さらに、この写真では見難いのですが、突出部が左右に1つずつあります。また、長細い気門も左右に1つずつ見えています。

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次は後体節第1節の写真です。第1節の前の方が狭く、後の方が幅広いことはすぐに分かります。また、気門は後ろの方にあります。腹板は黄矢印あたりまで伸びているので、気門よりは後ろ側まで伸びていることになります。

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産卵管は真っ直ぐに伸びていき、先端は次第に細くなっています。上側に小さな窪みがあるのですが、繰り返し出てくる「切れ込みを持たない」と書いてあるのがかなり気になります。ひょっとしたら間違っているのかも。下側にはわずかな鋸歯があります。産卵管を包む鞘が柔らかいことはFig.9の根元に見える曲がったものが鞘なので、柔らかいのだと思います。

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最後は後脚脛節末端の刺ですが、2本あることはすぐに分かります。

ということで、トガリヒメバチ亜科の特徴はほぼ備えていると思うのですが、頭盾と顔面との境の溝と産卵管の上の切れ込みがかなり気になります。合ってるのかなぁ。ちょっと不安ですね。ただ、たとえ、トガリヒメバチ亜科で合っていたとしても、上のHPによるとこの亜科には229種もいるというので、種まではまだまだ先の長い話です。(追記2015/12/29:こうして原文を読んで検索をし直してみると、英語のニュアンスが何となく日本語のそれとは異なり、合っているのかどうかだんだん自信がなくなってきました。もう一度、手元の標本を使ってヒメバチ検索の練習をしてみたいと思っています

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