廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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昨日の続きで、シロガネコバエ科の属と種の検索です。

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対象とするのは体長2.5mmのこんな小さなハエです。昨日は「新訂 原色昆虫大図鑑III」に載っている科の検索表で検索を行い、シロガネコバエ科になりました。黄色の粉にまみれていますが、これは花粉のようです。岩佐光啓氏が日本衛生動物学会(1996)で発表したときの予稿集を見てみると、「成虫は花に集まるものが多く、中には捕食性昆虫と片利共生関係にあるものもある」とのことでした。やはり花を訪れた後の姿みたいです。

シロガネコバエ科は「新訂 原色昆虫大図鑑III」(2008)には新称として載っているのですが、「日本昆虫目録第8巻」(2014)によると、以前から使われていたクロコバエ科になっていて、新称はまだあまり普及していないようです。目録によると、4属14種。何とかなりそうな数字です。前日行った画像検索だと、Demometopa属が第1候補になっているのですが、この目録にはその属は5種が載っていました。そこで、まず属の検索をしないといけません。それで文献を探していたら、次の論文が見つかりました。

I. Brake, "Phylogenetic systematics of the Milichiidae (Diptera, Schizophora)", Entomol. scandinavica Supplement No. 57 (2000). (ここからダウンロードできます)

この中に属の検索表が載っていました。専門用語が分からなくてだいぶ苦労したのですが、翻訳しながら検索してみると、無事にDemometopa属に達しました。検索の過程を表にすると次のようになります。

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番号は昨日の科の検索の続き番号になっています。この4項目を確かめればよいということなので、いつものように写真で見ていくことにします。なお、語学力のないものが翻訳していますので、間違っているところも多いと思います。そのつもりで見ていただくと助かります。また、うまく訳せなかったところは原文そのまま載せてあります。また、翅脈名などが「大図鑑」方式と異なっているところは( )で補っています。さらに、原文の記述が違うのではと思ったところは( )内に?付きで書いてあります。

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まずは側面からの写真です。通常は光を拡散させるトレーシングペーパで試料を囲ってから撮影しているのですが、後から種の検索をするときに黒い艶や色を問題にするので、この写真では敢えてトレーシングペーパをはずして撮影しています。まず、鬚剛毛は複眼下端よりわずかに下に位置しています。まあ、頭部は角ばっている感じです。複眼の縦横比は写真が少し斜めになっているのですが、構わず測ると1:1.53となり1.5以上にはなりました。という具合にすべての項目が満たされました。

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次は翅脈です。最初のsc切目が発達していないというのはどうも合点がいきませんでした。私はこれはこれで十分に発達していると思いました。これはちょっと保留にしておきます。次のR4+5とM1+2は記述の通りです。

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これは翅の基部の拡大ですが、cua室の翅縁側は確かに丸まっています。

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これは前脚の付け根あたりを腹側から写した写真ですが、そこにbasisternumという腹板が見えます。この形がV
字型だというのですが、論文に載っていた図と似ているのでこれも大丈夫でしょう。

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次は頭部の写真です。⑭の後単眼剛毛は一本欠落していたので何とも言えないのですが、残った一本から判断すると、ほぼ平行みたいです。次の⑮の上額眼縁剛毛は論文の図ではこの写真と同じ3本を指しているので、ここは3本の方がよいのではと思って()内にそう書きました。最後はDesmometopa属にもっとも特徴的なところですが、「額内帯」と訳した筋が前額帯に1対入るために、その間の黒い部分がM字型に見えるという特徴です。そう見えなくはないですね。これで属の検索はすべて終わり、無事にDesmometopa属に到着しました。

最後は種の検索です。これについては次の論文を参照しました(最近、CiNiiが一部使えなくなって大変不便です)。

M. Iwasa, "The genus Desmometopa Loew (Diptera, Milichiidae) of Japan", Med. Entomol. Zool. 47, 347 (1996). (ここからダウンロードできます)

この論文には日本産の5種すべてが載っているので、検索には十分かなと思っています。ただ、検索の項目が色とか形とかやや抽象的なものが多くて、はっきりしないところで迷いました。従って、検索はかなり怪しいと思って見てください。とりあえず検索表をすべて和訳しました。

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抽象的というのは、例えば、最初の文章で「頬は驚くべき広く」とか、「光沢部は相対的に大きく」とかいう表現を指しています。ただ、論文には図が書かれているので、それを見ながら検索すると、何となく分かってきます。著作権の関係で論文の図が載せられないのですが、そちらを参照しながら見ていってもらえるとよいと思います。

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最初の項目は頬の大きさを問題にしているのですが、頬は湾曲しているので、どうやって測ったらよいのか分からず、頭部を横から見た図と比較して、これは広くない方だと判断しました。複眼直下と後頬領域が黒くなっているのですが、これも論文の図とよく一致しています。この部分がどうなっているのか、広いのかというのは次の写真の方がよく分かると思います。

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黒い部分は表面がちょっと違って見えます。また、黒くない部分には細かい毛が生えているようです。いずれにしてもこうやって見ると、後頬領域はかなり広く感じます。

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次は側板上の光沢部です。これも照明の当て方で光沢に見えたり見えなかったりと苦労しました。この写真は大きく見せるように当てたものです。これも論文の図を比較すると、まだ、小さな方で上が二裂しているとは言えないみたいです。

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この写真は生物顕微鏡で拡大したもので、光を拡散させるためにトレーシングペーパで試料を囲っています。光沢部分はかなり小さくなってしまいました。いずれにしても、光沢部分はそれほど大きくはないのだろうと判断しました。

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最後は口肢を写した写真ですが、根元が黄色くなっているのが見えます。これは2aの「基部1/3が明褐色」の意味かなと思いました。これらの判断がすべて合っているとすると、この種は2aのDesmometopa microps (ミナミクロコバエ)になります。この種は日本全土に分布し、牧場の近くや汚水の傍で見つかるそうで、成虫は訪花性だそうです。合っているかどうかは甚だ怪しいのですが、とりあえずこの種にしておこうかなと思っています。

検索に使わなかった写真も載せておきます。

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これは頭部を横から撮ったもので、口器を狙ったものです。

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次は腹部末端を横から撮ったものです。これは♀なのか、♂なのか未だに判断がつきません。

という具合で、シロガネコバエ科という聞きなれない科を種に近いところまで調べてみました。最後の種の検索は色や形を問題にするのであまりはっきりとは分かりません。それでも、当たらずといえども遠からずというところではないかと思っています。

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