廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この間からハムシの検索を始めたのですが、なかなか難しいところが多くて四苦八苦しています。実は、以前に検索してPagria属かもと書いた2個体()が、共に、サクラサルハムシらしいことが南雅之さんのご指摘から分かりました。どこで、間違ったのかというと、検索表に用いた次の論文の訳を間違えていたことと、その部位を間違えていたことの2つが原因でした。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. IV", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 235 (1964). (ここからダウンロードできます)

具体的には、サルハムシ亜科の検索表の最初の項目である、"Anterior margin of prothoracic episterna convex, more especially near anterointernal angle, the latter generally reflexed"を、「前胸腹板側縁の前縁側は凸型に曲がる。特に、通常反り返った前内側角付近」と訳してしまっていました。どうして、"Anterior margin of prothoracic episterna"を「前胸腹板側縁の前縁側」と訳したのかよく分かりませんが、実物の形を見ながら訳したので間違った意訳をしてしまったようです。

さて、そんなご指摘を受けて、また、どうもPagria属の検索が今一つ自信がなかったので、以前、採集したハムシがあったのを思い出して、それも調べてみることにしました。

イメージ 1

これは9月2日に家の近くの公園のツツジの葉で採集した個体です。私はこれをウスイロサルハムシだとばかり思っていて、ウスイロサルハムシならBasilepta属なので、Pagria属と同じ検索経路をたどるはずだと思ってやってみました。確かに以前と同じように検索していくとBasilepta属になったのですが、その後の種の検索でどうしてもウスイロサルハムシにはなりません。というのは前胸背板の点刻が問題になるのですが、この個体はほとんどはっきりした点刻を持たないからです。それでつくづく各部を眺めてみると、色はかなり違うのですが、先日、Pagria属とした個体と実によく似ています(例えば、複眼の上の溝だとか、前胸腹板辺りの構造)。

それで、たぶん、これもサクラサルハムシかもと思って検索をやり直してみることにしました。とりあえず、原点に戻って亜科の検索からやり直してみました。亜科の検索表には「原色日本甲虫図鑑IV」に載っている検索表を用いました。

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この6項目を確かめれば、サルハムシ亜科になります。これをいつものように写真で確かめていこうと思います。

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まず背側から見た全体像です。体長はどう測っていいのか分かりませんが、そのまま測ると2.8mmになりました。色はこんな薄茶色で、よく見ると、上翅は下が透けて見えているみたいです。

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これは横から見たところです。①はまず大丈夫だろうと思います。③の前胸背板も縁に複眼がほとんど接するくらいになっていて、また、矢印のように前胸背板側縁も見えています。

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これは頭部を前面から見たものです。触角は前額で隔てられています。また、「頭部が前胸の中に引き込まれ」というのはこの写真の方がよく分かります。

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頭盾が見えにくかったので、拡大してみました。前額と頭盾の境目については以前、「昆虫の頭の構造」で書いたことがあります。境目には頭盾会合線(前額縫合線)があるはずなのですが、この写真のようにはっきりしません。

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次は腹部からの写真です。④も⑤もたぶん、書いてある通りだと思います。

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最後は脚の跗節を拡大したものですが、第3節は2つに割れています。爪も二つに割れているのですが、これをappendiculate(付属体)というべきなのか、bifid(二裂)とすべきなのかいまいちよく分かりません。それでも、これですべての項目を確認したので、サルハムシ亜科は大丈夫だろうと思われます。

次はサルハムシ亜科の属の検索です。これには上に載せたKimoto(1964)の検索表を用いました。問題となった最初の項目を突破すると、後は問題なくサクラサルハムシが属するCleoporusに達します。その過程を書くと次のようになります。

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問題は⑦の項目です。今回はご指摘の通り、"Prothoracic episterna"を「前胸前側板」と訳しました。この前縁側の形ですが、具体的には次のサイトに載っているそうです。これはR. Wills Flowers, "Clave provisional para los adultos de la Eumolpinae de América Central"というサイトの中の検索表の一部で、Florida A&M Univ.の方がコスタリカの生物の本の中に書いたものの一部みたいです。

また、次の論文も紹介していただきました。

M. Chujo, "A Taxonomic Study on the Chrysomelidae (Insecta: Coleoptera) from Formosa. Part VIII. Subfamily Eumolpinae", Philip. J. Sci. 85, 1 (1956).

この中の図に各部の名称が出ていました。これを参考にまず、各部に名称をつけてみました。

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これは腹側から見た写真です。

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そして、これは横から見た写真です。問題の前胸前側板がよく見えています。確かにその前縁はやや凸のような感じがします。

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これは腹側を斜めから撮ったものですが、前胸背板前側板がよく見えています。角が反り返るというのもよく分かります。この上の写真から判断すると、以前は「前胸背板の折り返し」と前胸前側板の境を前胸前側板から見てやや凹んでいると判断していました。

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次は横からです。⑧も⑨も大丈夫でしょう。

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これは後脚です。あちこち撮影していると、必ず、後脚が一本取れてしまいます。それで、ついでに写しています。脛節の末端外側がえぐれていることが分かります。ということで、まったく色は異なるのですが、これもどうやらCleoporusの様です。九大の昆虫学データベースによると、日本産のこの属はサクラサルハムシ一種なので、自動的にサクラサルハムシということになります。南さんからお送りいただいた次の論文にはサクラサルハムシの色変化についても写真が載せられていました。

鈴木邦雄、南雅之、増岡裕大、「サクラサルハムシ(ハムシ科,サルハムシ亜科)の寄主植物選好性−富山県射水市の県民公園'太閤山ランド'における大発生をめぐって−」、さやばねニューシリーズ No.12, 38 (2013).

実に多様に変化しています。私が以前調べてPagria属かもと思った種を含め、同じような色の個体が載っていました。

ついでに検索に用いなかった写真も載せておきます。

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これは触角です。何かに使うかなと思ってついでに撮っておきました。

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前胸背板を写したものです。点刻はこんなに不明瞭なものです。

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これは腹側から写したものです。何枚か写したので、同じような写真が重なってしまいました。

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これはさらに拡大したものです。

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最後は脚の爪です。冷凍庫に入れておいた個体を撮ったので、爪の部分に水がついていたみたいです。それでも、爪が割れているようすは何とか見えます。

今回はサクラサルハムシに到達するのにずいぶん紆余曲折しました。でも、検索の途中でもやもやしていたところがかなりはっきりしてきました。南さんにご指摘いただいたお陰です。この場を借りて感謝いたします。甲虫の名前調べも遅々として進みませんが、ハムシについては少しずつ慣れてきた感じがします。これからもよろしくお願いします。

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