廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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先日、チャタテを捕まえて調べてみました。最初に見たときは、縁紋が四角いのでウスイロチャタテ科だとばかり思っていたのですが、爪の先端近くに歯があるので、マドチャタテ科であることが分かりました。今回はその先の種の検索なのですが、結論から先に言うとギブアップになりました。でも、とりあえず、ここまで調べてきたことをまとめてみようと思って書いてみました。

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対象としたのはこんなチャタテです。前翅に後小室がない、爪に歯があるということからマドチャタテ科は確かそうです。ここからは種の検索なのですが、いつも使わせていただいている次の論文の検索表で調べてみました。

富田康弘、芳賀和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、菅平研報12、35 (1991). (こちらからダウンロードできます)

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これはマドチャタテ科の種の検索表を書いたものです。検索の流れは⑧から⑩と行くのですが、⑪だけはどこからも到達できません。ただ、翅脈に沿って褐色の色素が沈着するとのことでここでは除外してもよさそうです。それで、まずは⑧を見てみます。

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これは前翅翅脈です。最初の項目の前翅翅端部の毛を見るためにその部分を拡大してみました。
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翅端部はR4+5とM1の間くらいで、そことはちょっとずれているのですが、短い毛がまばらに生えていることが分かります。それで、⑧aを選んで次の項目を見てみました。次は、「Rs脈はR2+3脈の約2倍の長さ」という項目です。Rs脈はR脈との分岐点からR2+3とR4+5脈の分岐点までなので、上の橙色の部分の距離の比を測ると1.70倍になり、まぁ、2倍に近そうです。前翅長は実測で2.3mmだったので、やや小さいかなと思ったのですが、最初はignisでよいのかなと思っていました。

ところで、値が少しずつ違うのが気になってもう少し調べてみました。もし、⑧bの方を選んだとすると、Rs脈とR2+3脈の長さの比は2倍からはずれ、quercicolaはその代表になるはずです。この種については次の論文に翅脈の写真が載っています。

K. Yoshizawa, "MORPHOLOGY OF PSOCOMORPHA (PSOCODEA: 'PSOCOPTERA')", Insecta Matsumurana 62, 1 (2005). (ここからダウンロードできます)

それで、quercicolaについても測ってみました。そうしたら、Rs脈とR2+3脈の長さの比は2.08倍になり、むしろ2倍に近くなりました。どうやら測り方が間違っていたようです。それで、是非ともignisの翅脈を見てみたいと思って文献を探してみました。

H. Okamoto, "Die Caecliiden Japans", Ann. Mus. National. Hungarici 8, 185 (1910). (ここからダウンロードできます)

この論文はignisの記載論文です。この中にignisについての説明が載っているのですが、残念ながら図がダウンロードできません。それで、説明文で何とか理解しようとしたのですが、これがドイツ語です。とりあえず、この論文に載っているPeripsocus属の種への検索表を訳してみました。

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この当時は3種しか記録されていなかったようですが、この中にignisとquercicolaは含まれています。検索表は富田氏らのものとよく似ています。ただ、Rs脈とは書かれず、Ⓐaでは径室の柄、Ⓐbでは径脈分枝室の柄と書かれています。たぶん、Ⓐaの径室は間違いで、径脈分枝室の柄が正しいと思うのですが、とりあえず、「柄」という表現から、Rs脈全体を指すのではなく、RsとM脈が合流している部分までを「柄」と考え、長さを測ってみることにしました。

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それがこの写真です。測り方は脈に沿って測る方法と直線的に測る方法があるので、両方とも試してみたのですが、値はほとんど一致しました。いずれにしても柄の長さはR2+3脈とほとんど同じでした。先ほどのquercicolaで測ってみると、1.19です。やはりほぼ等しくなっていて、Ⓐbの書き方とだいたい一致しているようです。やはりここを測るのかもしれません。ignisは径脈分枝の長さがかなり短いのでしょう。

Okamoto氏の論文にはignisとquercicolaの特徴についても載っていたので、翅の特徴についてまとめてみました。

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この特徴と比較するとやはりignisは違うようです。それで、⑧bを選んで⑨bに進むと、次の⑩で亜生殖板突起が分からずストップになってしまいました。

「日本昆虫目録第4巻」(2016)を見ると、日本産マドチャタテ科はPeripsocus属だけで、そこには次の7種が載っていました。

didymus
hongkongensis ×
ignis
pauliani ×
phaeopterus
pumilus
quercicola

このうち×を付したのは分布に本州が含まれないものです。ここからどうしようかなと思ったのですが、とりあえず、記載論文を集めてみようと思いました。上のOkamoto氏の論文はignisの記載論文になっています。

G. Enderlein, "Zehn neue aussereuropäische Copeognathen", Stettiner Entomologische Zeitung 67, 306 (1906). (ここからダウンロードできます)
G. Enderlein, "Neue Beitrage zur Kenntnis der Copeognathen Japans", Stettiner Entomologische Zeitung 68, 90 (1907). (ここからダウンロードできます)
I. W. B. Thornton and S.-K. Wong, "The Peripsocid Fauna (Psocoptera) of the Oriental Region and the Pacific", Pacific Insects Manograph 19, 1 (1968).  (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

上から、quercicola、pumilus、hongkongensisの記載論文になっています。残りのphaeopterusとdidymusはヨーロッパでも産する種なのでいろいろなところに載っています。

National Barkfly Recording Scheme
A. Badonnel, "Psocopteres", Faune de France 42 (1943). (ここからダウンロードできます)
C. Lienhard, "PSOCOPTÈRES EURO-MÉDITERRANÉENS", Faune de France 83 (1998). (ここからダウンロードできます)

ということで、本州に産しないpaulianiを除いてすべて揃ったのですが、翅脈は種によってそれほど違いはありません。やはり交尾器の違いを見ないと分からないみたいです。

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これは腹部末端を後方からと腹部側から撮ったものです。上の論文の図と比べてみたのですが、たぶん、♂だろうということは分かったのですが、どれが何に対応するのかさっぱり分かりません。まずは交尾器の見方を勉強しないといけません。いろいろと調べてきたのですが、結局はこれが結論になってしまいました。

ついでに撮った写真も載せておきます。

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これは顔の写真です。

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そして、これは前翅前縁付近にあるnodusという静止時に後翅を止めておくフックです。チャタテもなかなか進みませんねぇ。

雑談)足の甲の骨折から2週間ちょっとが経ちました。先週くらいから松葉杖であちこち動き回っているのですが、両腕で全体重を支えるので、相当にくたびれます。それで、もっぱらこれまでのブログに出してきた虫の写真と名前、それにその日のブログを対応させる表づくりに専念しています。これができると、ホームページに載せた画像リストになるのですが、昨日でやっと昨年10月末までの整理ができました。ここまでで、名前の付けられたものが全部で2050種になりました。この辺に生息する虫の種数から見たら微々たるものでしょうが、それでも、よく頑張ったなと思っています。

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