廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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昨日に続いて、カサハラハムシの仲間を調べていきます。

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対象とするのはこんなハムシです。体長は2.7mm。結構、小さいです。昨日は亜科と属の検索を行い、Demotina属になることを確かめました。今日はその続きで、種の検索です。実は、最初はチビカサハラハムシではと思っていたので、それが載っている次の論文の検索表を使いました。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. IV", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 235 (1964). (ここからダウンロードできます)

疑問になる項目もあったのですが、一応、チビカサハラハムシになったかなと思って、その説明を読もうと「原色昆虫大図鑑II」を見たら、検索表に出ていないフタモンカサハラハムシ D. bipunctataという種が載っていました。説明を読む限りカサハムシやチビカサハラハムシと区別が付けられません。それで、別の文献はないかと思って探していたら、次の論文を見つけました。

M. Isono, "A Revision of the Genus Demotina (Coleoptera, Chrysomelidae) from Japan, the Ryukyus, Taiwan and Korea, I", Jpn. J. Ent. 58, 375 (1990). (ここからダウンロードできます)
M. Isono, "A Revision of the Genus Demotina (Coleoptera, Chrysomelidae) from Japan, the Ryukyus, Taiwan and Korea, II", Jpn. J. Ent. 58, 541 (1990). (ここからダウンロードできます)

これは日本、台湾、韓国のDemotina属について書かれたもので、まさにピタリの論文でした。この2番目の論文の後ろに検索表が載っていました。この中に"Female with apical three sternites of abdomen serrated at lateral margin"という項目あります。訳すると、「雌の腹部先端3節の側縁には歯車状の装飾がある」となります。ちょっと意訳していますが・・・。これが分からないとフタモンカサハラハムシとカサハラハムシなどを分けることができないのですが、"serrated"が何を指すのか分かりません。

それで、もう少しネットを探してみました。そうしたら、今坂正一氏の「最新ハムシ事情図説6 カサハラハムシ属紹介1」、「最新ハムシ事情図説7 カサハラハムシ属紹介2」というサイトが見つかりました。このサイトでは各部位の写真を載せて絵解き検索になっているので大変分かりやすく、お陰で"serrated"の意味もよく分かりました。そこで、意を決して磯野昌弘氏の論文に載っている検索表に従って検索をしてみることにしました。

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取り消し線は日本に産しない種です。検索の結果、まったく予期しなかったのですが、この種はカサハラハムシやチビカサハラハムシではなくて、クシバアラゲサルハムシ serriventrisではないかという結論になってしまいました。ただ、この種は九州以南でしか記録されていない種なので、たぶん、間違っているのではと思うのですが・・・。とりあえず、その結果をまとめてみました。

検索は㋐b→㋑b→㋒b→㋓bと進みます。それを写真で見ていこうと思います。今回は検索順に見ていきます。

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まず、㋐の前胸腹板は矢印で示した四角い部分だと思います。この形状が幅より明瞭に長くはないので、㋐bを選びます。

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次は脚の脛節の色です。脛節の先端近くと基部近くに暗色の帯がないので、㋑bを選びます。

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次が問題の腹部側縁の歯車状の装飾(serratedをこう訳しました)。普通に見ていたらまず気が付かないと思うのですが、先ほどの今坂氏のサイトを見て、その部分を拡大してみると確かに歯車状の突起が見られます。今坂氏が調べたところによると、この構造は♀に特有で、これから調べる種に特別にあるというものではなく、広く一般にあって、産卵に関係した構造ではないかということです。とにかく、この種が♀であることも分かりました。

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最後が頭盾の形状です。頭盾はこの写真で示した通りです。この部分を拡大してみます。

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㋓はこれの縦横比についての項目です。測り方でなんとでもなるので、もっとも縦が長く、もっとも横が短いとした測り方とその逆で比を取ってみました。その結果は2.1と2.9になったので、中間をとると2.5付近ということになります。このことから、クシバアラゲサルハムシ serriventrisという、私の住む近畿地方には記録のない種になってしまいました。たぶん、違っているのだろうなと思ったのですが、どこが違うのか分からないので、とりあえずそのまま出しておきます。

そのほかの写真も載せます。

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最初に触角です。これはチビカサハラハムシでは触角第2節の方が第3節より長く、カサハラハムシではその逆だという「原色日本甲虫図鑑IV」の記述を確かめるために撮影したのですが、結果はほぼ等しくなりました。このことから、チビカサハラハムシではないのではと思うようになりました。

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次は上翅末端の構造です。さらに拡大してみます。

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この先端が突出しているか、鈍いかという項目が木元氏の検索表には載っていました。これについては先ほどの今坂氏のページに詳しく載っています。今坂氏によると、ここの形状は♂でははっきりわかるが、♀ではほとんど分からないとのことでした。この写真ではほぼ直角に見えますね。

今坂氏のページによると、Demotina属はいくつかの種群に分けられるとのことです。それらをまとめてみると次のようになります。

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その他というのは説明がなくてよく分からない種だそうです。これまでに出された検索表はこれらの種群や種亜群を分けるように作られています。それを図示すると次のようになります。

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Demotina属は①から③までの3つの項目で種群や種亜群が分けられます。フタモンアラゲ種亜群だけは種の検索まで書いてあります。この①から④まででそれぞれの検索表が何を基準として分けているかをまとめてみたのが次の表です。

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1964年の木元氏の検索表では③がなく、したがって、今回の種までは到達できませんでした。磯野氏と今坂氏の検索表は①を除くとほぼ一致しますが、今坂氏の方がより詳しく書かれているので検索する方としては助かります。特に、①で♂、♀による違いが書かれているのは大変便利です。こんな表を作ってもそれほど役に立つわけではないのですが、ちょっとまとめてみようと思って作ってみました。今度、別のカサハラハムシを見つけたら、是非とも調べてみたいと思っています。

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