廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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廊下のむし探検 雑談

1)この間から、羽アリの名前を知りたいと思って気合を入れて調べているのですが、なかなか難しくて手こずっています。とりあえず、♂有翅アリは日本産アリ類画像データベース」に載っている♂アリの検索表で属を調べて、次に腹部末端にある交尾器を調べれば、種名までは分からないのですが、とりあえず以前見た種と同じかどうかぐらいは分かります。それで、sp. Aとかsp. Bとか名付けていけば、数が集まるとそのうち種までたどり着けるのではと思っています。

一方、♀有翅アリについては、働きアリと同じ♀アリなのですが、翅が生えている分、中胸の発達が著しく、働きアリ用の検索表がそのまま使えそうにありません。小型働きアリ、大型働きアリ、♀有翅アリ、♂有翅アリのスケッチが描かれた論文があったので、ちょっと見てみました。

M. Terayama, "A New Species of the Genus Camponotus from Japan, with Notes on Two Known Forms of the Subgenus Myrmamblys (Hymenoptera Formicidae)", Jpn. J. Ent. 58, 405 (1990). (ここからダウンロードできます)

これはオオアリ属のヤマヨツボシオオアリ Camponotus yamaokaiの記載論文になっているのですが、比較してみると、働きアリには前胸背板があり、その後ろに中胸背板があり、そこからほぼ連続的に前伸腹節につながっていますが、♀有翅アリは前胸背板が前側にぐっと追いやられ、中胸背板が大きく拡がって盾板と小盾板に分かれ、それらとはっきりと区別されて前伸腹節があります。当然、前伸腹節も形が大きく変わっています。ただ、腹柄節は似たような構造をしています。♂有翅アリは♀有翅アリと胸部の構造は比較的似ています。

頭部を見ると、頭部全体の形は小形働きアリと大型働きアリでも異なるし、♂♀有翅アリでだいぶ変化しています。同時に頭盾も形がかなり違います。ということで、これらの形を使った検索項目は♀有翅アリにはあまり使えないことになります。

イメージ 1

これは「日本産アリ類図鑑」に載っているオオアリ属の検索表で、イトウオオアリ、ホソウメマツオオアリ、ウメマツオオアリに至る部分を抜粋したものですが、赤字の部分は働きアリ用だったり、頭盾、前・中胸、前伸腹節の形に関する記述が含まれる項目などで、そのままでは♀有翅アリには使えないと思われる部分です。殆どが赤字で、一部、腹柄節と体色や斑紋に関する部分だけが残りました。やはり♀有翅アリ専用の検索表が必要だろうと思われます。

一方、Ⓒの前半は前・中胸背板上の立毛の数を尋ねています。

イメージ 2

これは以前、ウメマツオオアリではないかと思って調べた働きアリの写真ですが、矢印で示した部分が該当する立毛になります。後ろの3本は前伸腹節上の立毛です。ところで、先ほどの論文を見ると、♀有翅アリの中胸背板上の立毛はかなり数が増えています。従って、立毛の数もあまりあてにはならないことになります。♀有翅アリ、なかなか難しいです。

2)ところで、この立毛については働きアリの検索をしているときもいつも迷ってしまいます。というのは検索項目には6本という具体的な数が書かれているのですが、実際に測ってみると、短い毛もあり、数も6本をちょっと越えたりすることがあるからです。一方、日本産アリ類画像データベース」に載っている検索表を見ると、微妙に数や表現が異なっています。それで、このⒸに相当する項目に対する表現を表にまとめてみました。

イメージ 3

Ⓒは4つの選択肢がある項目です。立毛のほかにも並列で他の部分についての項目が載っているのですが、そのうち、立毛に関する部分だけを抜き出したものです。第2列にあるTerayama (1999)は次の論文に載っている検索表を示しています。

M. Terayama, "The Ant Genus Camponotus Mayr (Hymenoptera: Formicidae) in Japan", Mem. Myrmecol. Soc. Jpn. 1, 25 (1999). (ここからダウンロードできます)

この論文はたぶん、第3列、第4列の検索表の基になっている論文だと思われます。表中のAは検索表に載っている表現です。また、Bは種の説明の中にある表現です。赤字は矛盾があると思われるところです。例えば、ケブカクロ(オオアリ)の項目を見ると、「アリ画像データベース」では長い立毛はあっても6本以下となっていますが、「日本産アリ類図鑑」では10本以上の長い立毛があることになっています。このままではどちらを選んでよいのか分かりません。ケブカツヤ(オオアリ)でも同じ矛盾が見られますが、さらに、「アリ画像データベース」内でも、検索表では長い立毛が6本以下となっていますが、種の説明では胸部背面に20本以上の鞭状の長い立毛を持つとなっていてよく分かりません。(追記2018/08/04:「アリ画像データベース」の検索表の方が「日本産アリ類図鑑」の表現より具体性があるので、たぶん、こちらの方が正しいのではと思っています

ただ、用いられている用語については気をつけないといけないところもあります。Terayama(1999)で「中体節」となっているのは、前胸、中胸、前伸腹節を合わせた表現で、「アリ画像データベース」と「日本産アリ類図鑑」に載っている「胸部」となっているのはたぶん、この中体節を意味すると思われます。従って、前・中胸と書いた場合と胸部と書いてあるときでは毛を数える領域が異なります。また、ある場合には単に「立毛」と書かれていたり、また、ある場合には「長い立毛」と書かれていることもあります。「日本産アリ類図鑑」に載っている挿絵を見ると、立毛には短めの立毛と長い立毛が混じっているようです。従って、長い立毛と書かれている場合には長いものだけを数えないといけないようです。(追記2018/08/04:ついでに立毛の数も論文によっては本数(hairs)で書かれていたり、対(pairs)で書かれていたりするので要注意です)(追記2018/08/04:Terayama(1999)の論文に載っている図を見ると、中胸背板と前伸腹節との間に狭い後胸背板が描かれています。さらに、前伸腹節のところは腹部第1節(前伸腹節)となっています。そう呼ぶべきかどうかはまだよく分かりません

3)雑談ついでに、ちょっと一言。最近、市役所で展示をしたり、老人大学で喋ったりして、また、自然観察をされている方と話す機会があったのですが、私と一般の方の興味がかなり乖離してきていることを痛感しました。私はただ、身近にいる動植物くらいは名前を知りたいと思ってこんなことを始めたのですが、最近は検索をしたり、虫の構造を調べたり、虫がもつ特別な機能や生活史、寄生を含んだ連鎖などを論文で探し出すことに興味が移ってきました。当然、これらのことは一般の方や自然観察されている方も興味があるだろうと思って話すのですが、どうもそれほど興味はなさそうです。代わりにホタルが減ったとか、〇〇チョウが減ったとかいうようなことに興味を持っておられるようです。今、「手作り図鑑」を作っているのですが、たぶん、大多数の方にとってこんな趣味的な図鑑には興味がなく、虫の名前がさっと分かるような一般的な図鑑を望んでおられるのでしょうね。

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特に虫を趣味にしていない方であれば、深すぎる話かもしれませんね。しかし、そこまで突っ込んで研究できる方は大変稀で貴重な存在だと思います。私はいつも興味深く拝見し勉強させて頂いております。これからも応援致しております。

2018/8/3(金) 午後 7:08 [ meg*neu*a*1 ]

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meg*neu*a*1さん、こんばんは

だんだんお話しする方も減ってきて、ちょっと孤独感を味わっていました。励ましていただき、がぜん元気が出てきました。そうですね。ブログを見ていただいている大勢の方がおられましたね。これからもめげずに頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

2018/8/3(金) 午後 8:09 [ 廊下のむし ]


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