廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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昨日の続きでニレハムシではないかと思われる個体の検索です。昨日は属までの検索だったので、今日は種までの検索を試みます。

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対象とするのはこんなハムシで、10月2日に家の近くで捕まえました。体長は6.2mm。小さいなと思ったのですが、これが属するケブカハムシ属 Pyrrhaltaにはもっと小さなハムシも多いので、中間的な大きさみたいです。昨日は次の本に載っている検索表で調べました

木元新作、滝沢春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」、東海大学出版会 (1994)

その結果、ヒゲナガハムシ亜科ケブカハムシ属になりました。今日はその続きで種の検索です。この本には種の検索表も載っているでそれに従って調べていきました。

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これは検索表のうち、必要な部分だけを抜き出したものです。番号は昨日の続き番号になっています。実は、⑨で引っ掛かってしまいました。それで、とりあえず、⑧を調べてみます。

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⑧は触角末端節近くでの節の長さと幅の比に関するものです。実際に8〜10節で測ってみると、この図に示すように2倍よりは少し小さい値に落ち着きました。従って、⑧はOKです。この性質はサンゴジュハムシなどとニレハムシを区別するときに有用な項目で、生態写真でも容易に分かります。以前、サンゴジュハムシで測ったことがあるので、詳しくはそちらを見てください。

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⑨は上翅側縁に沿って隆起条があるかどうかです。その部分を拡大してみました。

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別の角度からもう一枚。上翅が縁で折れ曲がった部分が上翅側片なので、その境目が側縁になります。私は最初、「細い隆起条」というのは側縁に沿った上翅側にある隆起条だと思っていたので、この写真からそんなものはないなと思って検索を進めていきました。でも、ふと、側縁を見ると細い隆起条があります。ひょっとしてこのことかなと思ってしまいました。でも、側縁だからどのハムシでもあるかもしれないと思って、手元にあるPyrrhalta属の標本を探してみました。標本、あまり作っていなかったですね。ニレハムシらしい4匹とサンゴジュハムシ2匹しかありませんでした。サンゴジュハムシは確かに同じような側縁を持っているのですが、隆起条の有無で分けている種ではありません。

こうやって迷い始めるとすべてが怪しく見えてくるものです。とりあえず、隆起条があるという方に進んでみます。

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上翅側片はこの写真のように3/4は越えているので、⑪に進みます。体腹面はこの写真のように黒です。そうなると、オオサクラケブカハムシになってしまいます。

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でも、前胸後縁角は黒矢印で示すように強く裁断されていません。それで、文献を探すと、オオサクラケブカハムシの記載論文が見つかりました。

M. Chujo, "Description of a new chrysomelid-beetle from Japan", Kontyu 18, 29 (1950). (ここからダウンロードできます)

この論文の中で、オオサクラケブカハムシはLochmaea (Tricholochmaea) takeiiとして記載されているのですが、現在ではPyrrhalta takeiiとなっています。この論文には絵も載っているのですが、どう見ても前胸背板の形が違います。それで、もう一度、⑨に戻りました。この論文では、上翅側縁に関して、"the latero-marginal areae narrowly rimed, impunctuate, smooth and glabrous"と書かれています。つまり、「(上翅)側縁領域は狭く縁取られ、無点刻で平滑」という意味です。これはまさに上の写真のような縁のことを言っているのかと思って混迷を深くしました。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. VI Subfamily Galerucinae I", J. Fac. Agriculture, Kyushu Univ. 13, 287 (1964). (ここからダウンロードできます)

Kimoto氏のこの論文では検索表は英文になっていて、"Lateral margin of elytra with a distinct longitudinal convexity which is extending to apex"となっています。つまり、「上翅側縁には先端まで伸びる明瞭な縦のconvexityがある」という意味です。このconvexityはリーダーズ英和辞典によれば、凸状、凸面(体)という意味です。日本語の検索表にあるような「細い隆起条」というニュアンスとはかなり違っています。

迷いに迷ったのですが、最終的には次のように判断しました。過去に撮った写真を探してみると、隆起条のあるとされているアカタデハムシの写真が見つかりました。

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検索はしなかったのですが、外観からアカタデハムシだろうと思っている個体です。この上翅側縁を見てみます。

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側縁に沿って黒矢印で示した部分が膨らんでいることが分かります。

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一方、今回採集した個体は黒矢印のようにその部分が凹んでいます。たぶん、このことかもしれないと思ったのですが、今度、アカタデハムシを採集したときの宿題として残しておこうかなと思っています。

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とりあえず、隆起条のない方を選ぶと、⑫は触角の第3と第4節の長さ比較です。これも実際に測ってみました。わずかに第4節が長いことが分かります。

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さらに、色と斑紋に関するもので、これは大丈夫でしょう。ということで、問題の「隆起条」の部分さえクリアできれば無事にニレハムシに進むことができます。アカタデハムシを早く調べてみたい気分ですが、これまで2回ほどしか見つけていないので、いつのことになるやら。

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最後は脚の爪の拡大です。爪にはこんな歯がありました。

今年の冬は冷凍庫に入れてある試料を調べていこうと思っているのですが、ハムシはなかなか難しいですね。でも、一歩一歩進んでいきたいなと思っています。

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