廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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ちょっと休憩するつもりだったのですが、覚えているうちに書いた方がよいかなと思って、マダラバッタの続きを書いておきます。前回はバッタ科の途中までだったので、その続きです。検索にはやはり

日本直翅類学会編、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」、北海道大学出版会 (2006).

に載っている検索表を用いました。

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この5項目を調べて、マダラバッタ属であることを確かめたいと思います。

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⑥はショウリョウバッタを除外する項目なので、これは大丈夫でしょう。⑦はヒナバッタなどを除外する項目の一部です。

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次は問題の発音器です。発音器というとコオロギやスズムシなどを思い浮かべますが、普通のバッタにもあるようです。この項目はトノサマバッタ亜科に行くためにどうしても通らなければいけない項目です。対抗するのはヒナバッタ亜科で、こちらはヤスリ状発音器は後腿節の内側にあります。そもそもヤスリ状発音器とはどんなものか分からないので、少し文献を調べてみました。

R. F. Chapman, "The Insects, Structure and Function", 5th ed., Cambridge (2015).

この本には、ヒナバッタの後腿節内側の筋の上にpeg(釘とか杭とか)と呼ばれる小さな突起が並んでいる絵が載っています。

R. E. Snodgrass, "Insects, their Ways and Means of Living", Smithonian Scientific Series Vol. 5 (1930). (ここからダウンロードできます)

一方、Snodgrassの本にはイナゴモドキの翅にあるヤスリ状の発音器の絵が載っています。縦脈にも横脈にも小さな突起が並んでいます。その場所は上の翅の写真でAと書いた脈を指しています。この脈は基部の方へ向かうと消えてしまうので二次脈で、「新訂原色昆虫大図鑑III」の説明によると、「発音脈」と書かれています。そこで、まず、その脈を調べてみました。

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これは上の写真で赤丸で囲んだあたりを生物顕微鏡で拡大したと思ったのですが、脈の対応がつかないので、反対側の翅で撮ったようです。ともかく、白矢印が「発音脈」と呼ばれている脈です。鱗のような細かい凸凹はありますが、Snodgrassの絵にあるような突起列ではありません。これで迷ってしまいました。いろいろと文献を探したのですが、ヒナバッタについて書かれている文献は結構あったのですが、トノサマバッタ亜科はおよそ見つかりません。それで、翅の上を手当たりしだい調べてみました。

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これは赤四角で囲った部分の実体顕微鏡写真ですが、よくよく見ると、横脈上に規則正しい突起のようなものがあるようなないような。

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それで、バッタごと生物顕微鏡のステージに載せ、周辺から光を当て、そのまま翅の部分を拡大してみました。すると小さな突起が並んでいることが分かります。横脈の上でははっきりしていますが、縦脈の上ははっきりしません。後腿節を振動させたとき、むしろ横脈に沿うような形で動くのでこんな構造があるのかもと思っています。調べてみると、翅の先半分には広くこんな構造が分布していました。たぶん、これがヤスリ状発音器ではないかと思うのですが、実際に振動させているところを見たわけではないので何とも言えません。

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一方、摩擦器は後腿節内側にあるはずなのですが、実体顕微鏡で見てみるとこんな感じです。3本ほど筋が見られます。どれも可能性があるのですが、最も後半にある筋が最も高くて、表面がぎざぎざしているような感じです。これかなと思ったのですが、これもよく分かりません。この発音器と摩擦器はもう少し調べる必要があるのですが、とりあえず、発音器は翅にあったということにして、次に進みたいと思います。

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次は頭頂と額を分ける境界の有無です。この写真はバッタの頭部先端を撮ったもので、バッタが上を向いているような態勢で撮りました。白矢印で示した部分が境界です。これを境として頭頂と額は鋭角をなしています。これで⑧はOKです。この項目はトノサマバッタ亜科のバッタの中で、イナゴモドキ属、ツマグロバッタ属、マダラバッタ属、ヤマトマダラバッタ属を分ける項目です。

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次は頭頂両側の窪みですが、白矢印で示したように明瞭な窪みがあります。これで⑨もOKです。窪みがないのがイナゴモドキ属です。

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この写真は白矢印で示した部分にイナゴのような黒条がないことを示しています。黒条のあるのがイナゴモドキ属です。

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最後は頭頂両側の窪みが四角いことを示す写真です。ここが三角だとヤマトマダラバッタ属になります。発音器の部分でだいぶ苦労したのですが、以上で検索を終わり、マダラバッタ属になりました。日本産マダラバッタ属はマダラバッタ Aiolopus thalassinus tamulasだけなので、一応、マダラバッタでよさそうだということになりました。でも、発音器のところはもう少しほかのバッタでも調べてみる必要があります。

昨日はとりあえず、採集したマダラバッタのうち1匹を片側だけの展翅標本にしました。展足板の上にバッタをひっくり返して固定し、翅の展翅をしました。その後、固定できる脚と触角はピンで固定しました。バッタの展翅は初めてだったのですが、まぁ、何とかできました。内蔵を取っていないので、真っ黒になるかなとちょっと心配ですが・・・。

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