廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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冬になるとマンションにやってくる小さなハエが気になり出し始めます。今回調べたクロバネキノコバエ科はもうずいぶん前から気になっていたのですが、小さいのと情報が少なかったので、ずっとそのままになっていました。

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クロバネキノコバエというのはこんなハエです。大きく写していますが、体長は2mmほどしかありません。

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これは21日に採集した個体を冷凍庫に入れておいたのですが、3日前くらいに冷凍庫から出してきて写したものです。測ってみると体長は2.2mmでした。先日、各部の名称を調べたので、今回は検索を試みます。

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初めにどの検索表で調べればよいのかを調べてみました。左端の列は「日本昆虫目録第8巻」に載っている属名です。第2から第4列は検索表が載っている文献で、その中でどの属が扱われているかを〇で示しました。また、後半の3列は各属の特徴が載っている文献です。各文献は次の通りです。

MND: Manual of Nearctic Diptera Vol. 1 (1981). (ここからダウンロードできます)
MCAD: Manual of Central American Diptera Vol. 1 (2009).(ここで一部読むことができます)
CMPD: F. Menzel and W. Mohrig, "2.6 Family Sciaridae", in L. Papp and B. Darvas (eds.), "Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera (with special reference to fliew of economic importance)", Vol. 2 Nematocera and Lower Brachycera, Science Herald, Budapest pp. 51-69 (1997).
Menzel(1999): F. Menzel, "Revision der paläarktischen Trauermücken (Diptera, Sciaridae) unter besonderer Berücksichtigung der deutschen Fauna", Dissertation, Universität Lüneburg (1999). (ここからダウンロードできます)
Sasakawa(2003): 笹川満廣、「日本産双翅目ノート2」、Jpn. J. Ent. (N. S.) 6, 119 (2003).(ここからダウンロードできます)
Sutou(2004): 須島充昭、「日本産Sciara属群(双翅目、クロバネキノコバエ科)の系統分類学研究」、博士論文、横浜国立大学 (2004).(ここからダウンロードできます)

なお、CMPDは先日ご丁寧にもお送りいただいた文献です。この場を借りて感謝申し上げます。この表を見ると、CMPDが旧北区を扱ったものでもっとも多くの属を調べることができそうです。そこで、今回はこのCMPDと今まで使っていたMNDを使って検索を試みました。ただ、CMPDでもなお4属が載っていません。これについては後で考えることにします。

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CMPDに載っている検索表で上記の個体を調べてみると、Bradysia属になりました。そこで、まずはそれを写真で確かめていきたいと思います。なお、①の第2番目の項目については原文の意味がよく分からなかったので、かなり意訳をしました。違っているかもしれません。

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まずは①の前半部分です。M脈の分岐は黒矢印で示した部分です。ここで翅脈が分岐しますが、ほぼ対称的に分岐しています。また、M1脈は赤矢印で示すように弱く弓状に湾曲しています。これで、たぶん、①の前半はOK
だと思われます。なお、翅脈の名称は検索表に合わせるため、Menzel(1999)の方式を採用しました。

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これは意訳の部分なのですが、触角の各節には写真のように毛がいっぱい生えています。その長さが節の長さの1/3に満たないというものです。正確に測ってはいないのですが、たぶん、合っているのではと思います。

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口肢の基部には黒矢印で示すように2本の剛毛が見られます。これで②もOKです。

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これは中脚脛節末端の写真ですが、黒矢印で示したように長さのほぼ等しい末端距が2本あります。そういえば、後脚は調べなかったですね。

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次は前脚脛節末端の写真です。この写真を撮るのに実は半日もかかってしまいました。櫛状の剛毛列というのは黒矢印で示したあたりにある毛だと思われます。文献には綺麗な図が出ているのですが、何度写してもこんなぼんやりした写真しか撮れません。

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光を当てる方向を変えてみました。剛毛列がきらっと光りました。この条件で撮り直せばよかったかもと思うのですが、少々くたびれました。たぶん、櫛状の剛毛列があることだけは間違いなさそうです。

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マクロトリキアについては以前、書いたことがありました。もう一度繰り返すと、MNDに載っている説明によれば、

Macrotrichiaあるいはsetae(刺毛)はbristles(剛毛)、hairs、setulae(小剛毛)を含み、神経と結合していて、基部がalveoli(小窩)と呼ばれる膜状の環やソケットで囲まれています。
Microtrichiaはクチクラ表皮の伸長で、翅膜上の微毛やキチン表面を艶消しにするpruinescence(粉ふき)などがその例です。

と、こうなります。つまり、基部がソケットで囲まれている毛がマクロトリキア、表皮の一部が飛び出したのがミクロトリキアというわけです。R5脈の上にはマクロトリキアらしきものが生えていますが、M1、M2、Cu1a脈については生えていません。これで⑤はOKです。なお、膜面一面に生えているのはミクロトリキアだと思われます。

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最後は爪なのですが、これも写真がうまく撮れませんでした。でも、歯がないことは確かそうです。これで⑤はOKになり、この検索表の上ではBradysia属になりました。

この結果を再確認するために、今度はMNDに載っている検索表で調べてみました。

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こちらの方が項目は多いのですが、青色の項目についてはすでに調べたものです。従って、黒字の項目だけを見ていきます。なお、Ⓐについては自明なので省略します。

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ⒸとⒻがこの写真から分かりますが、たぶん、大丈夫でしょう。

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Ⓒの後半部分の英語がよく分かりませんでした。たぶん、この訳であっているのではと思うのですが・・・。つまり、頬が前方では複眼の下縁に達し、後方では上縁に達しているということなのですが。

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このⒺもたぶん、大丈夫でしょう。

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眼橋は綺麗に写りました。ほぼ完全に左右がつながっています。これでMNDの方もすべて調べたことになります。怪しいところと言えば、前脚脛節端の剛毛列でしょうね。とりあえず、これらの検索表を使うと共にBradysia属になったのですが、CMPDの検索表に載っていない4属についても調べてみました。

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これはSasakawa(2003)に載っていた各属の特徴です。

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最後のPseudolycoriellaに出てくる"x"はこの写真で示した部分の長さです。肘脈柄部と比較すると明らかに長いことが分かります。

Camptochaetaについては口肢第1節の剛毛が1本だけだというので除外できそうです。その他の3属についてはここに書かれた特徴だけだと除外できません。MCADの検索表にはLeptosciarellaとPseudolycoriellaが載っているのですが、これは残念ながら♂用です。でも、交尾器以外ならば使えるかもと思って調べてみると、やはりどうも違うようです。MohrigiaについてもLycoriellaに似ているようなので、これも違うかなという感じです。いずれにしても、はっきりとは分かりません。Menzelの博士論文を読むといいのですが、ドイツ語なので・・・。また、たとえ、Bradysia属だとしても、日本産Bradysia属は7種群+それ以外に分かれ、まだまだこの先は大変そうです。いずれにしても♂の形質を使って調べる必要があるので、是非とも♂を採集してみたいと思っています。

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