廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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この間から手作り図鑑を作るためにウスバカゲロウ科をまとめ始めました。いくつか標本にした個体があるので、もう一度見直していたら、つけていた名前がどうも違うのではと思う個体があって、もう一度検索をやり直してみました。だいぶ前だったので、きっと翅の模様だけで名前をつけていたと思うので、ちょうどいい機会だからちゃんと検索をしてみようと思ったのです。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索にはこの論文の検索表を用いました。この論文自体はウスバカゲロウ科の分類には翅脈と外部形態が主に使われ、もっとも重要と思われる♂♀の腹部末端構造の情報が十分でないので調べ直したという内容なのですが、今回は検索表のうちもっぱら翅脈と外部形態のみを使って検索をしてみました。

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検索表のうち、本州産の種に限って翅脈と外部形態のみを抜き出し、さらに、候補になったコカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisに至る経路だけを書いたものがこの表です。なお、族の検索にはこの間も用いた翅脈だけの検索表を用いました。青字は私が翅の模様だけで名前をつけて間違ってしまったモイワウスバカゲロウ Epacanthaclisis moiwanaへ至る道を表しています。実は、この両者は族レベルで違っていて、検索の早い時点で分けることができます。

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追記2019/02/26:昔のアルバムを見ていたら、まさにこの標本の個体を透明ケースに入れて写しておいた写真とそのネガが見つかりました。NIKON Slide Copying Adapter ES-1というスライドを写真に撮るためのアダプターがあったので、ためしにネガフィルムを入れて写してみました。そして、それを反転してみました。さらに、当時、写真屋でプリントしてもらった写真と比較して、明るさとコントラスト、色を補正した画像がこれです。ほぼ似たような画像が得られました。結構、こんな方法でもネガフィルムを復活できるかもしれません。これに伴い以後の文章を少し変えました

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生態写真がないので、こんな標本写真だけなのですが標本に添えられたラベルには1996年9月1日と書かれていました。この当時はたぶん、蛾の採集をしていて、そのついでに採集したものだと思われます。標本にいっぱい鱗翅目の鱗粉が付いていました。この写真では⑤の大きさを確かめます。前翅長は測ってみると34.5mmありました。検索表の表現では大形ということになります。従って、大きさについてはOKです。

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次は翅脈です。モイワウスバカゲロウは前翅の前縁領域が前後二つに分かれる脈をもつという2室的なので、この写真からでもすぐに違うと分かるのですが、気が付いたのは検索が終わってからでした。この写真では①、③、⑥を見るのですが、それぞれ青矢印、赤矢印、黒矢印で示した通りです。検索表に書かれている"rhegma"という単語が分かりませんでした。辞書やネットでだいぶ探したのですが・・・。普通に辞書を引くと「破裂」という訳が出てくるのですが、いくつかの論文で出てきた表現を見ると、青丸で囲った辺りを指している感じです。ちょうど縁紋に相当する後縁の構造というような感じです。違っているかもしれませんが・・・。いずれにしてもここには薄い斑紋があります。ということで翅脈はOKです。ただ、前翅の翅脈の名称でCuA2と書いた脈で迷っています。というのはComstock(1918)ではCuA1となっていたのですが、この論文ではどうやらCuA2としているみたいです。だとするとMPと書いた脈と融合するのか、それともMPなんてそもそもないのか。そんなあたりです。この辺の解釈はComstockにも書いてあったと思うので、もう少し調べてみます。

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次は前翅基部の翅脈です。これについては先日3種のウスバカゲロウでその翅脈を比べてみました。この個体では1Aと2Aがしばらく接近して平行に走り、その後、一時的に3Aと融合して、そこを離れてからはCuP+1Aから大きく離れるというウスバカゲロウやカスリウスバカゲロウと同様の翅脈をしています。

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ついでに後翅基部も載せておきます。カスリウスバカゲロウと非常によく似た構造をしています。実は、カスリウスバカゲロウと今回推定しているコカスリウスバカゲロウは同属です。

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この写真は初めてです。中脚脛節末端の距刺を示しています。びっくりするぐらい大きな距刺があります。検索表にはこの長さが出てきます。比較するのは跗節の節の長さです。Taと書いたのは"tarsus"の略で跗節を意味します。実は、跗節に番号をつけるときにちょっと迷ってしまいました。というのは跗節第1節(Ta1)が中央で2つに割れているように思われたからです。ただ、刺毛の生え方や色などを見ると、基部もTa1に入れてよさそうなのですが、判断が付きませんでした。それで、上の論文の各論を読んでみました。跗節については、Ta1=Ta2+Ta3、Ta5 >=Ta1+Ta2+Ta3+Ta4と書かれていたので、基部の部分もTa1に入れるのだろうと判断しました。それで番号を振ってみると、⑤に書かれている通りであることが分かりました。

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これは後脚の脛節距刺です。同じように鋭くて長い距刺がありますが、Ta4の末端に届くかどうかくらいなので、⑤の表現でよいのではと思いました。

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最後は口器に関するものです。下唇肢の第3節がどれかよく分かりませんでした。コカスリウスバカゲロウの各論を読むと、「上唇には茶色の毛。下唇肢第3節は茶色、先端は黄色、スピンドル形で先端は尖る・・・」とあります。色についてははっきりしないのですが、対抗する項目が暗褐色になっているので、それほどではないと思い、いいことにしました。

ということで、一応、すべての項目を見たので、たぶん、コカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisで合ってるのではと思っています。残りの標本も見直したのですが、それらは大丈夫でした。「日本昆虫目録第5巻」によると、日本産は17種、そのうち本州産は13種。一応、7種が私の住んでいるあたり(大阪北部)で採集されたことになります。

ついでに検索に用いなかったの写真も載せておきます。

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これは前胸背板。

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最後は腹部末端です。こんな形をしているのはどうやら♀の様です。如何にも特徴がないのですが、これが検索でどのように扱われるのかこれから調べてみたいと思っています。

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