廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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こんなタイトルで出そうとしたら、画面に「Yahoo!ブログのサービス終了のお知らせ」が出てきました。驚きました。これで6年以上続いた「廊下のむし探検」も終わりかなぁ。折角、いろいろと虫についても分かってきたのに残念です。これから先、いったいどうしたらよいだろう。

かなりショックだったのですが、予定通り、今日のブログを出すことにします。

先日、ウスバカゲロウの翅脈について書きました。このとき、翅の中央付近を走るCuA脈をCuAとすべきかCuA2とすべきか迷ってしまいました。その辺りを少し調べてみました。

[1] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

まずはこの本です。翅脈のバイブルともいうべき本で、発生期に翅脈に先だって成長する気管をもとに翅脈の名前をつけていく方法をとっています。一方、気管は横脈には伸びないことが多いし、また、二つの気管が近接して走っているときには翅脈になると融合してしまうこともしばしばです。それで、気管から類推するのは正しくないという批判もあります。翅脈の帰属にはこのほか、化石を調べて進化の過程から類推する方法と、近縁種の間の相同性から類推する方法があります。それで、翅脈の名称は人によっても時代によっても変わってしまうのです。

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この間のホシウスバカゲロウの翅脈を使ってComstock風に翅脈に名称をつけ色分けしてみました。黄色は径脈(R)、赤は中脈(M)、青は肘脈(Cu)を表しています。ポイントのなるのは丸印で囲ったところにある”*”で書いた脈の解釈です。この脈は少し斜めに傾いています。ComstockはここでM脈は分岐してMA脈とMP脈に分かれると解釈しました。これには次のような発生期の気管の観察がもとになっています。

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これはComstockの本の中の図ですが、"o"と書いた翅脈が上の写真の"*"と書いた脈に相当します。確かに"o"でM脈に相当する気管は分岐しています。また、そこで、Cu1脈の気管とごく接近しています。この二つの気管もとになり翅脈がくっついて上のような翅脈が出来上がったという解釈です。上の写真の例では、M1+2→MA、M3+4→MPなどとしていますが、MPとCuAは結局は横脈で結びついているという解釈になると思われます。

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ついでに前翅と後翅の基部を見てみます。同じように色分けしたのですが、特に変わったところはないようです。

ウスバカゲロウについて、その後、翅脈について書かれている論文を探してみました。

[2] P. A. Adams, "New Ant-Lions from the Southwestern United States (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Psyche 63, 82 (1956).(ここからダウンロードできます)
[3] T. R. New, "A Revision of the Australian Myrmeleontidae (Insect:  Neuroptera) I. Introduction, Myrmeleontini, Protoplectrini", Aust. J. Zool., Suupl. Ser. 104, 1 (1985).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
[4] L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

これら論文には翅脈の図が出ていて、Comstockとは異なる解釈になっています。ただ、そうする理由は[2]以外の論文には出ていないのですが、とにかくこれが現在では主流になっていると思われます。ポイントは前翅基部のM脈からR脈に向かう斜めの脈をM脈の分岐だと考えるやり方です。Adamsの論文にはその理由が少し書かれているのですが、Comstockの気管の発達の話には言及せず、近縁のヒロバカゲロウ科などの翅脈との関連からそうする方が相同性がよいという結論になっています。これらの文献に書かれた翅脈も微妙に違うところがあるのですが、大体は次のような図で描けると思います。

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先ほどのComstockの場合と比較すると、丸印で囲った辺りでM脈が前方に分岐し、R脈と融合あるいは並進した後、Rs脈と融合し、その後、分岐してMA脈になって翅縁に向かって走ります。前翅も後翅もまったく同じようにM脈は一度R脈と一緒になって進みます。従って、Comstockが前翅でMP脈とした脈はこちらではCuA1脈となり、CuA脈とした脈はCuA2脈になります。

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前翅と後翅の基部を見てみると、MA脈が斜めに分岐してR脈と融合あるいは並進している様子が分かります。私自身はこのMA脈が硬化していなくて、翅脈としてあまり有効に働いていないのではないかと思ってComstockの流儀で翅脈を描いたのですが、現在、このような名称となっているのならばこちらを採用するしか仕方がないですね。

もともと翅脈は曲がったり、翅脈同士が横脈で複雑に結合したりしているので、どれをどう呼ぼうと構わないのですが、進化の過程や近縁種との関係を論じるときにきちんとしたルールをもとにして名付けられないと議論ができません。しかし、当然、名付け方も解釈の問題になるので、人によっても時代によっても変化する可能性があります。従って、使うときには可能な限り図を描いて自分はこう定義しているんだということを示す必要があると思っています。

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