廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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3月2日にマンションの廊下を歩いていたらこんな甲虫を見つけました。

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「原色日本甲虫図鑑III」を見ると、ケシキスイ科のヘリグロヒラタケシキスイ Omosita discoideaに似ています。鞘翅の模様は若干異なるのですが、たぶん、この近辺は確かだろうと思っていたのですが、ついでだから、一度、ケシキスイ科の属の検索をしてみようと思い立ちました。属の検索表は同じ図鑑に載っています。甲虫の検索は微細な構造を見なくてはいけない上に、どれがその構造なのか書かれた本がなくていつも苦労します。今回も事情はまったく同じで、よく分からない項目がいくつかあるのですが、とりあえず、目的地がだいたい分かっているので、分かった項目だけ確かめてみることにしました。

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Omosita属に行くにはこの13項目を調べればよいのです。もし、目的地が違っていたら、どこかで矛盾が出るはずなので、そこでもう一度考えればいいやと思って確かめてみました。案の定、赤字で書いた部分は確かめることができませんでした。これは後で写真を見ながら説明します。これをいつものように写真で確かめていきたいと思います。今回は検索順ではなくて、部位別に見ていきます。

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まずは背面から見た写真です。ついでに大きさを測っておきました。体長は2.5mmです。思ったより小さな甲虫です。この写真からは検索表の⑥、⑩、⑪あたりが確かめられます。まずは全体に毛が生えていて、上翅には点刻が見えるのですが、やや不規則に並んでいます。また、背面が大きく隆起しているようには見えません。それで、いずれもOKとしました。

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次は頭部です。上唇と頭盾は明瞭に分かれています。どこが頭盾かはatと書いた穴を探すとすぐに分かります。これについては以前、「昆虫の頭の構造」という内容で書いたことがあります。atはanterior tentorial pitの略で、昆虫の頭蓋の後ろと前をつなぐつっかえ棒の前側の取り付け部分になっています。この孔を通って前額と頭盾が分かれ、そこに前額縫合線が通っています。従って、この孔から先端部分が頭盾になります。

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ついでに口器の各部の名前を書いてみました。上が前から、下が腹側から撮った写真です。でも、これがかなり難しい。先ほどの図鑑の口絵にも少し載っているのですが、検索項目の①に出てくる小顎の外葉を調べるには十分ではありません。それで文献を調べてみました。

Y.-K. Cao and M. Huang, "A SEM study of the antenna and mouthparts of Omosita colon (Linnaeus) (Coleoptera: Nitidulidae)", Microsc. Res. Tech. 79, 1152 (2016).

こんな論文を見つけました。これはもともと触角と口器にある感覚毛を電顕で調べたという内容なのですが、うまい具合にOmosita属です。それを見ながら名前を付けたのがこの図です。違っているかもしれませんが・・・。で、肝心の小顎の外葉の有無はよく分かりませんでした。たぶん、解剖して小顎の部分だけを取り出す必要があると思われます。

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触角は触角溝に収納されているのでこんな感じになっています。触角は基部の節が柄節、その次が梗節、そこから先を鞭節と言いますが、先端の3節(?)が急に太くなっています。この部分を球桿と言います。①と⑫はこの写真で確かめられます。球桿の部分を3節にするのか4節にすべきなのかまだよく分かりません。先ほどの論文では3節になっているのでそうしたのですが、検討が必要です。

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次は前胸背板の写真です。その基部に1対の凹陥があるというのが⑬ですが、これがなかなか分かりにくい。たぶん、線で示した部分だと思うのですが、照明を拡散板で拡散させて写すと凹凸がよく分からなくなります。だからと言って、拡散板を取ると凹みは分かるのですが、何となく汚らしく写ってします。それで、辛うじて分かるこの写真で我慢してください。側縁部が基部で内湾するというのもよく分からないのですが、曲率が変化している部分がそうなのかなと思いました。

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これは前胸を腹側から撮ったものです。前基節窩というのは前基節をいれる穴です。この下の矢印で示した部分が塞がっているので、穴が閉じています。これが④と⑦です。また、前胸腹板突起も示してありますが、特に分厚いという印象はありません。それで⑪もOKです。

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これは前脚を写したものですが、跗節の各節は先端が広がってように見えます。それで、⑧はOKとしました。

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これは中脛節の写真ですが、稜線は2本です。

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次は⑤です。腹部第1節に基節窩後縁線が見えますが、特に鋭くないので、たぶん、OKなのでしょう。「可視第1節」と書かれているのは、「原色日本甲虫図鑑III」の口絵によると、タマムシについては見かけの第1〜5節腹板が形態学的には第3〜7節腹板、カミキリムシでは第1〜7節が形態学的には第2〜8節になると書かれているので、たぶん、これも見かけの第1節という意味だと思われます。

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最後が背側から見た腹部末端です。上翅端がこんな風に丸くえぐられているので、尾節板がちょっとだけ見えています。ここに凹陥があるかないか、どこのことを言うのか分からなかったので、赤字にしました。

ということで、若干不明の部分があるのですが、①に関してはもう一方の項目が満足されているのでたぶん、大丈夫だと思われます。また、⑨は8個の小凹陥が一列に並ぶCircopes属とAethina属を除く項目なのですが、共に、外観がだいぶ違うので多分大丈夫でしょう。むしろ外観的にはキノコヒラタケシキスイ Physoronia explanataなんかが似ていますが、触角の球桿がより細いのと、検索表では⑧の前跗節の形状で分けられます。さらに、触角溝が八の字になるということなので、その辺でも異なります。ということで、たぶん、Omosita属でよいのではと思いました。ここから先は種の検索表がないので、何とも言えないのですが、たぶん、ヘリグロヒラタケシキスイでよいのではと思っています。この種については次の論文にも載っているのですが、斑紋はかなり違っていました。かなり変化があると思われます。

S. Lee, A. Kirejtshuk, and S. Lee, "Review of the genus Omosita Erichson (Coleoptera: Nitidulidae: Nitidulinae) in Korean fauna, with key to the Palaearctic species", J. Asia-Pacific Entomology 18, 837 (2015).(以前はresearchgateからダウンロードできたのですが・・・)
こんなタイトルで出そうとしたら、画面に「Yahoo!ブログのサービス終了のお知らせ」が出てきました。驚きました。これで6年以上続いた「廊下のむし探検」も終わりかなぁ。折角、いろいろと虫についても分かってきたのに残念です。これから先、いったいどうしたらよいだろう。

かなりショックだったのですが、予定通り、今日のブログを出すことにします。

先日、ウスバカゲロウの翅脈について書きました。このとき、翅の中央付近を走るCuA脈をCuAとすべきかCuA2とすべきか迷ってしまいました。その辺りを少し調べてみました。

[1] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

まずはこの本です。翅脈のバイブルともいうべき本で、発生期に翅脈に先だって成長する気管をもとに翅脈の名前をつけていく方法をとっています。一方、気管は横脈には伸びないことが多いし、また、二つの気管が近接して走っているときには翅脈になると融合してしまうこともしばしばです。それで、気管から類推するのは正しくないという批判もあります。翅脈の帰属にはこのほか、化石を調べて進化の過程から類推する方法と、近縁種の間の相同性から類推する方法があります。それで、翅脈の名称は人によっても時代によっても変わってしまうのです。

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この間のホシウスバカゲロウの翅脈を使ってComstock風に翅脈に名称をつけ色分けしてみました。黄色は径脈(R)、赤は中脈(M)、青は肘脈(Cu)を表しています。ポイントのなるのは丸印で囲ったところにある”*”で書いた脈の解釈です。この脈は少し斜めに傾いています。ComstockはここでM脈は分岐してMA脈とMP脈に分かれると解釈しました。これには次のような発生期の気管の観察がもとになっています。

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これはComstockの本の中の図ですが、"o"と書いた翅脈が上の写真の"*"と書いた脈に相当します。確かに"o"でM脈に相当する気管は分岐しています。また、そこで、Cu1脈の気管とごく接近しています。この二つの気管もとになり翅脈がくっついて上のような翅脈が出来上がったという解釈です。上の写真の例では、M1+2→MA、M3+4→MPなどとしていますが、MPとCuAは結局は横脈で結びついているという解釈になると思われます。

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ついでに前翅と後翅の基部を見てみます。同じように色分けしたのですが、特に変わったところはないようです。

ウスバカゲロウについて、その後、翅脈について書かれている論文を探してみました。

[2] P. A. Adams, "New Ant-Lions from the Southwestern United States (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Psyche 63, 82 (1956).(ここからダウンロードできます)
[3] T. R. New, "A Revision of the Australian Myrmeleontidae (Insect:  Neuroptera) I. Introduction, Myrmeleontini, Protoplectrini", Aust. J. Zool., Suupl. Ser. 104, 1 (1985).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
[4] L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

これら論文には翅脈の図が出ていて、Comstockとは異なる解釈になっています。ただ、そうする理由は[2]以外の論文には出ていないのですが、とにかくこれが現在では主流になっていると思われます。ポイントは前翅基部のM脈からR脈に向かう斜めの脈をM脈の分岐だと考えるやり方です。Adamsの論文にはその理由が少し書かれているのですが、Comstockの気管の発達の話には言及せず、近縁のヒロバカゲロウ科などの翅脈との関連からそうする方が相同性がよいという結論になっています。これらの文献に書かれた翅脈も微妙に違うところがあるのですが、大体は次のような図で描けると思います。

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先ほどのComstockの場合と比較すると、丸印で囲った辺りでM脈が前方に分岐し、R脈と融合あるいは並進した後、Rs脈と融合し、その後、分岐してMA脈になって翅縁に向かって走ります。前翅も後翅もまったく同じようにM脈は一度R脈と一緒になって進みます。従って、Comstockが前翅でMP脈とした脈はこちらではCuA1脈となり、CuA脈とした脈はCuA2脈になります。

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前翅と後翅の基部を見てみると、MA脈が斜めに分岐してR脈と融合あるいは並進している様子が分かります。私自身はこのMA脈が硬化していなくて、翅脈としてあまり有効に働いていないのではないかと思ってComstockの流儀で翅脈を描いたのですが、現在、このような名称となっているのならばこちらを採用するしか仕方がないですね。

もともと翅脈は曲がったり、翅脈同士が横脈で複雑に結合したりしているので、どれをどう呼ぼうと構わないのですが、進化の過程や近縁種との関係を論じるときにきちんとしたルールをもとにして名付けられないと議論ができません。しかし、当然、名付け方も解釈の問題になるので、人によっても時代によっても変化する可能性があります。従って、使うときには可能な限り図を描いて自分はこう定義しているんだということを示す必要があると思っています。
先日から手作り図鑑用にウスバカゲロウ科をまとめていたのですが、今日、だいたい出来上がって先ほどホームページにアップしました。その過程で、ホシウスバカゲロウはNemoleontini族Paraglenurus属に属していて、いろいろと面白い特徴を持っているので、顕微鏡写真を撮って検索をしてみました。一応、その結果をブログに出しておきます。

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ホシウスバカゲロウというのはこんな虫です。これは2015年8月12日にマンションの廊下で撮影したものですが、翅に独特の模様があるので、見るとすぐに分かります。今日は標本箱に入っている標本で検索を試みました。この個体は1998年8月14日に採集したものです。この頃は蛾の標本を作っていたときで、毎朝、出勤前にマンションの廊下を回り、10数匹の蛾を捕まえてきては出勤前に展翅をしていたころです。蛾以外にもいた虫は片端から展翅をしていたので、ウスバカゲロウの標本もいくつか残っています。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索にはこの論文に載っている検索表から、翅脈や外部形態だけを抜き出した検索表を作って検索をしてみました。

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この5項目を調べると、ホシウスバカゲロウであることを確かめられます。これを写真で確かめていきたいと思います。

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これは前後翅の写真です。①、③、⑤はいずれも赤矢印で示したところを見ると分かると思います。特に③はNemoleontini族の特徴です。

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次は前翅基部の写真です。特徴的なのは1Aと2Aが最初接近して平行に走り、やがて2Aと3Aが融合し、また、分かれます。今まで見た種とは融合している部分がやけに長いことに気が付きました。

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私にとってはこの写真がやや衝撃的でした。後脚の脛節末端にある距刺の長さがこの間調べたコカスリウスバカゲロウではTa4程度まで伸びていたのですが、これはせいぜいTa1と同じくらいの長さです。刺が長いというより、跗小節の長さが短いというのが正しいですが・・・。また、Ta5の腹側には黒い短毛が密生しています。これも検索表に書かれている通りでした。ということで、すべての項目が確認されたので、これはホシウスバカゲロウで間違いないと思われます。

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ついでに撮った写真も載せておきます。これは前胸背板を撮ったものです。頭頂は暗褐色で艶があります。

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次は腹部末端を横から撮ったものです。かなり複雑なので♂かなと思ったのですが、先ほどの論文の絵を見るとまさに♀と同じ構造をしていました。ついでに各部の名称を調べようと思ったのですが、どうもはっきりしません。

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論文には腹面から見た絵も載っていて、各部の名前が書かれているのですが、毛が邪魔をして細部はほとんど分かりません。腹部末端は難しいですね。
この間から手作り図鑑を作るためにウスバカゲロウ科をまとめ始めました。いくつか標本にした個体があるので、もう一度見直していたら、つけていた名前がどうも違うのではと思う個体があって、もう一度検索をやり直してみました。だいぶ前だったので、きっと翅の模様だけで名前をつけていたと思うので、ちょうどいい機会だからちゃんと検索をしてみようと思ったのです。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索にはこの論文の検索表を用いました。この論文自体はウスバカゲロウ科の分類には翅脈と外部形態が主に使われ、もっとも重要と思われる♂♀の腹部末端構造の情報が十分でないので調べ直したという内容なのですが、今回は検索表のうちもっぱら翅脈と外部形態のみを使って検索をしてみました。

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検索表のうち、本州産の種に限って翅脈と外部形態のみを抜き出し、さらに、候補になったコカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisに至る経路だけを書いたものがこの表です。なお、族の検索にはこの間も用いた翅脈だけの検索表を用いました。青字は私が翅の模様だけで名前をつけて間違ってしまったモイワウスバカゲロウ Epacanthaclisis moiwanaへ至る道を表しています。実は、この両者は族レベルで違っていて、検索の早い時点で分けることができます。

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追記2019/02/26:昔のアルバムを見ていたら、まさにこの標本の個体を透明ケースに入れて写しておいた写真とそのネガが見つかりました。NIKON Slide Copying Adapter ES-1というスライドを写真に撮るためのアダプターがあったので、ためしにネガフィルムを入れて写してみました。そして、それを反転してみました。さらに、当時、写真屋でプリントしてもらった写真と比較して、明るさとコントラスト、色を補正した画像がこれです。ほぼ似たような画像が得られました。結構、こんな方法でもネガフィルムを復活できるかもしれません。これに伴い以後の文章を少し変えました

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生態写真がないので、こんな標本写真だけなのですが標本に添えられたラベルには1996年9月1日と書かれていました。この当時はたぶん、蛾の採集をしていて、そのついでに採集したものだと思われます。標本にいっぱい鱗翅目の鱗粉が付いていました。この写真では⑤の大きさを確かめます。前翅長は測ってみると34.5mmありました。検索表の表現では大形ということになります。従って、大きさについてはOKです。

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次は翅脈です。モイワウスバカゲロウは前翅の前縁領域が前後二つに分かれる脈をもつという2室的なので、この写真からでもすぐに違うと分かるのですが、気が付いたのは検索が終わってからでした。この写真では①、③、⑥を見るのですが、それぞれ青矢印、赤矢印、黒矢印で示した通りです。検索表に書かれている"rhegma"という単語が分かりませんでした。辞書やネットでだいぶ探したのですが・・・。普通に辞書を引くと「破裂」という訳が出てくるのですが、いくつかの論文で出てきた表現を見ると、青丸で囲った辺りを指している感じです。ちょうど縁紋に相当する後縁の構造というような感じです。違っているかもしれませんが・・・。いずれにしてもここには薄い斑紋があります。ということで翅脈はOKです。ただ、前翅の翅脈の名称でCuA2と書いた脈で迷っています。というのはComstock(1918)ではCuA1となっていたのですが、この論文ではどうやらCuA2としているみたいです。だとするとMPと書いた脈と融合するのか、それともMPなんてそもそもないのか。そんなあたりです。この辺の解釈はComstockにも書いてあったと思うので、もう少し調べてみます。

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次は前翅基部の翅脈です。これについては先日3種のウスバカゲロウでその翅脈を比べてみました。この個体では1Aと2Aがしばらく接近して平行に走り、その後、一時的に3Aと融合して、そこを離れてからはCuP+1Aから大きく離れるというウスバカゲロウやカスリウスバカゲロウと同様の翅脈をしています。

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ついでに後翅基部も載せておきます。カスリウスバカゲロウと非常によく似た構造をしています。実は、カスリウスバカゲロウと今回推定しているコカスリウスバカゲロウは同属です。

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この写真は初めてです。中脚脛節末端の距刺を示しています。びっくりするぐらい大きな距刺があります。検索表にはこの長さが出てきます。比較するのは跗節の節の長さです。Taと書いたのは"tarsus"の略で跗節を意味します。実は、跗節に番号をつけるときにちょっと迷ってしまいました。というのは跗節第1節(Ta1)が中央で2つに割れているように思われたからです。ただ、刺毛の生え方や色などを見ると、基部もTa1に入れてよさそうなのですが、判断が付きませんでした。それで、上の論文の各論を読んでみました。跗節については、Ta1=Ta2+Ta3、Ta5 >=Ta1+Ta2+Ta3+Ta4と書かれていたので、基部の部分もTa1に入れるのだろうと判断しました。それで番号を振ってみると、⑤に書かれている通りであることが分かりました。

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これは後脚の脛節距刺です。同じように鋭くて長い距刺がありますが、Ta4の末端に届くかどうかくらいなので、⑤の表現でよいのではと思いました。

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最後は口器に関するものです。下唇肢の第3節がどれかよく分かりませんでした。コカスリウスバカゲロウの各論を読むと、「上唇には茶色の毛。下唇肢第3節は茶色、先端は黄色、スピンドル形で先端は尖る・・・」とあります。色についてははっきりしないのですが、対抗する項目が暗褐色になっているので、それほどではないと思い、いいことにしました。

ということで、一応、すべての項目を見たので、たぶん、コカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisで合ってるのではと思っています。残りの標本も見直したのですが、それらは大丈夫でした。「日本昆虫目録第5巻」によると、日本産は17種、そのうち本州産は13種。一応、7種が私の住んでいるあたり(大阪北部)で採集されたことになります。

ついでに検索に用いなかったの写真も載せておきます。

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これは前胸背板。

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最後は腹部末端です。こんな形をしているのはどうやら♀の様です。如何にも特徴がないのですが、これが検索でどのように扱われるのかこれから調べてみたいと思っています。

ウスバカゲロウの翅脈

この間から手作り図鑑を作っているのですが、今度はウスバカゲロウにしてみようと思って調べ始めました。文献を探していたら、日本産ウスバカゲロウ科を扱った次の論文を見つけました。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文は日本産17種すべての種の再記載をして、特に交尾器について詳細に書いたものです。また、種までの検索表も載っていました。これは助かったと思って、検索表で調べてみようと思ったら、翅脈の特徴が出てきました。翅脈は時代によっても、人によっても定義が異なるので、是非とも定義をはっきりさせてから使ってほしいと思っていたのですが、この論文にはそれがありませんでした。そこで、ほかにも翅脈を扱った論文はないかと探してみました。そして、次の論文を見つけました。

L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

この中でいくつかの属について翅脈が出ていて、その名称も出ていたのですが、かなり変わった名前の付け方をしています。それで、やはり翅脈は原点に戻らなければいけないな思って、いつものComstockの本を見てみました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

この本は古いのですが、発生過程で翅脈に先だって伸びていく気管をもとにしているので、ある程度、信頼性があります。それで、この本をもとにして、翅脈に名称を付けていき、検索表の内容を理解してみることにしました。

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これは検索表のうち、翅脈に関するものだけを3族に関して抜き書きしたものです。翅脈を見るだけでも、このようにこの3族が見分けられることになっています。それぞれの族の代表種として、マダラウスバカゲロウ、カスリウスバカゲロウ、ウスバカゲロウの3種を選び、その翅脈を手元にある標本で調べてみました。

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まず最初はウスバカゲロウです。これは2014年7月20日にマンションで撮影したものです。これの翅脈を見てみました。

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検索表では①→②b→③bと進むのですが、それに関係したところに赤字で番号を入れておきました。基本的にComstockの名称を使っているのですが、M1+2→MA、M3+4→MP、Cu1→CuA、Cu2→CuPと名称を現代風に変えています。前翅で"*"で書いた脈はちょっと問題になる翅脈です。基部に近いところにある"*"はStange(1994)ではこれをMAとしています。この脈はその後、R脈と融合、あるいは並走し、次いで、Rsと融合しRs+MAとしています。ただ、実際に観察してみると、"*"で示した脈は硬化していなくて、MAとするには如何にも問題がありそうな気がしたので、この案は採用しませんでした。前翅の中央付近にある"*"はComstockによるもので、ここでM脈は分岐して、MAとMPになるということになっています。これは気管の発達が実際にそうなっているので、ある程度説得力があるかなと思い、ここでも採用しました。

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前翅基部の拡大です。1Aと2Aの基部が接近して平行に走っているところ(赤矢印)と、その後、2Aと3Aが一時的に融合するところ(赤破線)がこの翅脈の特徴です。CuPはCuの基部で分岐し、その後、1Aと平行になりやがて両者は合流します。

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こちらは後翅の基部です。やはりCuPと1Aが一時的に融合しています。

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次はカスリウスバカゲロウです。これは2014年6月21日に撮影したものです。この場合は、①→②b→③aと検索は進んでいきます。

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先ほどと異なるところは③で示したRsが分岐する前の横脈の数がウスバカゲロウでは5本だったのが、これでは1本しかないところです。これで族の違いが分かります。

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次は前翅基部です。先ほどと同様に2Aは一時的に1Aに接近して平行に走り、その後、3Aと一時的に融合してから分離しています。

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そして、これは後翅基部です。ウスバカゲロウに似ていますが、少し異なるところもあります。

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最後はマダラウスバカゲロウです。これは2014年7月25日に撮影しました。この場合の検索は①→②aとなります。

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今回も①で示す部分は同様です。ここはMP2とCuAが横脈で結びつくというところです。

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このマダラウスバカゲロウは先ほどの2種と比べると2Aと3Aがだいぶ変わっています。2Aは1Aと接近することなく、また、3Aと融合することなく独立して走っています。その辺りがこの族の特徴です。

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最後は後翅基部です。

ということで、ウスバカゲロウの翅脈の特徴を少しだけ理解することができました。これからウスバカゲロウ科をまとめてみようかなと思っています。

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