廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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12月頃からマンションの廊下でよく見かけるニセケバエを調べています。

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ニセケバエは体長2-3mmの小さなハエの仲間ですが、時に、家屋のそばや植木鉢で大量発生するので有害昆虫となっているようです。生態はよく分かってないようですが、MNDによると、幼虫は腐敗した植物や動物の排せつ物に発生し、ときに球根や玉ねぎ、果物工場の廃棄物などからも発生するようです。先日、旧北亜区のニセケバエ科の検索表を送っていただいたので、12月21日に採集したこの写真の個体を調べ始めました。とにかく、情報の少ない仲間で、唯一、精力的に研究しているCook氏の論文がMNDの記事を除いては全く手に入らないのも痛手です。従って、送っていただいた次の本に載っている検索表を除いては属の特徴を確かめることができず、?付きになっています。

[1] J.-P. Haenni, "2.12 Family Scatopsidae", in L. Papp and B. Darvas (eds.), "Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera (with special reference to fliew of economic importance)", Vol. 2 Nematocera and Lower Brachycera, Science Herald, Budapest pp. 51-69 (1997).

この個体の各部については昨日ブログに出しました。このときも各部の名称がつけられなくて四苦八苦したのですが、検索の方は何とか属まで到達しました。その過程を見ていきたいと思います。

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まずは亜科の検索です。赤字は確かめることができなかった項目です。それ以外を写真で確かめていきたいと思います。

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まずは全貌です。体長は2.2mmですが、翅が長いので、見た感じは大きく感じます。色は全体に黒ですが、脚は淡褐色になっていて、前腿節の末端や跗節が暗褐色になっています。①はいいでしょう。

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これは盾板を横から見たのですが、②もよさそうです。

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②の後半については前脛節を調べてみたのですが、特に突起のようなものは見えませんでした。

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ニセケバエ科の検索ではとにかく翅脈に関する項目が多いのですが、亜科の検索でも②〜④までは翅脈に関する項目です。[・・・]のような括弧を今回初めて導入しました。これは私の注釈です。(・・・)の方は検索表中に載っていたものや英語の訳が適当かどうか分からないとき原文を書いておくときに使うことにしました。まず、②については特に異常は認められないのでOKとしました。③はこの写真では見にくいのですが、MとRs/R4+5脈はほぼ1点で交わります。厳密にはその交点は短い脈になっていてそれがr-m横脈です。これについては後の拡大写真の方がよく分かります。④は"f vn"と書いたものでこれは凹型の折り目にある擬脈です。擬脈かどうかこの写真ではよく分からないのですが、筋がはっきりしているのでたぶん、擬脈でよいのでしょう。それからM脈の分岐は完全でM1とM2という二つの脈に分かれています。これで、すべての項目を確かめました。

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次はよく分からなかった項目です。そもそも唇弁が矢印で示した部分かどうか分からず、また、擬気管とはなにかも分かりません。でも、③の項目は多いので、一つぐらい分からなくても大丈夫でしょう。

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これもきちんとした写真を撮らなかったのですが、後脛節に特に異常は認められなかったので、③のこの項目もよいことにしました。

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③は先ほど説明したr-m横脈についてです。短いですが、あると言えばあります。④はマクロトリキアについてですが、翅を見た感じでは後方のCu脈やA脈、翅膜にはありませんでした。こんな写真しかないのでよく分かりませんが・・・。③と④はこれでOKとなり、ほとんどの項目が確かめられたので、たぶん、Scatopsinae亜科までは確かだと思います。

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次は同じ文献に載っている族の検索表です。これも赤字の項目は確かめられなかった部分です。ほぼ順番通りに見ていきます。

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⑤は先ほどと同じ項目なのですが、マクロトリキアはありませんでした。ちなみに翅膜に生えているのはミクロトリキアで、マクロトリキアはR脈上に生えている太くて長い刺毛がそれで、基部にソケットと言われる孔があるのでミクロトリキアと見分けられます。

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平均棍を拡大してみました。柄の部分に2本の刺毛がありました(黒矢印)。

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胸部の形ですが、これも大丈夫でしょう。

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また、翅脈です。山のような項目があります。⑦はたぶん、大丈夫だと思います。⑧の過剰横脈についてはこの写真だけではよく分からないのですが、M1とR4+5を結ぶ長い横脈(ちょうど赤線の部分)を持つ属があります。また、その痕跡としてM1脈が途中で角ばっていたり、横脈の基部だけが残っていることがあります。これにはそんなものはまったくありません。それで、⑧はOKです。⑨については前縁脈(C脈)がR1脈で区切られていると考え、その前後を第1区分と第2区分としました。図ではそれぞれ1-Cと2-Cとしてあります。その長さ比べです。2-Cの方が圧倒的に長いので、⑨もOKです。

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⑦の第7腹板はs7と書いた部分だと思うのですが、後縁に目立った刺毛がありません。それでこれはOKとしました。

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これは胸部側面の前気門のあたりを拡大しました。たぶん、黒破線で表した部分がscleriteだと思うのですが、検索の項目に書いてあることでよいのでしょう。

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最後がまた口器の部分でよく分かりません。矢印で示した部分が口肢と唇弁ならば書いてある通りだと思いますが・・・。これで族の検索は終わりです。

ということで、若干、はっきりしなかったところもあるのですが、たぶん、Scatopsini族も大丈夫ではないかと思います。最後は属の検索ですが、長くなったのでこれは次回に回します。

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ニセケバエの検索をしようと思って、顕微鏡で各部の写真を撮りました。

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ニセケバエというのはこんなハエです。これは12月21日に写したものですが、この個体を採集して調べてみました。検索についてはまた次回に載せますが、まず、昨日写した顕微鏡写真を使って各部の名称を調べてみようと思いました。ところが、文献がなかなか見つかりません。それで、結局、次の2つの文献を参考にしました。

[1] J.-P. Haenni, "2.12 Family Scatopsidae", in L. Papp and B. Darvas (eds.), "Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera (with special reference to fliew of economic importance)", Vol. 2 Nematocera and Lower Brachycera, Science Herald, Budapest pp. 51-69 (1997).
[2] D. de S. Amorim and M. I. P. A. Balbi, "A review of Anapausis Enderlein (Diptera: Scatopsidae) in the Neotropical Region, with four new species and comments on the phylogeny of the genus", Zootaxa 1300, 1 (2006). (ここからダウンロードできます)

でも、まだ十分ではありません。それで、名称のない写真が続いてしまいました。特に交尾器あたりがさっぱり分かりませんでした。

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まずは横から撮った写真です。翅が長いですね。体長は2.2mmでした。

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頭部は角度を変えて2枚撮ったのですが、口のあたりがどうなっているのかが分かりません。検索には使うのですけど・・・。複眼がこんな色をしているのはたぶん、冷凍庫に入れておいたので、乾燥したからだと思います。

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これは頭部を背側から写したものです。左右の複眼が中央でほとんど接しています。その間に単眼が入り込んでいるので、面白い形をしています。胸背にある黄色い帯は後前胸背板だと思うのですが、確認が取れません。

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これは触角です。触角は全部で10節でした。

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これは盾板を写したものです。刺毛が生えているのですが、どの系列なのかまったく分かりません。

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胸部側面は例によって略号で書きました。

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略号の意味です。たぶん、合っているのではと思うのですが、これもなかなか確かめられません。

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次は翅脈です。翅脈の名称は文献[1]に従っています。f vnは"false vein"の略で擬脈を表しています。検索には翅脈が重要な役割を果たします。

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これは翅の基部です。r-m横脈が検索には出てきます。Rs/R4+5脈とM脈はほとんど1点で交わって、X型をしています。

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次は腹部の節です。脚が邪魔で途中の節がよく分からなかったので、今日、写真を撮り直しました。

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mtは中央背板で中胸の一部です。腹部背板は節がみんな見えたので、たぶん、大丈夫ではないかと思っています。

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そして、腹部末端です。こんな複雑な形をしていますが、たぶん、♂だと思います。♂の交尾器の絵はいろいろな論文に出ているのですが、同じような形のものが見つからなくって、それで、名前がついていません。何とか分かりたいのですけど・・・。

というので、各部の名称をつけようと思ったのですが、なかなかうまくは行きませんでした。でも、これらの写真があるのでなんとか検索の方はできました。文献[1]に載っている検索表で調べたのですが、たぶん、最初の予想通り、Scatopsinae亜科Scatopsini族のApiloscatopse属か、あるいは文献[1]には載っていない属かというところになっています。

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年が明けてから、ずっとマンションの廊下で見つけたイエバエを調べていましたが、少し終わりが見えてきたので、そろそろまとめて出そうと思います。

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対象とするのはこんなハエです。写したときには分からなかったのですが、特徴的な胸背の模様をしているので、家で図鑑を見ると、すぐにイエバエ科のセマダライエバエの仲間であることが分かりました。ただ、似ている種として、セマダライエバエとヒメセマダライエバエの2種がいます。「新訂原色昆虫大図鑑III」の図版では♂の図が出ていて両者は胸背や腹部の模様がはっきりと違うのですが、大石・村山氏の「日本産イエバエの同定」を読むと、「♀は色彩斑紋が♂と大きく異なり、注意が必要」とあり、♀では模様がだいぶ違うようです。この個体も♀なので、やはりちゃんと検索をしてみないといけないなと思ってやってみました。でも、これが深みにはまるもとになってしまいました。

[1] 篠永哲、「日本のイエバエ科」、東海大学出版会 (2003).
[2] 大石久志、村山茂樹、「日本のイエバエの同定」、はなあぶ 37、100 (2014).

イエバエ科までは確かそうなので、その先を上の二つの文献に載っている検索表で試してみました。[1]は日本のイエバエ科の総集編ともいえる立派な成書なのですが、亜科の検索表を使うとどうもうまくいかなくて困っていました。そうしたら、[2]の論文が出ていることを知りました。この論文は[1]で不都合なところを、多くの標本を調べて修正したもので、さらに、解説もついていて大変価値のある論文だと思いました。今回は亜科〜属の検索を[2]に載っている検索表を使って試みてみました。

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このイエバエはイエバエ科の中でもかなり特異な属に含まれているのか、たった3項目でマルイエバエ亜科のセマダライエバエ属 Graphomyaまで達しました。まずはこれを写真で確かめていきます。

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最初は胸部側板に刺毛があるかないかです。各部の名称は先日ブログに出したのですが、下後側板と上後側板は矢印で示した部分です。ちょっと拡大してみます。

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この写真を見るとすぐに分かりますが、下後側板には短い刺毛が生え、上後側板には生えていません。これで①と③はOKになりました。

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②は翅脈に関してです。M1+2脈というのは写真に示した通りですが、このハエではゆるく曲がっています。イエバエの仲間には曲がる種と曲がらない種があります。これで3項目すべてを調べたので、マルイエバエ亜科のセマダライエバエ属 Graphomyaは確かそうです。

文献[1]にはマルイエバエ亜科の属への検索表が載っているのでそちらも試してみました。

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こちらも3項目です。Ⓒはたぶん、赤字のように直さないとうまくいかないだろうと思ったので、直しておきました。これも写真で見ていきます。

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正中毛は盾板の中心に生える毛ですが、少し拡大してみました。

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acと書いた部分の毛が正中毛です。また、横線も書いた通りです。対抗する項目は横線前側にある正中毛が4列で、内側の列より外側の列の方が長くて強いというものです。この個体では均一なので、ⒶはOKです。

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Ⓑは先ほど見たので省略し、Ⓒを見てみます。腹胸側板というのは矢印で示した部分ですが、この上の剛毛の配列は検索表にたびたび登場します。前側と後ろ側にそれぞれ生える剛毛の数を〇+〇という風に書くと、この写真の場合は0+2となります。原文では0+1となっていたのですが、セマダライエバエ属に含まれる2種ではいずれも0+2なので、そう直しておきました。ともかく、これで、ⒸもOKとなり、こちらの検索表でもやはりセマダライエバエ属になりました。

次は種の検索です。実は、ここからが大変でした。文献[1]には種の検索表も載っているのですが、それはこういうものです。

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文献[1]では英語版と日本語版の検索表が載っていますが、これは日本語版を書いたものです。要は亜額帯といわれる頭部の部分に1列の短毛列があるか、多数の短毛があるかというだけなので、すぐに調べてみました。

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亜額帯というのは図で示した部分です。後でもう少し拡大した写真を出しますが、見るからにたくさんの短毛があり、とても1列とは思えません。それで、直ちにセマダライエバエになりそうなのですが、実は④aで書いた「一列の短毛列」は♂に対してだけ言えるようです。それはこの2種の説明を読むと分かります。

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これは[1]に載っている各論のうち、♀について両者の特徴をまとめたものです。赤字が両者で異なると思われる部分です。先ほどの短毛の部分を見ると、両方とも「多くの短毛がある」となっていて違いはありません。むしろ、oriという剛毛列の外側だけにあるか、内側と外側にあるかという違いがあるくらいです。そこで、この赤字の部分を今回の個体と比べてみることにしました。なお、4列目は今回の個体に関する値、最右列はmaculataとrufitibiaのどちらと判定できるかを書いたものです。結論から先に言うとどちらともいえない状態です。

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まず、体長から比べると、今回の個体は6.7mm。文献[1]に書かれた範囲には入っていませんが、2者の体長は重なっているので、体長だけからでは判断できません。ただし、「新訂日本昆虫大図鑑III」には括弧書きにしたように体長は違って書かれていました。これによれば、ヒメセマダラの方が合致しています。

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次は前額の幅と頭幅との比較です。前額の幅として図のように複眼側縁間の距離を測りました。説明には頭頂と触角基部が載っているのですが、ついでに何か所か測ってみました。角度を変えて写した写真3枚を使って測定し、それをグラフに表したのが次の図です。

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こんな風に比は連続的に変化していきます。青矢印で示した部分が文献に載っていた個所ですが、触角基部では44%程度、頭頂を単眼の場所で測れば30%となり、触角基部ではセマダラに近く、頭頂ではヒメセマダラに近いという結果になりました。ただ、測る場所により連続的に変化していく量なので、場所次第で容易に値が変化し、比較するにはあまりよい量とは言えません。少なくとも測定する場所をもっと厳密に決めておく必要があるだろうと思います。例えば、触角基部と前単眼というように。

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次は頭部の拡大です。ori は下額眼縁剛毛なのですが、黄色の点で表した部分になります。数えてみると、左右で少し数が異なり、ハエの顔に向かって左側で10本、右側で9本でした。また、orsは上額眼縁剛毛ですが、それぞれ2本と1本になります。この辺の数はヒメセマダラに合っています。ori の周囲には短毛がたくさん生えていますが、よく見るとoriの内側の黒い部分にも生えています。内側にも外側にも生えているので、これはセマダラの記述に合っています。

ということで、先ほどの表の最右列の判定を見てみると、mとrが混在していてどちらともいえない状態になってしまいました。ここで行き詰ったのですが、ほかにも両者の特徴を書いた論文がないか、文献を調べてみました。そして次の論文を見つけました。

[3] J. R. Vockeroth, “A Review of the World Genera of Mydaeinae, with a Revision of the Species of New Guinea and Oceania (Diptera: Muscidae)”, Pacific Insects Monograph 29 (1972). (ここからダウンロードできます)

この中でうまい具合にセマダラとヒメセマダラの両者の特徴が載っていて、さらに検索表までついていました。検索表のうち♀についてのみ書き出すと次のようになります。

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文章は長いのですが、要は、1)亜額帯の短毛、2)中胸背板横線後の正中暗色帯の幅についてです。早速、調べてみました。

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亜眼帯をori から複眼側縁まで距離の1/2と2/3の領域に分け、1/2よりori側に近い場所にだけ短毛があればヒメセマダラ、2/3を越えて生えていればセマダラとしています。ただし、ヒメセマダラでも2./3を越えるものもあるという注釈付きです。その部分を拡大してみます。

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この個体では2/3を越える短毛はないのですが、赤矢印で示したように1/2を越える短毛は少し見られました。でも、2/3を越えていないので、検索表の判定ではヒメセマダラに近いようです。

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次は盾板の横線後に見られる正中黒帯についてです。この幅がacで示した剛毛を越えるとセマダラ、越えないとヒメセマダラという見分け方です。残念ながらこの個体はちょうど線上くらいになっています。また、正中黒帯前方での亜正中黒帯との分離もやや不明瞭です。ということで、模様からは判定がつきません。

ということで、結論としては、短毛の生え方からはヒメセマダライエバエの可能性が高いと言えますが、その他の点ではセマダラとヒメセマダラの中間的な特徴を持った個体だろうということになりました。

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ついでに論文[3]に載っている♀の特徴をまとめておきました。♂との比較なので、それほど役に立つわけでもなかったのですが・・・。

模様から一発で分かりそうなハエなのですが、細かく調べるとなかなかどうして手強い相手でした。結果ももやもやもやした感じが残りました。でも、お陰で細部までよく分かったので、今度見つけたときには見る目も変わっていることでしょう。もっともそれまで覚えていたらの話ですが・・・。

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実は、1月2日に採集したイエバエをブログに出すより先に調べてしまいました。いつものように、検索をする前に各部の名称を調べてみました。

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捕まえたのはこんなハエです。胸背の模様が変わっているし、最近、クロバネキノコバエのような小さなハエばかり調べていたので、たまにはこんな大きめのハエもいいかなと思って採集しました。図鑑で調べてみると、こんな模様のハエはセマダライエバエの仲間で、その中でもヒメセマダライエバエに似ている感じです。特徴のあるハエなので、模様からほとんど名前が分かるのですが、いいチャンスだから練習のつもりで検索もやってみようと思ったのが、苦戦の始まりでした。いつものように「日本のイエバエ科」や大石・村山氏の「日本産イエバエの同定」で調べてみると、マルイエバエ亜科のセマダライエバエ属にはすぐに到達するのですが、その後の種の検索で思いのほか苦戦です。大石・村山氏の論文にも「♀は色彩斑紋が♂と大きく異なり、注意が必要」とのことで、模様だけの判定では難しいようです。この検索の話はまた次回に回すことにして、今回は各部の名称を調べてみました。

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まずは横から見た写真です。体長は6.7mmです。また、最初の写真でも分かるように複眼の間隔が離れているのでこれは♀です。

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次は背側からの写真です。腹部の節については、篠永哲氏の「日本のイエバエ科」を参考にしました。t は背板の意味のtergiteの略です。t1 はt2 と融合しているのか、単に見えにくいのか、ともかく絵には描かれていませんでした。(追記2019/01/06:文献を少し調べてみました。

E. C. M. D'Assis Fonseca, "Diptera Cyclorrhapha Calypterata, section (b) Muscidae", "Handbooks for the Identification of British Insects", Roy. Entomol. Soc. London X, Part 4(b) (1968).(ここからダウンロードできます)

この本の中に、hypopygium(尾節)を除くと腹部は6節で、第1と第2背板は多少なりとも融合し、第6節は第5節の下に殆どまたは完全に隠されていると書かれていました。さらに、融合した第1背板の後縁は溝のような横筋やその直後の刺毛列によって容易にトレースできるとも書かれていました。この個体では少し奥まったところにあるのか写真ではよく分かりませんでした

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次は顔です。これは主に「新訂原色昆虫大図鑑III」の絵を参考にしました。どうせ、英語の論文を読まなければならないので、英語名も一緒に書いておきました。今回は額嚢溝、顔隆起線、前額―顴溝辺りがよく分かりました。

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斜め前から撮った写真もあったのですが、これだと溝と隆起線がよく分かります。それにしても、実体顕微鏡で見るだけでよいというのは楽ですね。クロバネキノコバエは生物顕微鏡を使わないと細かいところが見えないし、前脚脛節末端については脚の向きや照明方向もいろいろと変えなければいけなかったのでともかく大変でした。

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次は胸部側面です。込み入っているので略号で示しました。英語名をそのまま略したので、一般的でない略号になっていると思います。

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これが略号の意味です。英語と日本語は共に「新訂原色昆虫大図鑑III」を参考にしました。

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これは腹部を腹側から写したものです。これも、「日本のイエバエ科」を参考にしました。s は腹板を意味するsterniteの略です。ここでは腹部第1腹板 s1 が見えていることを知りました。

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次は翅脈です。これは「新訂原色昆虫大図鑑III」を参考にしました。

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続いて刺毛です。まずは頭部の刺毛です。oriというやや長い内側に傾いた刺毛が並んでいます。orsという後傾の短い刺毛が2本あります。そのほか、oriの付近には短い毛が沢山生えています。この辺りが検索では重要になるのですけど・・・。

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胸部の刺毛は二方向から撮りました。刺毛は写真ではうまく写らないlことが多いのでいろいろな方向から撮っておくことが重要です。刺毛の略称は「日本のイエバエ科」を参考にしました。盾板の前半部に筋がありますが、これが横線です。この横線の前方で黄矢印で示した刺毛は「日本のイエバエ科」ではprsとなっていたのですが、大石・村山氏の論文によると、prsはクロバエ科で用いられている名称の様なので、括弧書きにしておきました。これをia の系列に入れてよいものかどうかよく分かりません。横線後にも黄矢印で示した刺毛があるのですが、「日本のイエバエ科」のセマダライエバエとヒメセマダライエバエの各論の説明では、ia 0+1となっていて、つまり、横線前に0本、横線後に1本という意味なので、これを ia の系列に入れてもよいものかどうかよく分かりませんでした。

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次は横からです。刺毛の略号が分からなかったものについてはMNDを参考にしました。

こうやって各部の名称を調べていくことは実はかなりいい勉強になっているのではと思うようになりました。普通、図鑑を買っても解説の部分を読まないことが多いのですが、各部の名称を調べていく過程で「新訂原色昆虫大図鑑III」のハエ目の解説を何度読み直したことか。

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この間からマンションの廊下で見かけるクロバネキノコバエ科を調べています。先日は12月21日に採集した胸背の黒い個体を調べてBradysia属ではないかという結論になりました。今回はそのときに捕まえた胸背が褐色の個体を調べてみました。

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この日は2匹採集したので、調べた個体とこの写真の個体が同一かどうかは判断できないのですが、ともかく、こんな感じの個体です。

検索には最近送っていただいた次の文献に載っている検索表を用いました。

F. Menzel and W. Mohrig, "2.6 Family Sciaridae", in L. Papp and B. Darvas (eds.), "Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera (with special reference to fliew of economic importance)", Vol. 2 Nematocera and Lower Brachycera, Science Herald, Budapest pp. 51-69 (1997).

この検索表には「日本昆虫目録第8巻」に載っている属のほとんどが載っているので、かなり有効なのですが、4属が載っていないので完ぺきではありません。でも、ともかく、この検索表を用いてみました。その結果、Ctenosciara属になりました。

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検索表上ではこの6項目を調べることで、Ctenosciara属であることが確かめられます。合っているかどうかはよく分からないですが、写真で確かめていきたいと思います。

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側面からの写真です。体長は2.4mm。この間調べた胸背が黒い個体(体長2.2mm)より若干大きいですが、ほぼ同じ大きさでした。また、腹部末端が尖っているので、先日と同様♀でした。

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だいたい検索順に見ていきます。これは翅脈です。翅脈の名称は前回と同様にMenzel(1999)の方式に従いました。①で言っているのは黒矢印で示した分岐がほぼ対称で、M1脈が若干弓形に湾曲している(赤矢印)ことを示しています。

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これはついでに翅基部を写したものです。(Cu2)と書いた線を脈として判断するか、それとも擬脈かという問題については以前書いたことがありました。

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次は触角の写真です。これがうまく撮影できませんでした。でも、とりあえず毛の長さは節の長さの1/3程度で、首が黒くないことだけは分かります。

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照明の方法を変えて、横から直接光を当ててみました。表面が滑らかだということは分かったのですが、何だかよく分かりませんね。

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頭部の写真です。口肢に生えている剛毛は次の写真でよく分かります。複眼の一部が銀色なのは、たぶん、冷凍庫に入れていて乾燥したせいかなと思っています。

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口肢の拡大です。これはうまく写りました。第1節には確かに2本の剛毛が生えています(黒矢印)。

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次は中脚脛節末端の距棘です(黒矢印)。2本あって、ほぼ等長です。

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これは大晦日に載せた写真です。距棘の横に透明な剛毛列が見えます。たぶん、このことだろうと思うのですが、あまり自信はありません。

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⑤と⑥についてはM1、M2、Cu1a脈上にマクロトリキアが生えていることが明瞭に分かります。

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次は跗節爪です。これが毎回うまく写らない・・・。でも、歯がないことは確かみたいです。

ということで、すべての項目を確かめたので、たぶん、Ctenosciara属だろうと思っています。まぁ、怪しいと言えば、前脚脛節末端の剛毛列についてでしょうね。「日本昆虫目録第8巻」では、Ctenosciara属には6種が記録されています。ここから先はたぶん、♂の交尾器を見る必要があるのでしょうね。

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ところで、MND(Manual of Nearctic Diptera Vol. 1 (1981). (ここからダウンロードできます))にはCtenosciara属は載っていません。それで、この文献に載っている検索表で検索してみるとどうなるか試してみました。その結果、Ⓐ〜Ⓕまではうまく進むのですが、Ⓖになってどちらの選択肢でも合わなくなります。その合わない部分を赤字で示しました。

ついでに今回の写真を使って各部の名称をつけてみました。

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頭部です。

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眼橋のあたりです。

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胸背です。短い刺毛が列状に並んでいますが、端にある刺毛ではどれがどの系列なのかよく分かりません。

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胸部側面です。今回は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っているガガンボダマシ科の絵を参考に名前を付けてみました。結構、合っているのではないかと思っています。

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最後は腹部末端を側面から見た写真です。第9、10節あたりがどうもよく分かりません。

どういうわけか、この日採集した4匹すべてが♀でした。これについてはMNDに少し書かれていました。クロバネキノコバエ科の性比は種によって大きく変化し、場合によってはy染色体のないものもあるので、♀ばかりということもあるそうです。これまでに撮った写真を見てみても、♂の写真はかなり少なかったです。♀が多いのかなぁ。

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