廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

虫を調べる

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
冬になるとマンションにやってくる小さなハエが気になり出し始めます。今回調べたクロバネキノコバエ科はもうずいぶん前から気になっていたのですが、小さいのと情報が少なかったので、ずっとそのままになっていました。

イメージ 1

クロバネキノコバエというのはこんなハエです。大きく写していますが、体長は2mmほどしかありません。

イメージ 2

これは21日に採集した個体を冷凍庫に入れておいたのですが、3日前くらいに冷凍庫から出してきて写したものです。測ってみると体長は2.2mmでした。先日、各部の名称を調べたので、今回は検索を試みます。

イメージ 3

初めにどの検索表で調べればよいのかを調べてみました。左端の列は「日本昆虫目録第8巻」に載っている属名です。第2から第4列は検索表が載っている文献で、その中でどの属が扱われているかを〇で示しました。また、後半の3列は各属の特徴が載っている文献です。各文献は次の通りです。

MND: Manual of Nearctic Diptera Vol. 1 (1981). (ここからダウンロードできます)
MCAD: Manual of Central American Diptera Vol. 1 (2009).(ここで一部読むことができます)
CMPD: F. Menzel and W. Mohrig, "2.6 Family Sciaridae", in L. Papp and B. Darvas (eds.), "Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera (with special reference to fliew of economic importance)", Vol. 2 Nematocera and Lower Brachycera, Science Herald, Budapest pp. 51-69 (1997).
Menzel(1999): F. Menzel, "Revision der paläarktischen Trauermücken (Diptera, Sciaridae) unter besonderer Berücksichtigung der deutschen Fauna", Dissertation, Universität Lüneburg (1999). (ここからダウンロードできます)
Sasakawa(2003): 笹川満廣、「日本産双翅目ノート2」、Jpn. J. Ent. (N. S.) 6, 119 (2003).(ここからダウンロードできます)
Sutou(2004): 須島充昭、「日本産Sciara属群(双翅目、クロバネキノコバエ科)の系統分類学研究」、博士論文、横浜国立大学 (2004).(ここからダウンロードできます)

なお、CMPDは先日ご丁寧にもお送りいただいた文献です。この場を借りて感謝申し上げます。この表を見ると、CMPDが旧北区を扱ったものでもっとも多くの属を調べることができそうです。そこで、今回はこのCMPDと今まで使っていたMNDを使って検索を試みました。ただ、CMPDでもなお4属が載っていません。これについては後で考えることにします。

イメージ 4

CMPDに載っている検索表で上記の個体を調べてみると、Bradysia属になりました。そこで、まずはそれを写真で確かめていきたいと思います。なお、①の第2番目の項目については原文の意味がよく分からなかったので、かなり意訳をしました。違っているかもしれません。

イメージ 5

まずは①の前半部分です。M脈の分岐は黒矢印で示した部分です。ここで翅脈が分岐しますが、ほぼ対称的に分岐しています。また、M1脈は赤矢印で示すように弱く弓状に湾曲しています。これで、たぶん、①の前半はOK
だと思われます。なお、翅脈の名称は検索表に合わせるため、Menzel(1999)の方式を採用しました。

イメージ 6

これは意訳の部分なのですが、触角の各節には写真のように毛がいっぱい生えています。その長さが節の長さの1/3に満たないというものです。正確に測ってはいないのですが、たぶん、合っているのではと思います。

イメージ 7

口肢の基部には黒矢印で示すように2本の剛毛が見られます。これで②もOKです。

イメージ 8

これは中脚脛節末端の写真ですが、黒矢印で示したように長さのほぼ等しい末端距が2本あります。そういえば、後脚は調べなかったですね。

イメージ 9

次は前脚脛節末端の写真です。この写真を撮るのに実は半日もかかってしまいました。櫛状の剛毛列というのは黒矢印で示したあたりにある毛だと思われます。文献には綺麗な図が出ているのですが、何度写してもこんなぼんやりした写真しか撮れません。

イメージ 10

光を当てる方向を変えてみました。剛毛列がきらっと光りました。この条件で撮り直せばよかったかもと思うのですが、少々くたびれました。たぶん、櫛状の剛毛列があることだけは間違いなさそうです。

イメージ 11

マクロトリキアについては以前、書いたことがありました。もう一度繰り返すと、MNDに載っている説明によれば、

Macrotrichiaあるいはsetae(刺毛)はbristles(剛毛)、hairs、setulae(小剛毛)を含み、神経と結合していて、基部がalveoli(小窩)と呼ばれる膜状の環やソケットで囲まれています。
Microtrichiaはクチクラ表皮の伸長で、翅膜上の微毛やキチン表面を艶消しにするpruinescence(粉ふき)などがその例です。

と、こうなります。つまり、基部がソケットで囲まれている毛がマクロトリキア、表皮の一部が飛び出したのがミクロトリキアというわけです。R5脈の上にはマクロトリキアらしきものが生えていますが、M1、M2、Cu1a脈については生えていません。これで⑤はOKです。なお、膜面一面に生えているのはミクロトリキアだと思われます。

イメージ 12

最後は爪なのですが、これも写真がうまく撮れませんでした。でも、歯がないことは確かそうです。これで⑤はOKになり、この検索表の上ではBradysia属になりました。

この結果を再確認するために、今度はMNDに載っている検索表で調べてみました。

イメージ 13

こちらの方が項目は多いのですが、青色の項目についてはすでに調べたものです。従って、黒字の項目だけを見ていきます。なお、Ⓐについては自明なので省略します。

イメージ 14

ⒸとⒻがこの写真から分かりますが、たぶん、大丈夫でしょう。

イメージ 15

Ⓒの後半部分の英語がよく分かりませんでした。たぶん、この訳であっているのではと思うのですが・・・。つまり、頬が前方では複眼の下縁に達し、後方では上縁に達しているということなのですが。

イメージ 16
このⒺもたぶん、大丈夫でしょう。

イメージ 17

眼橋は綺麗に写りました。ほぼ完全に左右がつながっています。これでMNDの方もすべて調べたことになります。怪しいところと言えば、前脚脛節端の剛毛列でしょうね。とりあえず、これらの検索表を使うと共にBradysia属になったのですが、CMPDの検索表に載っていない4属についても調べてみました。

イメージ 18

これはSasakawa(2003)に載っていた各属の特徴です。

イメージ 19

最後のPseudolycoriellaに出てくる"x"はこの写真で示した部分の長さです。肘脈柄部と比較すると明らかに長いことが分かります。

Camptochaetaについては口肢第1節の剛毛が1本だけだというので除外できそうです。その他の3属についてはここに書かれた特徴だけだと除外できません。MCADの検索表にはLeptosciarellaとPseudolycoriellaが載っているのですが、これは残念ながら♂用です。でも、交尾器以外ならば使えるかもと思って調べてみると、やはりどうも違うようです。MohrigiaについてもLycoriellaに似ているようなので、これも違うかなという感じです。いずれにしても、はっきりとは分かりません。Menzelの博士論文を読むといいのですが、ドイツ語なので・・・。また、たとえ、Bradysia属だとしても、日本産Bradysia属は7種群+それ以外に分かれ、まだまだこの先は大変そうです。いずれにしても♂の形質を使って調べる必要があるので、是非とも♂を採集してみたいと思っています。

開く コメント(0)

今朝の続きで、キノコバエ科の検索です。

MND: Manual of Nearctic Diptera Vol. 2 (1987). (ここからダウンロードできます)
SVM: G. E. E. Soni, J. R. Vockeroth, and L. Matile, "A. 4. Families of Sciaroidea", in "Contribution to a manual of Plaearctic Diptera with special reference to flies of economic importance, Appendix", Science Herald (2000). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

今朝はSVMに載っている検索表を用いたのですが、今回はMNDに載っている検索表を使ってみます。

イメージ 2
検索の結果はキノコバエ科Schiophilinae亜科Rondaniella属になったのですが、同じ検索過程をMNDで追いかけるとこのようになります。SVMの方では全部で9項目だったのですが、MNDは12項目になります。これは亜科に到達するまでが長かったからです。実際、⑤以降はまったく同じ検索過程をたどります。それで、そこまでの①〜④までを写真で調べてみることにしました。

イメージ 1

まず、横からの写真ですが、翅が十分に長いことを見ます。

イメージ 3

次は翅脈です。h横脈は赤矢印で示した横脈ですが、MとCuAの分岐点(黒矢印)はそれに近いレベルにあります。これで②はOKです。また、Rs脈がR脈から分岐する点(黒矢印)はh横脈とはだいぶ離れています。また、M
と書いたM脈の基幹部は明瞭です。これで③と④はOKです。

イメージ 4

この写真では口肢は写っているのですが、口器は写っていません。それで、たぶん、口器は頭部より十分に短いだろうと思って③をOKにしました。

イメージ 5

最後は頭部の位置ですが、胸部の十分下側についています。それで、③のこの項目もOKでした。これで、①〜④まで確かめたので、このキノコバエはSchiophilinae亜科になりました。後の属への検索は今朝の記事を見てください

今回、初めてキノコバエ科の検索をやってみたのですが、なんだかんだと迷いながらやっているうちにだいぶ慣れてきた感じがします。今のところ、何とか属までくらいなら調べられるのではと思っています。まぁ、やってみるものですね。この調子で今度はクロバネキノコバエ科もやってみたいなと思っています。

開く コメント(0)

昨日の続きで、キノコバエの検索です。キノコバエの検索は初めてなので、初めはよく分からずうろうろしていましたが、何度かやり直してやっと目的地に達することができたような気がしました。

イメージ 1

対象とするのは12月12日にマンションの廊下で捕まえたこの個体です。翅に黒い帯があるので、すぐに分かるかなと思ったのですが、「原色昆虫大図鑑III」の図版に載っていなかったので、検索をしてみることにしました。

どの検索表を使うとよいかはすでに以前出したのですが、もう一度出します。

イメージ 2

左側の欄に載せたのは「日本昆虫目録第8巻」に載っている日本で記録された属です。これらの属が載っていそうな検索表を探してみました。そうしたら、次の2つの文献が見つかりました。

MND: Manual of Nearctic Diptera Vol. 2 (1987). (ここからダウンロードできます)
SVM: G. E. E. Soni, J. R. Vockeroth, and L. Matile, "A. 4. Families of Sciaroidea", in "Contribution to a manual of Plaearctic Diptera with special reference to flies of economic importance, Appendix", Science Herald (2000). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

表のMNDとSVMの欄はこれらの文献で日本産の属が扱われているかどうかを示したものです。これを見ると、SVMの方がかなり網羅的に載っていることが分かります。こちらを使うとよさそうです。なお、一番右の欄の"J"は手元にある文献に日本産の種の検索表が載っている属を示しています。それで、とりあえずSVMに載っている検索表で調べてみました。

イメージ 3

最初に横から撮った写真を載せておきます。体が曲がっているので折れ線で近似して体長を測ってみると、3.9mmになりました。

イメージ 4

SVMの検索表で調べた結果、最終的にはRondaniella属になりました。実は、④で一度、道を踏み外し、まったく違う属にたどり着いたのですが、もう一度見直してこちらの道にしました。合っているかどうかは分かりませんが、これらの項目を写真で確かめていきたいと思います。だいたい検索順に見ていきます。

イメージ 5

これは翅の翅端付近を拡大したものです。翅全体の翅脈については次の写真を見てください。ミクロトリキアはmicrotrichiaのことですが、「原色昆虫大図鑑III」でもカタカナ書きをしているのでそのようにしておきました。もうひとつのマクロトリキアはmacrotrichiaのことです。翅には刺毛やこれらmacrotrichiaやmicrotrichiaが生えていますが、これらをどのように区別しているのかは書いてありません。microtrichiaは細かい毛、macrotrichiaはやや長い毛、刺毛は翅脈の上に生えているさらに長い毛というような感じかと思います。この写真を見ると、翅脈の上に刺毛は生えていますが、翅膜の上には細かい毛が生えているだけです。従って、microtrichiaが密に分布し、macrotrichiaはないということになります。さらに、microtrichiaの生え方が列状に並んでいないということから、①がOKとなります。

追記2018/12/18:MNDにmacrotrichiaとmicrotrichiaの違いが載っていました。

Macrotrichiaあるいはsetae(刺毛)はbristles(剛毛)、hairs、setulae(小剛毛)を含み、神経と結合していて、基部がalveoli(小窩)と呼ばれる膜状の環やソケットで囲まれています。
Microtrichiaはクチクラ表皮の伸長で、翅膜上の微毛やキチン表面を艶消しにするpruinescence(粉ふき)などがその例です。

だそうです。つまり、基部にソケットと呼ばれる孔が開いているかどうか確かめればわかるようです

イメージ 6

①はどちらでもよい項目ですが、R4脈というのはRs脈の翅端側にあるR1とR5を橋渡しする翅脈のことです。これにはありません。実は次の④の平坦というところで最初迷ってしまいました。というのは、対抗する項目が「翅は縦向きに折れ畳まれる」というのだったからです。この写真でも、M脈とCuA1脈の間、CuA2の後ろには折れ目がついているので、縦に畳まれるというのでよいのではと思ったのです。でも、その後がうまく行きませんでした。それで、もう一度戻って、翅は平坦という方を選ぶと、とんとん拍子で検索が進みました。未だに、「折りたたむ」が何を意味しているのかよく分かりません。⑤と⑦は見ると分かります。最後の⑨は矢印で示しましたが、この部分でM1脈は途切れています。これはRondaniella属の特徴だと思われるのですが、体液や神経、気管が通るはずの翅脈がなぜこんな風に途切れるのかよく分かりません。

イメージ 7

側背板(ltg)と中央背板(mtg)は後胸背板の一部です。ltgには毛が生えていますが、mtgにはありません。これで①、⑤、⑥はOKです。

イメージ 8

これは頭部を後ろ側から写したものですが、単眼は複眼からはだいぶ離れて存在します。特に後傾する剛毛は生えていないようです。

イメージ 9

これは後脛節を写したものですが、細かい毛は不規則に並び、列をなしていません。それで②もOKです。

イメージ 10

R脈とその支流を見てみると、1列の刺毛が生えていることが分かります。

イメージ 11

イメージ 12

盾板と腹部背板には刺毛が生えています。腹部背板は各節の後縁近くに長い刺毛が生えているようです。

イメージ 13

最後はR1脈とr-m脈の長さ比べです。実際に測ってみると、R1はr-mの3.4倍になりました。一応、⑧と⑨に書かれている範囲内には入っていると思われます。ということで、すべての項目を調べ、特に問題はなかったので、たぶん、Rondaniella属で合っているのではと思っています。

「日本昆虫目録第8巻」によると、この属の日本産はツマグロヒメキノコバエ dimidiataとオビヒメキノコバエ japonicaの2種です。前者は北海道に分布し、全世界で見られる種です。後者は本州に分布するというのでこれはオビヒメキノコバエの方かなと思ったのですが、この種について書かれた文献が見つかりません。わずかに次の文献で少し触れられていました。

末吉 昌宏他、「ヒラタケに寄生する新害虫キノコバエ類 ( 双翅目キノコバエ科)」、森林総合研究所研究報告 12, 171 (2013). (ここからダウンロードできます)

この論文の中で、ヒラタケから羽化したRondaniellaの一種は次の点で、オビヒメキノコバエと区別できると書かれていました。「Ⓐ中胸楯板は全体に黄褐色で、暗色斑を持たない;Ⓑ前翅亜端部に幅広い暗色斑を持ち、翅端は透明に抜ける; Ⓒ後脚腿節先端に暗色斑を持つ。」まず、Ⓐに関しては、中胸盾板に淡褐色斑は持つというので、その他にある暗色斑のことをいっていると思われますが、よくは分かりません。Ⓑはここに書かれている通りのような気がします。Ⓒに関してもそのように思われます。ということで、オビヒメキノコバエなのか、末吉氏の書かれた種なのか、はたまた別の種なのか今のところ分かりません。

ということで種までは行き着かなかったのですが、とりあえず属までは達したので、ちょっと満足です。Rondaniella属らしいことが分かったので、ついでにMNDでも検索をしてみたのですが、それについては次回に回します。

開く コメント(0)

先日、マンションの廊下でキノコバエを見つけました。キノコバエはまだ調べたことがなかったし、翅に模様があったので、ひょっとしたら名前が分かるかもと思って採集しました。

イメージ 1

採集したのはこのキノコバエです。キノコバエは名前の通り、幼虫がキノコ内部で暮らすハエの仲間です。

最近は検索する前に各部の名称を調べることにしています。こうすることで各部の特徴を把握することができ、写真も準備できるので検索にも役に立ちます。そこで、今回も各部の名称を調べてみました。

G. E. E. Soni, J. R. Vockeroth, and L. Matile, "A. 4. Families of Sciaroidea", in "Contribution to a manual of Plaearctic Diptera with special reference to flies of economic importance, Appendix", Science Herald (2000). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

参考にしたのはこの文献です。分からない部分も多いので、結構、いい加減に名付けているところもあります。そのつもりで見ていただけると幸いです。

イメージ 2

まず全体像です。体長は3.9mmでした。触角が結構太いことと、脚の基節(白い部分)が大きいのが目立ちます。翅は全体にくすんでいて中央より翅端側に黒い横帯があります。また、後腿節の先端と脛節基部が黒いですね。

イメージ 3

これは頭部を前から写したものです。ちょっと変わった感じの顔をしています。この広い部分が本当に頭盾なのか悩んでいますが・・・。

イメージ 4

これは後ろから撮ったものです。単眼は2個見えています。fr furはfrontal furrowの略ですが、何と訳してよいのか分かりませんでした。全体になんか毛むくじゃらの感じです。

イメージ 5

触角は数えてみると16節ありました。

イメージ 6

これは中胸背板を撮ったものです。暗褐色の縦帯が目立ちます。一応、中刺毛や背中刺毛列も見られますが、何が何だか分かりません。

イメージ 7

これはもう少し拡大したものです。

イメージ 8

これは胸部側面の写真です。略称は先ほどの文献に倣いました。

イメージ 9

日本語の名称を「原色昆虫大図鑑III」で探して埋めました。tg1の1は第1節、cx1とpreepst2の1と2はそれぞれ前脚、中胸の意味です。

イメージ 10

これは少し後ろ側から写したところです。mtgは中央背板、ltgは側背板で、共に後胸背板の一部です。mtgは無毛、ltgには毛が生えていますが、検索では重要な項目になってきます。

イメージ 11

これはその部分をさらに拡大したものです。

イメージ 12

次は翅脈です。翅脈の名称は先ほどの文献を参考にしました。このキノコバエの翅脈はいろいろと変わっています。M1脈やCuA1脈の基部が途切れたようになっていますね。

イメージ 13

これは腹部背面の写真です。

イメージ 14

そして、これは側面から撮ったところです。tgは背板、stは腹板を示しています。

イメージ 15

最後は腹部末端です。これは背面からの写真です。

イメージ 16

そして、これは側面から。たぶん、こんな形状の腹部末端を持っているのは♀かなと思っているのですが・・・。

開く コメント(0)

一昨日、コマユバチ科の科の検索過程を出しましたが、今日はその続きで、亜科と属の検索についてです。属の方はまだ怪しいので、そのつもりで見ていただけると幸いです。

イメージ 1

対象とするのは11月27日に採集したこんなハチです。体長3.5mmとかなり小さいので、今までだったら、単にハチで済ましていたのですが、今回は頑張って調べてみました。一昨日は「絵解きで調べる昆虫」で科の検索をしたのですが、今回はその先をやってみます。

亜科の検索には次の論文の絵解き検索表を用いました。

[1] C. van Achterberg, "Illustrated key to the subfamilies of the Braconidae (Hymenoptera: Ichneumonoidea)", Zoologische Verhandelingen 283, 1 (1993).(ここからダウンロードできます)

コマユバチ科は亜科も多く、この論文はやや古いのですが、43亜科を扱っていて絵解きなので試してみました。

イメージ 2

検索を始めるとすぐに候補となる亜科 Agathidinaeに到達しました。それで、たぶん、この亜科で大丈夫だろうと思っています。番号は一昨日の科の検索と続き番号になっています。これを一つずつ写真で確かめていこうと思います。

イメージ 3

最初の⑨は大顎についてです。もともと小さなハチなのですが、その大顎となると、写真も大変です。

イメージ 4

でも、頑張って拡大してみました。この左右の大顎が閉じたときに先が接触するかどうかは分かりませんが、大顎の先端が内側に曲がっているので、たぶん、接触するだろうと勝手に思って⑨の前半部分はOKとしました。後半は大顎の歯の数ですが、たぶん、2個くらいはあるのではと思います。

イメージ 5

次は翅脈に関してです。項目は全部で4つあるので、それらを㋐〜㋓までに分け、この写真ではそのうち、㋐〜㋒を見てみます。まず、㋐は黒三角で示した外縁室が狭いという特徴です。この特徴はAgathidinae亜科ではかなり重要な特徴のようです。次の㋑は赤点線で示したようにm-cu脈と1-M脈の前半の部分を延長すると、後半で発散するという特徴です。これもOKでしょう。次は㋒で、黒矢印で示した部分に分岐するCu1b脈があるかどうかです。この写真ではよく分からないので、少し拡大してみました。

イメージ 6

黒矢印で示した部分に3-CU1がCU1aとCU1bに分岐する様子は見られません。それで、これもOKとします。

イメージ 7

最後は後翅翅脈についてです。㋓で示す部分にある2-CU脈は明瞭に存在します。それで、これもOKです。これで、すべての項目を調べたので、Agathidinae亜科は確かそうな感じがしました。

次は属の検索です。いつも利用させていただいている"Information station of Parasitoid wasps"にはAgathidinaeの日本産既知種のリストが載っています。たぶん、未記録種も多いと思うのですが、とりあえず、このリストを参考にさせてもらおうと思います。このリストでは12属が載っているのですが、これまでに公表された属の検索表がこれらを網羅しているかどうかをまず調べてみました。

イメージ 8

下に示す4論文で扱われている属を調べて、日本産の属(左欄)が載っていたら〇をつけました。

[2] M. J. Sharkey, "The Agathidinae (Hymenoptera: Braconidae) of Japan", Bulletin of the National Institute of Agro-Environmental Sciences 13, 1 (1996).(ここからダウンロードできます)
[3] M. J. Sharkey, "Agathidinae" (in Russian with English translation). In: P. A. Ler, "Key to the insects of Russian Far East", Vol. 4. Neuropteroidea, Mecoptera, Hymenoptera. Pt 3. 708, 520 (1998).(ここからダウンロードできます)
[4] M. J. Sharkey and S. A. Clutts, "A revision of Thai Agathidinae (Hymenoptera: Braconidae), with descriptions of six new species", Journal of Hymenoptera Research 22, 69 (2011).(ここからダウンロードできます)
[5] C. van Achterberg and K. D. Long, "Revision of the Agathidinae (Hymenoptera, Braconidae) of Vietnam, with the description of forty-two new species and three new genera", ZooKeys 54, 1 (2010). (ここからダウンロードできます)

最下欄の小さな字で書いたのは日本産既知種には載っていない属を示しています。これを見ると、右の2つの欄に載っている検索表が日本産を網羅していてよさそうです。この中のSharkey (2011)を検索に用いることにしました。もっとも対象とする国がタイなので、種は違うでしょうけど。

イメージ 9

それで、実際に検索をしてみると、Lytopylus属になりました。いくつか不安なところもあるのですが、とりあえず、この6項目を写真で見ていこうと思います。

イメージ 10

まずは翅脈です。Sharkeyがどのような翅脈名を用いているのか調べても分からなかったのですが、絵解きなので、とりあえず自分なりの名称をつけてそれで説明することにします。⑪はRs脈が完全かどうかですが、写真で見るように完全です。また、黒三角⑭で示すように三角形の第2亜外縁室は確かに存在します。これで両方ともOKです。

イメージ 11

これは翅脈の拡大です。Rs+M脈はこの写真でも分かるように両端があるだけで、中央はなくなっていました。これで⑬はOKです。また、先ほどの第2亜外縁室の一辺であるr-m脈には二次的な脈はありません。これで、⑯もOKになりました。

イメージ 12

イメージ 13

⑫は前脚と中脚の脚の爪に関してです。このハチの爪は小さくてなかなかうまく撮れません。何度も撮り直してやっとこの2枚の写真が得られました。上が前脚、下が中脚です。共に、爪の基部に突起部があります。この項目はもし論文に写真が載っていなかったら、basal lobeの意味が分からなかっただろうと思います。論文の検索表では、このbasal lobeを持つ爪のほか、爪先が2分するタイプ(cleft)、それに全く突起などのない単純な爪(simple)の3つのタイプに分けられていました。

イメージ 14

これはすぐに分かります。notaulus(notauliは複数形)は明瞭にあります。

イメージ 15

median tergiteとの訳が中央背板でよいのかどうか分かりませんが、背板には側面があるので、背板の中央部分という意味だと思います。この写真で分かるように縦の筋が第1節から第3節の後縁近くまでずっと入っています。これで⑭と⑮はOKにしました。

イメージ 16

最後は後体部窩(MC)と後脚基節窩(CC)に挟まれた部分を腹側から見たものです。こんな部分を見たことがなかったのですが、論文の図を参考にしながら名称をつけてみました。「完全に背面に存在する」は腹面を見ているのに奇妙な表現なのですが、"metasomal cavity situated entirely dorsal to coxal cavities"の略です。たぶん、CCから少し離れて後ろ側にMCがあるという意味だと思います。後半の横隆起線(TC)は矢印の部分の高まりではないかと思ったのですが、よくは分かりません。でも、全体的な形状が論文の写真とよく似ているのでたぶん大丈夫かなと思っています。

ということで、とりあえずすべての項目を調べたので、おそらく、Lytopylus属でよいのではと思っています。さらに、産卵管がないので♂ではないかというのが今回の結論です。(追記2018/12/09:"Information station of Parasitoid wasps"には日本産Lytopylus属としてromaniとrufipesの2種が記録されています。それで、論文を調べたのですが、♂に関する記述がなかったので、今のところ種の方は保留としておきます

開く コメント(0)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事