廊下のむし探検

このブログではマンションの廊下にでてくる「むし」の紹介とカメラを使ったちょっとマニアックな趣味を紹介します

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トンボの翅脈の勉強

先日、文化祭の準備に近くの山を歩いた時に、小さなトンボを見つけました。調べてみると、ヒメアカネ♂らしいことがわかったのですが、ついでにいろいろと勉強してみようと思って、先日、各部を調べてみました。その続きで今回は翅脈です。

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調べたのはこんなトンボです。翅脈がはっきりしていて、また、トンボは化石にも多く出るので、かなり体系的になっていて分かりやすいかなと思っていたのですが、意外に難しい問題を含んでいました。

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「新訂原色昆虫大図鑑III」には翅脈の図が出ているので、それを参考にして名称をつけてみました。上が前翅、下が後翅です。トンボは前翅と後翅の翅脈は基本的に同じですが、このトンボでは後翅の方が幅広くなっています。こういう種は不均翅亜目という仲間になります。いろいろな記号が出てきますが、C:前縁脈、Sc:亜前縁脈、R:径脈、M:中脈、Cu:肘脈、A:肛脈の6つが主要な脈になります。CとScを対に考え、残りのR、M、Cuはそれぞれ途中で2分岐して対になると考えます。これはちょうど扇子のように折りたたんだときに、凸と凹が交互になり、うまく折りたためるようになっているからです。Aについては2−3本あって、通常はいずれも凸で翅の後端で翅の強度を持たせる役目を持っています。

そのほかの記号はIRは径挟脈で、翅端で脈がさらに分かれたときに、凹凸のつじつまを合わせるために入っています。また、語尾にsplが付くのは枝補脈でこれも強度を持たせるために入っているのではと思います。さらに、語尾につくAとPは1対の脈の前脈と後脈を表しています。そのほか、トンボ独特の記号として、B:橋脈、Arc:弧脈、N:結節、Sn:亜結節、Ac:肛横脈、O:斜脈、An:結節前横脈、Pn:結節後横脈、t:三角室、spt:上三角室、d:中室域、al:肛絡室などがあります。

実際に翅脈に名前を付けていくと、いくつかの疑問が出てきました。まず、Mには前脈だけ、Cuには後脈だけ。それぞれ対になった脈はどうしたのだろう。それから、A脈付近は複雑で翅脈をどう選んでよいのか分かりません。それで、いつものように文献を探してみました。文献リストは後に載せていますが、翅脈を調べるときにバイブルとなるのはComstockの本[8]です。それを見て驚きました。名前の付け方がまるで違うのです。

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Comstockの本に載っている翅脈を系統別に色分けして描いてみました。つまり、Cは色なし、Scは緑、Rは赤、Mは黄、Cuは青、Aは黒です。もっとも驚いたのは、赤色で描いたRs脈が黄色で描いたM1とM2をまたいでいる点です。この翅脈相はもともとNeedham (1903) [1]の説に依っています。ただ、論文では説明が少なくてよく分からなかったので、Tillyard (1917) [3]を参考にして描いたところがあります(後翅のCu2や前後翅のAの辺り)。NeedhamとTillyardの説は若干違うのですが、大きくは違わないので、両者が混じったようなモデルになっていることをご了承下さい。

翅脈相を調べるときには、次の3つの方法がよく取られます。一つは個体発生の過程を調べることで、トンボでいえば、ヤゴの時のできかけの翅を調べることです。二つ目は近縁種を調べていくことで、トンボでいえば、カゲロウ目や原始的なトンボを調べていくことです。三つ目は化石で見られる始原的なトンボを調べていくことで、進化の過程で、翅脈がどう変化していったかを調べていく方法です。Needhamはこの一番目の方法を採用しました。

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Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

これはNeedhamの論文に載っていたサナエトンボ科のヤゴの翅に見られる気管の分布を表しています。気管は翅脈の中を走るので、翅脈ができる前の気管を調べると、どの脈とどの脈が関係しているかを判断できるという理屈になっています。この図にNeedhamの方式で名称を入れてみました。ここで気になるのは、①のRs脈がM脈をまたぐというところ、②の翅基部でR脈とM脈が分離するあたり、それに③で示したA脈の付近です。

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Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

まず、①のRs脈がM脈をまたぐというところですが、この図はその部分を拡大したもので、Needhamの論文からとりったものです。この図を見るとRs脈がM脈が交差しているのはかなり確かそうな気がします。

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実際に今回のトンボでその部分を調べてみました。黒矢印の部分が交差する部分なのですが、Rs脈はM1-2脈の下側を通っている感じはしますが、特にほかの脈を比較して大きな違いは見られませんでした。やはり出来上がった翅脈で判断するのは難しそうです。

次は②の部分を見てみます。

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まず、R脈とM脈の基部を見てみました。両者は融合しているわけではなく、2本の脈がくっついた状態になっていることがこの写真でも分かります。Arcが分岐する部分でRとMの二つの脈が融合して、R脈もArcを通るとすると最初にお見せした「新訂昆虫大図鑑III」の方式になり、RとMが融合していないとすると、M脈だけがここで分岐するので、Needhamの方式になるはずです。それで、その部分を見てみました。

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あまりはっきりしたことは分からないのですが、R+M脈の右端では2本見えるのですが、分岐するところでは融合しているようにも見えます。ただ、先ほどの気管の図を見ると、R脈とM脈は空間的に明確に分離しているので、気管の分布からはあまり疑問をもつ余地はなさそうです。

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Reproduced from [2] J. G. Needham, "Prodrome for a Manual of the Dragonflies of North America, with Extended Comments on Wing Venation Systems", Trans. Am. Entomol. Soc. 77, 21 (1951).

次は③に関する点です。これはアメリカギンヤンマの亜終齢幼虫の前後翅の気管の分布図で、やはりNeedhamの論文から転載しました。前翅の黒矢印の部分を見ると、Cu脈とA脈がくっつき、Ac脈のところでA脈が分岐している様子が分かります。これがNeedhamの方式で描かれた上の絵に反映されています。また、この写真では気管と同時に、できかけの翅脈も見えています。両者はほぼ一致しているように見えます。

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Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

これはA脈の付近の気管を示したもので、やはりNeedhamの論文の図です。黒矢印で示したようにA1脈が途中で曲がってループ状になっています。これが最終的に肛絡室(al)につながります。Cu2脈の枝脈も黒矢印に示すようにやはりループを作っています。後者のループは別の名称(al')で呼ばれることもあるようですが、これらを一緒に合わせてal(肛絡室)と呼んでいるみたいです[1]。この形がトンボの種類によって異なるので、分類にも用いられています。

このように気管で考えると、翅脈の同定は明確みたいですが、ここに若干問題があります。それは気管が伸びた後に翅脈ができていくので、必ずしも気管の発達通りに翅脈ができるわけではないということです。例えば、横脈には気管は入らないこともありますし、2本の気管が若干離れていても、翅脈が融合する場合には一緒の翅脈に入ってしまうこともあるからです。ただし、先ほども述べたようたように、気管の写真を見ると、もうすでに翅脈が見えてきていて、ほぼ同じところを気管が走っているようにも見えます。もう少し詳しく調べると、この辺は分かるようになるかもしれません。

Needhamの説はしばらく信じられていたのですが、Rs脈がM脈を交差するところは近縁種にもまったく見られず、そのために批判も多く出されたようです。Tillyardは初め、Needhamの説の改良版を主張していたのですが、あるとき、化石に見られるトンボの翅脈を調べてから急に意見を変えてしまいました[4-6]。この辺の事情は文献[2]に載っていました。Needhamによれば、Tillyardの調べた化石はかなり特殊なトンボで、そのトンボで翅脈の交差が見られなかったからと言って、現存のトンボでも見られないはずだというのはかなり乱暴な主張だったようです。実際に、このため、本来あるはずのM脈やCu脈が共に対ではなくなってしまったところなどにひずみが残ります。また、NeedhamやTillyard自身が実際に観察した気管と翅脈との関係をどのように説明していくのか、その辺りの説明もありません。でも、ともかく、このTillyardの説が現在では一般的に信じられるようになってしまいました。

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文献[6]に載っている図をもとにして、Tillyardの説に基づいて、今回のトンボで翅脈の色分けをしたものがこの図です。緑、赤、黄、青、黒と順に並ぶので素直な感じがするのですが、どうもすっきりとはしない気持ちです。この後にも、例えば、Riekら[7]のように化石をもとにした翅脈の解釈の論文も出ていますが、先ほどのTillyardの説が現在でも一般的なようです。

このほかにも翅基部の解釈もよく分かりませんでした。通常、各翅脈の基部は腋翅骨という硬化した骨状の関節が連なるのですが、気管の写真で見ると、1つの大きな翅骨から出ているような印象を受けます。それについてはまた今度書くことにします。

[1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).(ここからダウンロードできます)
[2] J. G. Needham, "Prodrome for a Manual of the Dragonflies of North America, with Extended Comments on Wing Venation Systems", Trans. Am. Entomol. Soc. 77, 21 (1951).(JSTORに登録するとここで読むことができます)
[3] R. J. Tillyard, "The biology of dragonflies", Cambridge University Press, Cambridge (1917).(ここからダウンロードできます)
[4] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing", Aust. Zool. 9, 125 (1937).(ここからダウンロードできます)
[5] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing. Part II. The Suborders Zygoptera (continued), and Protanisoptera", Aust. Zool. 9, 195 (1939).(ここからダウンロードできます)
[6] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing. Part III. Suborder Anisozygoptera", Aust. Zool. 9, 359 (1940).(ここからダウンロードできます)
[7] E. F. Riek and J. Kukalova-Peck, "A new interpretation of dragonfly wing venation based upon Early Upper Carboniferous fossils from Argentina (Insecta: Odonatoidea) and basic character states in pterygote wings", Can. J. Zool. 62, 1150 (1984).(ここからダウンロードできます)
[8] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

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文化祭準備のためにヒッツキムシを探そうと、文化祭の前日(3日)に河原や山の中を歩いてみました。その途中、植物で覆われた小さなため池に小形のアカトンボがいたので採集しました。マユタテアカネかなと思って採集したのですが、どうやらヒメアカネのようでした。ついでだからいろいろと調べてみました。

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採集したのはこんなアカトンボです。体長は34mmほど。かなり小型です。トンボは胸部側面の模様や腹部末端と副性器を見れば種類が分かるというので、「日本のトンボ」に載っている図と比較して、ヒメアカネだろうということになりました。ついでに、いろいろな部分の写真を撮ったので、「新訂原色昆虫大図鑑III」のトンボ目体制模式図を参考にしながら名前を付けてみました。

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まずは顔面です。マユタテアカネは額に一対の黒い斑点があるのですが、これにはありません。

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胸部側面の模様からも種類が分かる場合もあるのですが、ヒメアカネとマユタテアカネなどは似ていてよく分かりません。ついでに各部の名前を付けてみました。

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上の図に入れた略称をまとめてみました。各部の名称は「新訂原色昆虫大図鑑III」と次の本を参考にしました。

R. J. Tillyard, "The Biology of Dragonflies", Cambridge University Press (1917). (ここからダウンロードできます)

また、1は前胸、2は中胸、3は後胸の略です。

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これは腹部末端の写真です。こんな恰好の腹部末端を持つのは♂です。マユタテアカネは上附属器が上側に反り上がっているのですが、これは僅かです。それで、ヒメアカネにしました。

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これは拡大図です。

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また、これは背側から撮ったものです。

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副性器も拡大して撮ってみました。「日本のトンボ」にはこの部分の絵も載っているのですが、他種との違いはいまいちよく分かりません。

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これは頭部の前背側を撮ったものです。単眼がよく見えます。

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これはその部分を背側から撮ったものですが、単眼間瘤に二つの突起があることが分かります。

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以前も調べたのですが、複眼の背側と腹側の違いも調べてみました。上1/3の部分と下側とはちょっと違って見えます。

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その境目の部分を拡大してみました。そもそも色がちょっと違います。上は赤褐色で、下は緑がかっています。また、個眼を線で結んでいくと下の方が明らかに数が多くなっています。色の違いについては、以前、二橋氏の研究を紹介したことがありました。要は、背側は青色(正確にいうと、紫外〜青〜緑)を主に見ているのですが、腹側は赤色(紫外、緑〜赤)を主に見ているということでした。また、個眼の数が多いということはそれだけ角度分解能が高いということになります。つまり、空を見ているときは、天敵の鳥の黒い影がやって来ないかが分かればよいので、青だけ見えれば十分なのですが、下を見るときは、縄張りを張っているときや餌を探すときなど、よりいろいろな色が分かり、また、高い角度分解能が必要だということなのでしょう。

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最後は翅脈です。上は前翅、下は後翅です。一応、「新訂原色昆虫大図鑑III」の絵を見ながら、名前を付けたのですが、いろいろと疑問点も多いので、これについては、また、改めて出すことにします。

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この間(10/21)、マンションの廊下で小さなカメムシを見つけました。一見、ヒメナガカメムシを小さくして、薄い色にしたような感じでしたが、とりあえず捕まえておこうと思って採集しました。

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こんなカメムシです。「原色日本カメムシ図鑑第3巻」の図版で調べてみると、ヒメヒラタナガカメムシ科のチビヒメヒラタナガカメムシ Cymodema basicornisか、ウスイロヒメヒラタナガカメムシ Cymus elegansのどちらかかなというところです。それで、一度、検索をしてみようと思って、上の図鑑に載っている検索表でまず科の検索をしてみました。

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検索表の途中からナガカメムシの仲間に進む経路だけに限ると、ヒメヒラタナガカメムシ科であることを確かめるには上の10項目を調べる必要があります。これを写真で調べていきたいと思います。

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最初は背側から見た写真です。翅の色が薄くて、膜状部も革質部も共に透けていて腹部が見えています。この写真では①、⑦、⑨を確かめることができます。①の楔状部は矢印のあたりにある区切りから先の部分で、ハナカメムシ科、カスミカメムシ科などにはあります。この写真のカメムシには区切りはないので、それ以外になります。⑦はオオメナガカメムシ科、⑨はホソメダカナガカメムシ科を除外する項目で共にOKです。

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次は腹側からの写真です。この写真で寸法を測ると体長は3.2mmになりました。⑩はその体長と触角の長さとの比較です。⑩では触角の長さが体長の1/2以上だということなのですが、実測では1/2.14=0.47になり、少し小さくなりました。この項目はコバネナガカメムシ科を除外する項目でこの科では1/3以下なので、たぶん、大丈夫でしょう。

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次は触角第1節の幅と長さの比です。これも実測すると長さは幅の1.82倍になり、⑧に書かれたこととほぼ一致します。これはマダラナガカメムシ科やヒゲナガカメムシ科を除外する項目です。

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②の海綿窩はよく分からないのですが、図鑑の絵を見ると、②↓あたりに存在する構造みたいです。この写真では特に異常が見られないのでたぶん、大丈夫でしょう。④はイトカメムシ科を除外する項目です。イトカメムシ科では④↓あたりに上向きの突起があるのですが、これにはありません。

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これが分かりにくい。③は縦走する翅脈の数に関するものですが、なんせ透明なのでうまく写せません。横から光を当てて翅脈が光るようにして撮ったのですが、本数までは分かりませんね。でも、網目状ではなさそうなので、③はOKとしました。この項目はカメムシ科などを除外する項目です。逆にいうと、カメムシ科などでは縦走する翅脈が6本以上で網目状の脈相になっているということです。

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これは腹部を写した写真です。結合板が葉状に突出することも側縁が波状になることもないので、⑤は大丈夫だと思うのですが、腹部の節の番号をどうつけるかで迷いました。結局、「日本原色カメムシ図鑑第1巻」に載っている絵を参考にして付けてみました。この番号だと⑥の第4、5節間の縫合線は⑥↓で示したところになり、確かに直線的で側縁に達しています。それで、⑥もOKだと思われます。これですべての項目をチェックしたので、たぶん、ヒメヒラタナガカメムシ科でよいのではと思いました。

ここから先は検索表がありません。ただ、候補がチビヒメヒラタナガカメムシ属とヒメヒラタナガカメムシ属のどちらかだろうということで、属の特徴を調べてみました。チビヒメヒラタナガカメムシ属の説明には両者の比較が載っていました。

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㋐と㋑がそうです。もし、チビヒメヒラタナガカメムシ属だとすると、日本産は1属1種なので、それに属するチビヒメヒラタナガカメムシの特徴も調べてみることにしました。それが㋒と㋓です。㋐は比較の問題なので、㋑を調べてみることにしました。

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生態写真では分からなかったのですが、頭部の前方を見ると、中葉がずいぶん前に突き出しています。また、その両横にある側葉が少し突き出しています。たぶん、このことが「3本の角」に該当するのではと思いました。

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これはもう少し拡大した写真です。「3本の角」と言えなくはないですね。実際には、ヒメヒラタナガカメムシ属を調べて見ないとはっきりしたことは言えませんが、とりあえず、これでチビヒメヒラタナガカメムシ属だろうと思ってその先を調べてみました。

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㋒はたぶん、大丈夫だと思うので、その先の㋓を見てみました。前胸背の中央前半の乳白色の隆起線は白矢印で示した通り。前側角は黒矢印で示した部分だと思われます。ただ、前胸背の前半部の両側に点刻のない横長の領域があるのですが、それについては特に何も書かれていませんでした。

ということで、とりあえず、属と種の特徴もあっていそうなので、たぶん、チビヒメヒラタナガカメムシで合っているのではと思っています。

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先日、マンションの廊下で小さな羽アリを見つけました。

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上は翅の生えているもの、下は翅が脱落したもので、たぶん、同じ種だろうと思っています。両方とも採集したつもりだったのですが、毒瓶を見てみると上の有翅アリだけが入っていました。一応、検索をしてみようと思ってやってみたのですが、腹部末端が円形でなくて楕円形なのであれっと思いました。たぶん、カタアリ亜科。さらに、検索を進めると、結局、ヒラフシアリになりました。名前は聞いたことがあったので過去の記録を見てみると、実は過去に2度も検索をしてブログに出していました(こちらこちら)。でも、折角、顕微鏡写真を撮ったし、過去2回は翅が脱落した個体だったのですが、今回は有翅アリだったので、確認のためにもう一度出しておくことにしました。

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検索にはいつものように、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いました。この図鑑の検索表は基本的に働きアリ用なので、そのままでは♀有翅アリには使えません。というのは、羽アリでは飛翔筋が発達するために中胸が発達し、それにより後胸や前伸腹節の形も変わってしまうからです。この検索表でいえば、赤字で書いた⑤がそれになります。そこで、その部分を除いて検索をしました。一応、今回も写真で簡単に見ていきたいと思います。

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体長は3.3mm。かなり小さな羽アリです。①も⑥もOKでしょう。

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これは背側から写したものです。

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頭部の写真です。①は問題ないでしょう。大顎の歯がずいぶん細かいですね。

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②と④はOKでしょう。腹柄節に腹部が覆いかぶさっているというのはこの写真でよく分かりますね。

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②、⑤、⑥も大丈夫だと思います。腹部第5節が辛うじて見えています。

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腹部を腹側から見た写真です。tは背板、sは腹板を意味します。第1節は背板と腹板に分かれています。

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これは腹部末端の写真です。先端に穴が開いていますが、形は楕円形です。ヤマアリ亜科はここが円形になっています。ということで、赤字で表した部分を除けば、ほぼ、書いてある通りだと思われます。従って、ヒラフシアリということになります。

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以前検索したときは翅の脱落した個体だったのですが、今回は翅がついていたので、翅脈を見てみることにしました。毒瓶に入れておいたので、翅がクシャクシャになっていたのですが、何とか伸ばして撮りました。翅脈はいつものように次の論文に載っている名称を用いました。

K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)

いつもの翅脈と比べるとM脈辺りがちょっと変です。この論文では羽アリの翅脈をいろいろと分類しているのですが、それによればこれはIIIb型だと思われます。この型を持つのは、カタアリ亜科とフタフシアリ亜科が多いのですが、それも合っていました。

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最後は前伸腹節気門で、これは円形でした。

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マダラバッタの発音器

先日、中学生と虫取りをしたときに、中学生が採集したバッタを調べています。マダラバッタらしいことは分かったのですが、きちんと調べようと思って、

日本直翅類学会編、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」、北海道大学出版会 (2006).

に載っている検索表を使って調べていきました。でも、トノサマバッタ亜科を分ける際、「ヤスリ(状発音)器は前翅にある。摩擦器は後腿節内側の中央の長架。」という項目が分からず、なかなか進みませんでした。その後、前翅にそれらしい構造を見つけたのですが、本当かどうかよく分かりません。それで、もう少し調べてみることにしました。

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調べたのはこんなバッタです。発音器・摩擦器のあたりがよく分からなかったのですが、これに対抗する項目はヒナバッタ亜科で、こちらは後腿節にpeg状の突起列を持つというので、それではないだろうと思って検索を進めると、予想通りマダラバッタになりました(検索過程はこちらこちらを見てください)。

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その時に見つけた構造というのがこの写真です。これは前翅の中央か、その翅端側全体に見られ、縦脈よりも横脈の方が顕著でした。この構造はSnodgrassがイナゴモドキについて描いた図とよく似ている感じがしました。

R. E. Snodgrass, "Insects, their Ways and Means of Living", Smithonian Scientific Series Vol. 5 (1930). (ここからダウンロードできます)

今回はもう少し詳しく調べてみようと思って、冷凍庫にしまっておいたもう1匹について調べてみました。2匹捕まえた1匹については片側だけの展翅標本を作っているので、後の1匹については翅と後脚をはずして調べてみました。

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これは翅の中央部を見たのですが、個体が違っても規則正しい突起列の構造が見られます。やはり横脈の方が顕著です。

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翅を中央付近でハサミで切って、その断面を見てみようと思いました。

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まずは10倍の対物鏡です。あまりはっきりとは見えません。

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それで40倍の対物鏡にしてみました。横脈上に周期的な突起があることは確かです。

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翅の中央から翅端側全体にこのような構造があるのですが、突起は丸印で示した辺りで特に顕著でした。もし、この構造が発音器なら、この部分を使っているのかもしれないと考えられます。

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次は後腿節内側を見てみました。内側には3本の筋がありますが、検索表に載っている絵ではこの中側にある黒矢印で示した筋が「中央の長架」に相当します。この筋、よく見ると、腿節の付け根側(向かって左側)では高さが低く、先端側では高さが高くなっています。

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少し斜め後ろ側から写してみました。矢印で示した筋はだいたい黄破線で示した領域では前後の筋より高くなっています。たぶん、この部分を使って摩擦するのかもしれないなと思いました。

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それで、赤四角で囲った部分を拡大してみました。つるつるだったら摩擦器にはならないだろうからと思ったからですが、拡大してみると、やはり細かい皺がいっぱい入っています。

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今度は実際のバッタの写真に腿節のでっぱり部分を当てはめてみました。腿節は右下の青丸を支点として回転運動します。腿節の各点の動きを黄色の線で示しました。もし、摩擦器が腿節の基部近くにあれば薄い黄色の線の部分を摩擦することになります。腿節内側の中央の筋が高くなる領域を黄色の太い線で表しました。この2本の曲線の間に挟まれた領域に前翅の発音器があればうまく摩擦できるのではと考えました。腿節を同じ角度だけ回転させると、基部ならわずかな距離しか動きませんが、先端では大きく動くので先端側の方が明らかに効率的です。

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上の写真とこの翅の写真をうまく重ねて、腿節の支点の位置を決め、同じような黄色の線を引いてみました。黄色の太い領域が腿節内側の筋が高くなっている部分です。そこに前翅の横脈上の突起が顕著な部分(赤丸)を重ねてみました。見事に合致します。

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バッタ全身の写真に当てはめるとこの写真のようになります。赤い丸印で示した部分が発音器のあると思われる部分、黄色の太い線分が摩擦器があるだろうと思った場所です。

実際にバッタが音を出しているところを見たことがないので何とも言えないのですが、代わりに次のような論文を見つけました。

O. von Helversen and N. Elsner, "The Stridulatory Movements of Acridid Grasshoppers Recorded with an Opto-electronic Device", J. Comp. Physiol. 122, 53 (1977). 

これはバッタの腿節に光を反射するようなテープをつけ、これに光を当てて、その反射した光の位置変化から腿節の動きを調べ、同時に発音したかどうかを録音で調べたという論文です。微妙な腿節の動きと発音との関係がよく分かる面白い論文です。この論文ではヒナバッタについて実験を行っているのですが、こんな実験をするとよく分かるかもしれないなと思いました。

追記2018/11/20:meg*neu*a*1さんから、「バッタの発音は、♂だけではないでしょうか?」というコメントをいただきました。実は、私もその辺はよく分からなかったのですが、次のサイトにヒナバッタ亜科では♂がcalling songを発音すると、それに答えて♀はresponse songを発音し、やがて両者はduetをして、互いに近づいていくというような記述があったので♀にもあるのかなと思いました。また、検索表にもトノサマバッタ亜科では♂♀が規定されていなかったので、やはりと思って調べてみたら、それらしいものが見つかったというのが実情です。今年はなぜかマダラバッタが山ほどいるので、今度♂を捕まえてきてその違いを調べてみたいと思います。コメント、どうも有難うございました

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