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退院してから、学校へ登校したのは三日後だった。
クラスメートたちが自分の周りを囲い「ケガのほうは治ったのか」と嬉しそうに肩をたたいてくれるが、海斗にとって、それがなにやら恥ずかしくて「大丈夫、大丈夫だから」とはにかんだ笑顔で応えるのが精一杯だった。
翔とは、入院した日の夜以来会ってはいない。
一応、同じクラスメートたちの話しに応じてはいるが、頭のなかは翔のことで一杯だった。
翔に早く会いたい。
「悪い。ちょっと、ごめん」
会いたいという強い想いが募り、海斗はキリのないクラスメートたちの話しを遮り、人だかりの輪を解いて翔のもとへ足早に向かった。
隣のクラスへ行き教室内を見渡すと、自分の席に座っている翔を、すぐに見つけることができた。
ズボンポケットに手を突っ込んで、イスに浅く座って長い足を組んでいる。
相変わらず、ふてぶてしいヤツだ。
もちろん、そんな翔の態度でも気を悪くはしない。
ハンサムな顔に、優しくて。それに、なんたって俺の恋人……
三日ぶりに見た恋人の姿に、顔を緩くほころばせてしまう。が、すぐに翔がなにか元気のない雰囲気を漂わせていることに気がついた。
心配になって、一度緩んだ顔を引き締めて、翔に近づく。
「翔、どうしたの?元気ないように、見えるけれど……」
「ああ、海斗か。ケガのほうは治ったのか?」
イスに座ったままの翔は質問には答えず、陰りのある表情で見上げ覇気のない口調で訊き返す。
「もう、大丈夫だよ。それより、翔。具合でも悪いの?元気がないみたいだけど……」
「俺……また引越しをしなくちゃいけなくなったんだ。親父の仕事の都合で。それで、学校も転校することになって……もう、転校する日も決まっているんだ」
「!」
久しぶりに会ったというのに、いきなり衝撃的な事情を聞かされて言葉を失ってしまった。
ひょっとして、二人は離ればなれになるのでは――一瞬、そんなことが頭に浮かんだけれど、慌ててブルブルと頭を振った。
翔と別れるなんて、考えたくもない。
もしかしたら、隣りの学校に転校するだけかもしれない。
それなら、普段会うことも可能だ。
強引に楽観的な考えでいようと努力する。
翔は少し間をおいて、ふぅと息をついてから言葉を継いだ。
「遠くに引越しをすることになったんだ。今度は、ドイツへ行くことになった……」
海斗の心配をさらに追い討ちをかけるような話しを聞かされ、頭にガンと殴られたような衝撃が伝わって、ふらふらと目まいをおこしそうになる。
「お、俺たちは、どうなるんだ?」
海斗の問いかけに、翔は寂しく首を横に振った。
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