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昼時、海斗は1人で学食へ向かっていた。
翔を誘おうと思ったけれど、今日は1人でいたいという気持ちが強くて、あえて誘うのをやめた。
学食前の自販機で、お目当てのメニューを選択して食券を購入し、食堂で食券と引き換えにトレイに乗せられたランチをもらう。
淡々と流れ作業的にこなしていき、ずっと口を開くことなくテーブルの席につく。
今は、なにも考えたくないし誰とも話したくない。
効率のいい学食のシステムが、今の海斗にとっては都合がいい。
ランチを口にするが、落ち込んだ気分のせいで味気が感じられない。
いつもなら、腹ペコでガツガツと食べるほうなのに、今日は食欲がまったくなかった。
自分の栄養補給のため、ただ口にするだけ。
黙々とすくっては口にやるといった作業をこなしていると、頭上から声をかけられた。
「隣り……座っていいか?」
目の前のテーブル上に人影ができて頭を上げると、ニッと笑った孝介が昼食を乗せたトレイを持って立っていた。
「そこ、座っていいか?」
海斗の隣りの空席を、クイッと顔で指す。
「……空いてない」
冷たく言い放つが、孝介は聞こえなかったように平然と隣りの空席に座わった。
「空いていないって言ったけれど?」
「そんなこと気にすなって。それより……」
孝介が眉をしかめる。
「どうしたんだ?元気がないぞ。事故のせいだとしても、学校にきたときは元気だったじゃないか。もしかして……なにか悩みでもあるのか?」
「悩み……か」
なぜ、孝介が自分を気にかけてくるのか分からなかった。
ただ単純に、同じクラスの仲間だから心配してくれているのかと思ったりした。
そう考えると、あまり邪険に扱うのもかわいそうだ。
話し相手ぐらいにはなってやろうかと、気持ちを切り替えてみる。
「悩みなんてないよ……」
話し相手にはなってやるが、今の孝介に、翔の別れ話で落ち込んでいるなんていうことを打ち明ける気にはなれない。
孝介は、海斗の心のうちを見透かそうとしているかのように、じっと凝視していた。
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