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孝介と海斗の二人は、遠くドイツへ行く翔のプレゼントを買いに街の大きなショッピングセンターへ出かけていた。
孝介とこうして、一緒に出かけることは初めてのことだ。
「翔に、なにをプレゼントしようか?」
海斗は、なにか翔にふさわしいものがないかと、ちらほらと店に目を配りながら孝介に尋ねた。
「ネックレスなんかいいんじゃないか。あいつ、いつも着けていたし。海斗に盗られて、寂しがっているかもしれねぇし……」
「盗ったわけじゃないよ。これは貰ったんだよッ」
冗談を言う孝介に、わざと怒ったふりをしてフンと顔を背ける。
翔から貰ったネックレスは、肌身離さず着けている。今日だって、出かける前に鏡の前で、ちゃんと首にかかっていることを確認してきた。
それでも海斗は、ネックレスの話しを持ち出されると心配になって首元に手をやる。
「でも、孝介の言うとおりだよ。翔には、シルバーのネックレスが似合っているし……」
指先で、硬い金属の感触があることを確認しながら、孝介の意見に賛成した。
プレゼントする物が決まり、二人はショピングセンター内のジュエリーショップへ足を向けた。
店は、このショッピングセンターの5階だ。
エスカレーターで5階まで上がり、他の店には目もくれず歩き目的の店に向かう。
これまで足を止めることなく歩いていた海斗だったけれど、店の着くと思わず躊躇してしまって足を止めた。
立派な内装に貴金属でできた、高級そうなピアスや指輪。それらがきれいに陳列されていて、普段関わりのない上品な店の雰囲気に圧倒されそうになる。
もちろん、二人には高級なネックレスを買うことができるわけでもなく、限られた予算のなかで、この店で売られている商品を品定めすることになる。
なんだか落ち着かない気持ちで店内に入り、ショーケースをいろいろと覗き込んで見てまわる。
すると、手ごろな価格の翔にぴったりな物がディスプレイされているのを発見。
それは、シルバーのシンプルなデザインのチョーカー。
これなら予算内に収まるし、見栄えもしっかりしている。
「孝介。これなんか、いいんじゃないかな?」
「へぇ、けっこういいじゃん。これだったら、翔も喜ぶぜ」
海斗と並んでショーケースを覗き込む孝介も納得する。
「じゃ、これに決めるね」
海斗は緊張した口調で店員に声をかける。
「あの……すいません、これください」
「かしこまりました」
えらく丁寧な店員は、手際よくショーケースから商品を取り出し包装する。海斗は代金を払い翔のプレゼントとなる商品を受け取る。
「ありがとうございました」
ご丁寧な挨拶で見送られながら、海斗にとっては馴れなくて居心地の悪い上品な雰囲気から逃げ出すように、店を足早にあとにする。
「ふぅ……」
店から離れ、緊張していた身体の力が抜ける。
「ため息なんかついて、どうしたんだよ?」
そう尋ねてきた孝介だったけれど、海斗の心境をすでに見透かしているのか、あきれたような笑顔を浮かべている。
「うん。すこし緊張しちゃって……」
「ったく、こんなことでビクつきやがって。俺が手をつないでやるから安心しろ」
「い、いや、訳わかんない。なんで俺が孝介と手をつながなくちゃいけないんだよ?」
あまりにも不自然な孝介の態度に、かえって警戒してしまう。
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