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「へんだぞ、孝介。急にどうしたんだよ?」
「お前が……好きなんだよ……」
「え?」
ぼそりと小さくつぶやいた孝介の言葉に、耳を疑った。
俺を好きだと……
いや、こんな騒がしい人混みのなかだ。俺の空耳だってことも考えられる。孝介が、俺を好きなんてありえないさ。
そう頭のなかで否定したが、それはすぐに打ち消された。
ほんのりと顔を赤らめている孝介は、買い物客が行き交う通路の真ん中で立ち止まる。
「なぁ、海斗。俺が、もし海斗が好きだと言ったらどうする?翔のことは忘れて、俺と付き合ってくれるのか?」
いつものニコニコ顔が消え、不似合いな真面目な顔して尋ねてきた孝介に、胸の鼓動がひときわ大きく波をうった。
この前、翔が言っていた言葉が頭に浮かぶ。
すでに、他の誰かに愛されている……と。
翔が言っていた人物は、孝介のことだったのか。
プレッシャーを感じるほど真剣な眼差しで見つめられ、海斗はなんて答えればいいのかわからなかった。
自分の気持ちのなかでは、翔のことなんて忘れることができない。その気持ちは、遠く離れても、何年経っても好きな気持ちは変わらないと思う。他の誰かを好きになるなんて……考えられない。
すでに、自分の返事は決まっている。
断るしかない、と。
しかし、孝介を傷つけたくはないという気持ちがあって、やすやすと口に出せなかった。
孝介を昔の自分とだぶらせてしまう。
好きな人に、自分の想いが届かなかった悔しい気持ちは、過去に何回も経験してきた。
恋人ではないけれど、親友として辛い思いをさせたくない。
そんな考えもあり、断りの言葉を簡単に口に出すことをためらってしまった。
「孝介……」
そうつぶやくのが精一杯で言葉が続かず、少しの沈黙の時間が流れる。
「ごめん。俺、やっぱり翔が好きだし……」
気持ちはありがたいが、受け取ることはできない。
「そうか……」
元気なく、肩の力を落とす孝介。
今の孝介の辛い気持ちが、よく分かる。
「ごめん……」
なんだか、申し訳ないような気がして頭を下げると、孝介は硬い笑みを浮かべた。
「謝ることはないさ。海斗は翔が好きだもんな。仕方がないってことで、今はあきらめる。でも、次の恋人の候補は俺だからな。しっかり覚えておくんだぜ」
孝介は、再びにこやかな表情を戻すものの、いつもより陰りがみえる。無理に明るく振舞おうとする孝介の姿がとてもいじらしくて、海斗を切ない気持ちにさせた。
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こんばんは。42話まで読ませて頂きました。とても読みやすくて面白いので一気に読んじゃいました!続きが気になります。孝介くん、優しくていい子ですね〜。でも海斗くんが翔くんに一途なのも判るので切ないです。私もBLは読むのは好きなんですが、書く方の文才が無いみたいなので、ふつかさんが羨ましいです。
2009/3/20(金) 午後 10:41 [ - ]