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日が沈み、街の灯りがきらめきを増す頃、一樹と裕也は都心にあるホテルの一室で、パーティーに出席するための支度を整えていた。
もちろん、ホテルは名の知れた一流ホテルだ。
「裕也、準備できたか?」
一樹が、待ちくたびれた様子で声をかけてきた。
立派なホテルのパーティーに出席するなんて一度も経験したことはない。裕也は、これから体験する社交界デビューに、期待と喜びで胸を膨らませながら熱心に身だしなみを整えていた。
一樹に用意してもらったタキシードだって、身につけるのは生まれて初めてのこと。スイートルームに設えられた鏡を覗きこみながら、丹念に身だしなみを整える。
すでに、タキシードに蝶ネクタイという礼装姿の一樹は、こういうパーティーに場慣れしているのか、30分も前から身支度を終えている。
その礼装姿は……さずが、一樹というべきか。
一樹の精悍な顔つきと長身の身体が、タキシードにぴったりとマッチしていて、見事なまでに着こなしている。
それに比べ、鏡に映る自分の姿が歯がゆい。まるで、タキシードに着せられているようで、まったく自分と釣り合わない。
「おい、裕也。もう、いいだろ?はやくパーティー会場に行こうぜ」
「う、うん。今、行くよ」
これが最後だと思って、鏡の前で髪を手で整えるが、それでも納得できなくて。
妙に髪型が気になり、鏡の前から離れないでいると、背後にいる一樹に、鏡越しから「もう、カッコよくきまってるぜ」と苦笑されてしまった。
初めての、セレブなパーティーに落ち着かない自分の気持ちを見透かされて、裕也ははにかみながら部屋をあとにした。
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4/50話
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