|
ゴージャスなシャンデリアで照らされた広いホールは、すでにさまざまな人たちで入り混じっていた。
テレビで見かける代議士や大企業の役員の人たちなど、政界、経済界の著名人たちが、一同にパーティー会場に集まっている。
「すごいッ。偉い人や有名人ばかりだ」
子供のように目を大きくして驚く裕也に、一樹はふっと笑みをこぼす。
「ああ、うちの義竜会は関東で一番大きな組だからな。皆、義竜会の名前にすがり、おいしい思いをしようっていう欲深い輩ばかりだ。パーティーの出席者のほとんどが、そういう奴さ」
「へぇ」
いきなり、ヤクザのパーティー事情を知ってしまった裕也はうなってしまう。
目に入る全てのものが新鮮で、落ち着きなくきょろきょろと会場内を見渡す。
ホールの中央には、大勢の取り巻きに囲まれた老人の姿が見える。
皆がタキシードに蝶ネクタイという礼装に対し、一人だけ、はかまという和風のスタイルは、人目をつくものがある。
だが、年老いた小さな老人とはいえ、ただ者ではない雰囲気を身にまとっている。
人をねじ伏せてしまいそうな強い気迫と、媚びることのない態度は、人の上に立つ人間だからできること――直感的にそう感じて、一樹に尋ねてみた。
「あの老人は?」
「うちの組長だ。あんなに大勢の取り巻きに囲まれて、さぞ困っていらっしゃることだろうに……」
組長と呼ばれた老人は、途絶えることなくペコペコと頭をさげて挨拶にやってくる男たちの話しに、険しい顔をしてうなずいている。
なるほど……。
全くへつらうこともなく堂々としている態度は、やはり大物の証しか。
「一樹、しばらく顔を見なかったじゃないか。どうしたっていうんだ」
組長と呼ばれる老人のほうばかりに目を向けていると、突然背後から声をかけられて、二人は慌てて振り向いた。
皆と同じように、黒いタキシードを着た男が、笑み浮かべながら一樹に歩みよる。
茶髪にスリムな身体。目から放たれる視線は、無感情で冷たい。
なんとも、いかがわしい人物だ。
「俺と別れてから、男の趣味が変わったな。こんな、ガキを連れてくるとは……」
男はチラッと裕也に見やり、フッと口元を緩ませる。
見下した笑いが、憎たらしい。
初対面の男に、子供扱いにされてムッと唇を強く結びつけ「バカにしやがって!」と心のなかで叫ぶ。が、不愉快な気持ちを露わにすることはできず……。
男の、どこか爬虫類のような感情のない冷徹な目に、身体がすくんでしまった。悔しい気持ちを押し殺し、黙って男から目を逸らして顔をうつむかせるのが精一杯だ。
「俺の大事なツレだ。口を慎むんだ、玲二(れいじ)」
一樹が、自分の代わりにとがめてくれた。
裕也は、頼りがいのある一樹の言葉に嬉しくなって、顔をあげる。
「なんだぁ。一樹の新しい恋人か?そんなガキより、もう一度、俺とよりを戻さないか?昔みたいに……」
「断る」
一樹は即答で突っぱねた。顔には、眉間にしわを寄せて嫌悪感を滲ませている。
どうやら、二人は仲が悪いらしい。それよりも、昔は恋人同士だったような、二人の口ぶりがすごく気になる。
「ふん。すごい嫌われようだな。ただ、こうやってイキがっているのも、今のうちだぜ。必ず、お前を手に入れてみせるさ」
「やれるものなら、やってみな」
一樹と玲二の二人は、お互い激しい火花を散らしているように睨みつけた。
・+☆+・
5/50話
□□
□□□
□□□□
これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。
1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。
|