|
しばらくのこうちゃく状態。
険悪な雰囲気のなか、先に場の空気を和らげたのは一樹だった。
「こんなところで言い争いしても仕方がない。俺たちは、パーティーを楽しむために来たんだ。今、その話しはお互い遠慮しようじゃないか」
物腰低くして、紳士的な言い方で玲二をなだめる。しかし、どうやら本人には通じなかったようだ。
「逃げるのかよ」
あくまで、けんか腰の玲二。
「いや、その話しはやめようと言っているんだ。今、お前の話しに付き合う気はさらさらない」
「まあいい。せいぜい楽しんでいな。俺と付き合わなかったことに、後悔することになるぜ」
ふんと鼻を鳴らした玲二は、最後に「覚えていろ」と捨て台詞を残して立ち去った。
裕也は、べぇと舌を出してしまいそうになるのをこらえて、玲二の後ろ姿を見送る。
「なんだよ、あいつ……」
玲二が人ごみのなかに消えていったのを確認すると、裕也がつぶやいた。
玲二の……あの冷たい表情には、底知れぬ恐怖を感じる。あのとき、身がすくみ何も言えなかった。
あんな男が、一樹の昔の恋人だったのか……?
「昔の、恋人?」
「ああ、大昔の……だ」
心の奥で、否定してくれるのではという期待もあって一樹に尋ねてみたが、すんなりと肯定されてしまった。
まあ、先ほどの話しの流れを見たあとで否定されても、恋人同士だったのでは……という疑惑は残るのだけども。
「悪い気分だ……。さ、裕也、今日はパーティーだ。気分を変えて、飲み物でも頂こう」
ウエイターからワインとオレンジジュースを受け取った一樹は、窓際へと向かう。
「ああ、いい夜景だ」
裕也にオレンジジュースを手渡し、ワイングラスに口をつける。
ホテルの最上階から見える夜景は、たしかに素晴らしいものだった。しかし、一樹は本心から言っているわけでもなく、ただ自分の気持ちを紛らわしているように思える。
それは、はっきりした確証があるわけでもなく、自分の思い込みかもしれないけれど。
一樹の気持ちをくみ取った裕也は、それ以上、玲二の話題をすることなく、緊張で渇いた喉をオレンジジュースで潤した。
・+☆+・
6/50話
□□
□□□
□□□□
これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。
1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。
|