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「やめろぉ!」
裕也は、とっさに壁から飛び出して西田の背後から叫んだ。
高々と上げたこぶしが空中で止まり、西田は「あー!?」と口を開けたまま裕也のほうへ振りむく。
怒りの含んだ目が向けられ、裕也はビクッと身体を強張らせた。
正義感をみなぎらせて体育館の陰から飛び出したものの、西田に直接睨まれると身体がすくむ。それでも、ゆっくりと近づいて西田の前に立ちはだかった。拓海は隠れるようにして、裕也の背中へまわる。
「お前は、あっち行っていろ。痛い目にあいたいのか?」
「いやだ」
「ああッ?お前には、関係ないだろうがッ。なに正義感ぶってんだよ?」
拓海は、裕也の背中越しで震えながら事の成行きを見守っている。
平然としているふうに見える裕也も、実は怖くて気持ちのなかではガタガタと震えていたが、相手に弱気なところを見せまいと、無理に強気な姿勢を装っていた。
「同じクラスの仲間だろ。どうして、こんなことするんだよ?」
裕也の言葉にカチンと頭にきたのか、西田は眉を吊り上げた。
「コイツをどうしようが、お前には関係ないだろッ。なにヒーローきどりで俺にはむかっているんだよ?!」
「……」
裕也は、無言で西田を睨みつける。そんな裕也の態度にますます機嫌を悪くした西田は、怒声を響かせた。
「裕也、邪魔だ。どけよ!」
裕也の身体を押しのけて、拓海の胸ぐらを取る。
「やめろって言ってんだろッ」
拓海の胸元を掴んだ手を引き離そうと腕を掴みぐいぐいと引っ張るが、簡単には放してくれそうにもない。それでも裕也はあきらめず、拓海のシャツを掴んだ手を懸命に引っ張る。
しばらくもつれ合う二人。
「ちッ!」
先に根を上げたのは西田のほうだった。
裕也のあきらめの悪さに舌打ちをした西田は、拓海を突き放すようにして手を放した。
勢いよく突き放された拓海は、後ろへよろよろとよろめいてストンと尻もちをつく。
「拓海、大丈夫かッ?」
裕也は慌ててしゃがみこみ、拓海の肩に優しく手を添える。
「大丈夫……」そんな意味を含めた表情で、黙ってこくんとうなずく拓海。
ほっと安心するとともに再び怒りが込みあげ、そのまま感情を露わにしてキッときつく西田を睨む。
「ふん。お前のせいでしらけちまったぜ。今日は、勘弁してやるよ」
西田は面倒くさそうな顔しながらそう言い残し、去っていった。
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9/50話
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