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硬い銃身を押し付けられていた額の圧迫感がなくなりそっと目を見開くと、視界に映ったのは感情のこもっていない冷酷な瞳だった。
キスの相手は恋人の一樹でもないし、ちょっとした遊び相手の拓実でもない。
愛情のかけらも感じられない冷たいキスの相手は、玲二だった。
玲二にきつく唇をしゃぶられ、よだれがお互いの口周りを汚す。
「…や……」
拳銃のことを忘れたわけではなかったけれど、玲二から逃れようと本能的に顔を逸らせると、すぐさま荒々しい怒声が飛んできた。
「こらッ。逃げるんじゃねぇよ!」
よだれで汚れた口周りを舌舐めずりしている玲二が、手に持っている拳銃を見せびらかすようにぶらぶらと目の前で振る。
恐怖で身体を震わすことしかできない裕也に、くっくっと押し殺したような笑いで見下ろす玲二。どうやら、優位な立場に立っている自分に優越感を抱いているらしい。
「おいおい、どうしたんだ?身体の力は抜いていいんだぜ。まず息を吐け。リラックスしろよ」
そう言いながら、玲二は、銃口を裕也の頭から鼻へと移動させて狙いを定めるような仕草をとる。
「そうだ、ゆっくり深呼吸をするんだ。鼻から吸って口で吐いて……」
もちろん、拳銃を突きつけられている状況で深呼吸をしても落ち着くわけがない。
玲二にからかわれていると分かっているが、突っぱねることができるわけでもなく、今は言われたとおりにするしかない。
正直、泣きたくなる。
「よし、今度は服を脱げ」
玲二が命令口調で言ってきた。
唐突な玲二の言葉に、裕也の脳裏に不安が横切る。
「そうだ、ふたりでいいことしよってんだよ」
おそらく、薄暗い病室の中でも見て取れるぐらい、自分の感情がはっきりと顔にでたのだろう。
なにも言わずとも、玲二は裕也の心配をあざ笑うかのように答えて、
「お前の考えていることはお見通しなんだよ」とでも言いたげな、自慢と満足が混ぜ合わさったようなにやついた笑いでヘヘッと鼻先を天井に向けた。
もちろん、そんな欲求を受け入れることなどできるわけがない。
裕也は、泣き出してしまいそうな顔でぶるぶると左右に振った。それが、今できる精一杯の拒絶の意思を表したもの。
――助けて、一樹。
逃れることができない身の危険に、心のなかで恋人の名前を叫ばずにはいられなかった。
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21/50話
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