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しだいに男たちのどなり声が聞こえなくなり、変わりに苦しそうなうめき声が聞こえてきた。どうやら、かたがついたようだ。
裕也が恐る恐る柱の陰から顔を出して辺りの様子をうかがうと、三人の男たちがふらふらとよろめきながら立ち上がろうとしている姿が見えた。
「おぼえてやがれッ」
お決まりの捨て台詞を吐いて、三人組の男たちは一斉に逃げだしたが、一樹はやすやすと逃すようなことはしなかった。一人の、逃げ遅れた男の襟首を素早く掴み引っ張り上げる。
「逃がさねぇぞ」
襟首を掴まれ息の詰まった声を出した男は、なんとかして逃れようともがくけれども、一樹の鍛えられた腕力には敵わず、為す術もないまま羽交い締めされて動きを封じ込められる。
「いったい、誰のさしがねだ?」
一樹に首元をがっちりと絞められた男は、苦しそうに顔をしかめる。
「そんなこと、言えるわけ……」
最後まで言わずにして、男は苦痛に顔を歪ませて悲鳴をあげた。
いや、声はでなかった。まるで陸に上げられた魚のように、大きく口を開けてパクパクとあがいているだけだ。
額は脂汗が吹き出し、顔は赤くなっている。声が出ないのも、一樹の腕が男の首をきつく締めあげているせいなのだろう。
「わ、わかった。言うから……言うから手を、手を緩めてくれ」
ごほごほとむせながら男は言う。
「れ、玲二さんに言われたんだ。俺たちは玲二さんに言われて、しかたなく、あんたたちのあとをつけて……か、かんべんしてくれ」
「やはり玲二か」
一樹の眉間にしわが寄る。
予想していたとおりだ。玲二に指図されて、この男は俺たちを尾行していたんだ。
二人は逃げ去り、そのうちの一人も一樹に抑え込まれていることで、気持ちに余裕を取り戻した裕也は、柱の陰から身を乗り出して聞き耳をたてる。
「どうして、俺たちのあとをつけていたんだ?」
「あ、あんたたちの行動を調べろって言われて。そ、それだけだ。本当だ。信じてくれ」
男は今にも泣きそうになって、必至になって許しを乞う。
「な、もういいだろ?許してくれよ。な、な?」
哀れに見えるぐらい必死に謝る男の姿に、一樹は見下げた様子で「ふん」と鼻を鳴らし、手を離して勢いよく突き飛ばした。
「ひーッ」
男は、ひきつった声を出しながら振り返りもせず、脱兎のごとく走り去っていく。
「ふん、情けねぇ」
一樹は吐き捨てるようにつぶやき、逃げていく男の背中を見送った。
・+☆+・
35/50話
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どうするのー玲二やっつけるの?ハラハラです。
2009/6/2(火) 午前 1:19 [ 893 ]
犯人は玲二さんでしたかー・・・
これからどうして行くんだろーか・・
2009/6/2(火) 午前 6:37 [ - ]
二人の、これからの活動が楽しみ。
玲二と、どう向き合うのだろう?
なぜ玲二が2人を追い込むのか、その辺の理由はこれからなのかな?
2009/6/2(火) 午後 1:00 [ 通りすがり ]
893さま〜☆
りゅうさま〜☆
いつも読んでくれてありがとうございます。
玲二は、一樹とよりを戻したいために、姑息な手段で一樹と裕也の二人の恋路を邪魔をしています。
そして、とうとう執拗な嫌がらせに我慢できなくなった一樹は、玲二のもとへと赴き。
差しで向かい合った二人だけど仲良くなれるわけでもなく、波乱が起きたりいろいろと問題が…
以上が、すごく簡単に書いた、これからのお話です。
つまんないかもしれないけれど、お付き合いしていただければ嬉しいです。
コメありがとうございました。
2009/6/2(火) 午後 11:42