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自宅に着くと、すぐさま自分の部屋に戻ってドアを閉め、ふぅと緊張から解かれた息をついた。
真が、カーペットの敷かれた床にそのまま座ると、汚れた男もあぐらをかいて座った。
改めて武士の格好をした男をまじまじと見る。
変なやつ。
自宅に戻るまで、どれだけ奇異な目で見られたのだろう。
薄汚れた格好のうえに鎧と兜といった身なり。自分の後ろについてくるこの男のせいで、人とすれ違うたびに痛いほど視線を浴びてしまい、顔から火がでるほど恥ずかしい思いをした。
「あのぅ……」
とくに変わった部屋でもないのに、物珍しそうにキョロキョロとしている男に、少し緊張気味で声をかけた。
「まず、どこから来たのか知りたいんだけど」
男はわからないといったふうに、顔を振る。
「俺は……戦をしていたんだ。敵は500人の軍勢。こちらも500人の軍で五分五分の戦いになるはずだった。
俺は敵陣へ攻め込み、そこでやられそうになっていた仲間を助けた。その仲間に礼を言われ、一瞬気が緩んだとき、敵が俺の刀を……」
「刀を……?」
「敵に刀を弾かれてしまったんだ。戦では、自分の命を守る刀は強く握り締めていなくてないけないというのに……。気が緩んでいたんだ。俺はなんて未熟者なんだ。くそッ!」
男は悔しそうにこぶしを振った。
「それで、どうなったの?」
「敵の大きく振りかざした刀。それを俺の頭めがけて……。俺は、殺されると思った。そして死を覚悟したとき、強烈な光が俺を包んで……目の前が真っ白になるほどの光だった。
そこからは、よくわからない。光がやんだときは、先ほどの場所で立っていることに気がついたんだ」
真は喉を鳴らした。
戦とか刀とか。それに、この男の格好。
にわかに信じがたい話しだったけれど、頭の片隅のどこかには、本物の武士かもしれないという考えがあった。
昔、あの公園の場所で戦があったということも考えると、ますます、この男は戦国時代からやってきた武士なのでは……というふうな思いが強くなる。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思っていたけれど、もともと歴史が好きだということが大いに影響していたのかもしれない。
しだいに心臓が早鐘《はやがね》を打ちはじめ、真は思い切って訊いてみた。
「きみの名前は……」
「俺の名は、信長。…織田信長だ」
・+☆+・
4/50話
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