|
まさむッ!
頭に浮かんだのは、まさむの笑顔。
高ぶっていた気持ちが、すぅっと冷めていく。
今まで、軽い気持ちでエッチしてきた克己だけど、浮気などは絶対してこなかった。
男でも女でも、付き合っている恋人がいれば、ずっと一途に付き合ってきた。もし、言い寄られても、気持ちが動くことはない。そして、これからもそうだ。
今、俺が付き合っているのはまさむ。だから、恭介先生とはエッチする気にはなれない。
心地よいキスの快楽から解き放とうと気持ちを引き締め、恭介先生の胸をぐっと力強く押し返した。
重ねていた唇が離れる。恭介先生とのキスで暖められていた唇は、ひんやりとした冷たい外気に触れた。
「克己?」
恭介先生は、どうして?でも言いたげな表情で克己を見る。
「先生。俺、まさむがいるから……そんなことできないよ」
涎れで汚れた口を、手の甲で拭い取りながら克己は立ち上がる。
「ごめんなさい……」
「ちょっと…待つんだッ」
恭介先生は、相談室のドアのノブに手をかけ、今にも出ようとする克己を慌てて引き止める。
しかし、克己は恭介先生の声が耳に入らないふりをし、見向きもしないで「さよなら」だけを言い残し、部屋を出て行った。
|