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そのとき、克己の視界に恭介先生の姿が入った。
克己の前方の、まさむの背中越しから見える恭介先生の姿。じっとこちらを見て、立ちすくんでいるのがわかる。
「ん?どうしたの?」
克己の視線が、自分の顔を通り越して背後に注目していることに気づいたまさむが、後ろを振り返る。
「せんせ……」
克己は、小さく呟いてしまった。昨日のキスのことが頭に浮かび、動揺してしまったのだ。
後ろを振り向いていたまさむは再び前へ向きなおし、じっと重い表情で克己の顔を見つめる。
激しい動揺のせいで、頭が回らずぼうっとしてしまっている克己に、まさむの視線が一点となって注がれる。
固く口を閉ざし、黙ったままで視線を送り続けるまさむ。
きっとまさむは、なにか感じ取ったに違いない。
「ま、まさむ。行こ」
まさむの手を握り、引っ張るようにして教室へ向かう。
恭介先生から早く逃げたいという気持ちから、急ぎ足で教室に入った。
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