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そう、気持ちを強くしてきたはずなのに。

「泣くなよ、海斗。別に一生会えなくなるわけじゃないんだから。3年後、5年後か、その頃また日本に帰ってこられるのかもしれないし」

笑顔が次第に強張った笑いとなり、いつのまにか大粒の涙をポロポロと流してしまって翔に頭を撫でられる。

「ご、ごめん。だって……だって……俺、やっぱり……」

思わず言いかけた言葉を、ぐっとのどの奥でこらえる。もし「翔と離れたくない」と言ってしまったら、ますます翔を困らせてしまうだろうし、自分の気持ちにも収まりがつかなくなりそうだ。

こらえることが精一杯で、顔も上げられず、こぶしを握り締めて小刻みに震える海斗に、翔は微笑みながら静かに見つめている。

「海斗……
昔は、感情をおおっぴらに出すようなヤツではなかったのに、今は素直に自分の感情をだすようになったな。でも、きっと昔から繊細で純粋な心をもっていたと思うんだ。今は、より一層きれいになって輝きを増して……そして他の者たちを幸せにしてくれている。見目より心。人の価値は、姿かたちより心の美しさで決まるものなんだ。容姿なんて気にするな。海斗は十分魅力ある男なんだから……すぐに恋人も見つかるさ」

泣きそうな顔で上を向くと、翔の力強い視線で見つめられ、それは自分に自信をもたせてくれる。

「翔ッ」

たまらず、翔の胸に飛び込み、潤んだ目で視線を投げかける。

「別れのキスだ。それに……すごく愛していると言わせてくれ」

目で訴える海斗の気持ちを察した翔は、ぎゅっと抱き寄せて唇を重ねた。

忙しなく行き交う人たちの中には、男同士のキスに奇異の目を向ける者もいたが、二人にとってどうでもいいことだった。

二人は愛している人のぬくもりを、いつまでも忘れることのないように、強く唇を合わせて激しくむさぼっている。

海斗は、翔の腕がぐっと強く力がはいっているのを感じていた。

さよなら……翔。

海斗は、最後のキスを噛みしめた。


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