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そばにいる孝介が、少し悲しそうな顔しているのに気がついて慌てて唇を離した。

「孝介、ご、ごめん」

孝介が自分のことを好きだと知っているから、素直に謝る。好きな人が他の人とキスをしている姿を見るのは、誰だって嫌なものだ。

「い、いや。お、俺のことは気にすんなって。ほ、ほら……今日が最後かもしれないんだからさ、思う存分キスしてくれ。ははっ」

二人に見つめられ、孝介はガチガチに固まった作り笑いをしながら動揺を隠せないふうに言う。明るい口調だけど、それがかえって孝介の心中を際立てさせた。

好きでいてくれるのは嬉しいけど、俺が好きなのは翔だけ……

重い沈黙が流れる。が、すぐに翔が口を開いた。

「孝介。俺は、お前が嫌いだったけど、海斗にはいつも優しく接してくれた……俺と海斗の別れ話に首を突っ込んだのも、海斗に悲しい思いをさせないためだったんだろ?本当は海斗が好きなのに、俺と別れさせないようにするなんて……とんだおせっかい野郎だ。ま、それがお前のいいところだし、それに安心して任せられる」

「任せる……って?」

孝介は、眉をよせて聞き返す。

「お前、海斗のこと好きなんだろ。だから海斗を大切にしてやってくれないか。もし、あいつが困っていることがあったら助けてやってほしんだ。俺からのお願いだ。海斗もお前のこと、まんざら嫌いでもなさそうだし……」

「翔……」

孝介は翔の意外な言葉に、ぽかんと口を開いたままになっていたけれど、次第に言葉の意味を理解したのか、徐々に満面の笑顔になっていく。

「あったりめぇだよッ。翔に言われなくたって、海斗を大切にするさ。任せておけってんだ。だから安心して、ドイツに行きなッ」

先ほどの作り笑いから本当の笑みに変貌し、鼻息を荒くしてドンと勢いよく胸を叩いた孝介に、翔は目を丸くした。

「お前、ホントに単純なやつだな」

「そ、そっか?」

おどけた孝介のしぐさが面白い。

それまで重たかった場の空気が一気に和み、三人揃って大笑いをした。

孝介のおかげで、寂しい気持ちはなくなった。孝介が、そばにいるだけで自然と笑いが生まれる。

これは孝介のなせる業か。と。

そう改めて感じた孝介の一面に、いっそう親密さが増した。


ちらりと腕時計を見やった翔が、真面目な顔で二人を見た。

「もう時間だ。俺はそろそろ行かなくちゃいけない」

とうとう来てしまった、別れのとき。

緊張がはしり、ごくりと唾を飲み込んだ。


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