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海斗と孝介の二人は、空港の展望デッキから見える飛行機を言葉なく見つめていた。

翔が搭乗したドイツ行きの飛行機は、高々と舞い上がり青空の彼方へと飛んでいく。

「行っちまったなぁ……」

孝介は、空を見上げながら独り言のように言う。

遠く離れていく飛行機は次第に小さくなり、とうとう見えなくなってしまったけれど、それでも二人は目を離すことなく、飛行機が消えていった虚空をじっと眺めていた。

「…うん、そうだね……翔は遠くに行ってしまったんだ」

なんだか、心にポッカリと大きな穴が開いたようだ。

俺の……初めての恋人。そして、愛する幸せを教えてくれた人。

さよなら……

感傷的になってしまってグスンと鼻を鳴らすと、肩にそっと手が差し伸べられた。少し驚き、さっと振り向くと「元気だせよ」と笑みを投げかける孝介の姿。

「孝介、なれなれしいよ。まだ、恋人ってわけじゃないんだからね」

そう言っておきながらも、振り払うことはせず。肩に乗せられた手が意外にも暖かくて、心の隙間を埋めてくれる。

それがあまりにも心地ちいいものだから、身も心も委ねてしまいそうになる。

ま、今日ぐらい甘えさせてもらおうかな。

そんな気持ちになってしまい、ためらうことなく孝介の肩に頬を預けて寄り添う。

自分自身、こんなに自然と孝介に身体を預けられるのか不思議だった。

「なぁ、海斗。翔のことは忘れなくてもいいからさ、俺のことも好きになってくれないか。できたら、俺と付き合ってほしいんだ」

「もぅ。ちょっと油断すると、いい気になっちゃうんだから。俺は翔が好きなの。孝介はただの……ともだち……さ」

付き合ってほしいという孝介の申し出に、最初は強めの口調で跳ね返すものの、最後は自信のない弱い口調になってしまった。

自分の気持ちのなかで、孝介のことはまったくの友達とは言い切れないものを感じている。

ただの友達では絶対味わうことのない、安らぎ感。

こうやって身体を寄せていると、ふぅと深い息を漏らしてしまいそうになるぐらいの安らぎと幸福を心の奥で抱いている。

この気持ちは……もしかして?

「ふふッ」

たった今、自分の本当の気持ちを知って、それがおかしくて笑ってしまった。

「海斗、どうした?」

唐突な笑いに、不可解な顔して眉をしかめる孝介を無視して海斗は声を高くする。

「まあ、孝介と付き合うかどうか、これから考えることにするから。でも、今はこうやって甘えさせてよ。ね?」

付き合うかどうか考える――答えは決まっているというのに。はっきりと言わない自分に意地悪いとは思ったけれど、今はこういう関係でいたい。

孝介の腰に手を回して、さらに身体を密着させて、再び雲ひとつない晴天の空を大きく見上げる。

昔の恋人とは違う、新しい恋人のぬくもりを感じながら……。


<END>


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