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すでに授業は始まっているはず。

しかし、裕也と拓海は、熱く燃えた情事のあとの余韻が冷めなくて、とても授業を受ける気にはなれなかった。

体育館の出入り口にある階段に座り込み、裕也と拓海は肩を寄せて、放心の目で校庭を眺めていた。

まだ、身体が火照っている。拓海も興奮が冷めきっていないのか、身体の熱い熱が、シャツ越しに触れている肩からじんじんと伝わってくる。

もしかして、拓海を傷つけてしまったんじゃないだろうかと、そんな心配が頭をよぎり、反省の色を込めた声で拓海に話しかけた。

「ごめんな、乱暴なことしちゃって……。もしかして、傷つけちゃった?」

「ううん……平気」

言葉数少なく話す拓海だったけれど、先ほどの身体を交えたことを、とくに気にしている様子でもなく、表情は明るく爽やかだった。

見つめる裕也に「あは……」と愛嬌のある笑みを返す拓海。一点の曇りもない笑顔は、あまりにも純粋で、むしろ自分のほうが悪いことをしてしまったという罪悪感にかられて、気持ちが沈んでしまいそうなる。

実際、浮気という、世間から非難されるようなことをしてしまったのだけれど……。

やめとけばよかった……。

後悔の念に押しつぶされそうになりながらも、裕也は重く口を開いた。

「なぁ、拓海。いじめのこと……先生に相談してみれば?」

この学校は、良くも悪くも体面を重んじる学校だ。

世間に、いじめがあるとおおやけにされれば、この学校のイメージに傷がついてしまう。恐らくそうなる前に、学校側はいじめに対して何かしらの対策を講じることだろう。西田に対しては、重い処分が考えられる。

「そ、それは……」

表情が曇り、弱々しく口ごもる拓海。

「大丈夫だって……。いざとなったら、俺がまた助けてやるからさ。だから……勇気をもって、先生に相談してみるんだ」

「…うん。でもぉ、西田くん……怒んないかな」

うなずきながらも、不安げな瞳で裕也を見る。

「大丈夫。そのときは、また俺が助けてやるって」

拓海に安心感をもたせるため、大げさにドンと胸を叩いて、自信ありげに笑顔をつくる。

「ありがと……」

再び笑顔を取り戻した拓海に、裕也もホッと安堵の息をつく。元気を取り戻してくれて、よかった、と。

拓海には、無邪気な笑顔がよく似合う。

無邪気な笑顔は、裕也に大きな自信を持たせてくれた。自分の思い切った行動は、人を助けてあげられたという自信。


裕也は、人一倍正義感が強い。

まだ小さい子どもだった頃、弱い者いじめをしていた年上の、いわゆるガキ大将的な存在のやつらに、真っ向からはむかったこともあったぐらいだ。そのときは、腕力に勝てず、こてんぱんにやられてしまったけれど……。

そんな目に遭いながらも、正義感がくじけることはなかった。

絶対に、悪いやつは許さない。街にたむろして悪さをしている不良たちも、社会の秩序を乱す暴力団も……許さない。

そのとき、恋人の一樹のことが脳裏に浮かんだ。


・+☆+・
13/50話

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