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「もういいよッ。そんなこと話さなくても!」

両耳を塞いだまま、ぶるぶると頭を振って叫んだ。

玲二に拳銃を突きつけられたことや、怖い人たちに尾行されたうえ乱闘騒ぎになったことの記憶がないまぜになってよみがえり、恐怖で身震いした。

自分で訊いておきながらも、一樹の、どのようにして相手を痛めつけ重要な情報を聞きだすか、みたいな話しに辟易してしまった。

毎度のことながら、腕力で物を言わせる風潮のあるヤクザ社会がつくづくいやになる。

今まで思い悩んでいたことが一気に爆発して、半ばヤケになって一樹に問いつめた。

「ねぇッ、もうヤクザなんてやめてよ。一週間たてば、何事もなくヤクザをやめられるんでしょ?無理に行動をおこさなくても、いいじゃない。玲二のことはほっといてさ、二人で静かに暮らそうよ」

今まで溜めていた心のうちをさらけだし、一樹にすがるように訴える。気持ちが高ぶりどっと涙が溢れだす。

しかし一樹は、胸元で泣いている裕也から顔をそむけ、部屋隅に視線をそらしたまま口を固く引き締めている。

「なんとか言ってよッ」

頬を濡らしながら強く掴んだ一樹の肩を大きく揺らすと、気迫に押されたのか、観念したように一樹は静かに口を開いた。

「だめだ。だいたい俺は、組の金をちょろまかした盗人のように思われているんだぞ。そんなの、俺のプライドが許さない。絶対に玲二の野郎を取っ捕まえてやるさ。だから、今はヤクザを辞めるわけにはいかない」

「そんな……」

愕然となり、身体の力がみるみるのうちになくなっていくのを感じた。

奈落の底へ落ちていくとは、こういう気持ちなのか。

いつか、一樹はこの仕事から足を洗ってくれるのでは……という淡い気持ちがあった。

こうして「ヤクザを辞めない」と、はっきり口にだされてしまうとなんとも言えない脱力感に苛まれる。


・+☆+・
40/50話

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