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一樹が住む高層マンションを飛び出した裕也は、あてもなく夜の新宿をさまよい歩いていた。

ふらふらと力なく、足かせをはめられたような重い足を引きずって、一樹のマンションから離れていく。十数分歩くと、高々とそびえ立つ高層マンションの姿さえ見えなくなってしまった。

ばかなことを言ったという後悔が身体中に蔓延し、耳の奥では、一樹が最後に自分を呼び止めていた声がこだまのように鳴り響いている。

街の光も行き交う人々の様子も目に入らず、最後に言った言葉――一樹にさよならと言ってしまったことをひたすらに悔んでいた。

一樹に呼び止められたというのに、振り切ってマンションを飛び出した自身に嫌気がさす。

どうして、あんな行動をとってしまったんだろう?
あの時、思いとどまっていれば……。

街のネオンが明るく自分を照らしても、ぽつんと一人、暗闇の中をさまよい歩いているような孤独感が身を包む。

おそらく一樹は、俺たちの仲は終わった…と思っているに違いない。

数か月前、ベッドのなかで寄り添いながら、一樹が言っていたことを思い出す。

「俺はヤクザ者だけど、そういうのはきっぱりとあきらめるタチなんだ。嫌われたら、お前にしつこくつきまとうなんて、さらさら考えちゃいないから」

そう言っていたわけだから、嫌われたと思っている一樹はきっと、自分を追いかけるようなことはしないだろう。自分から、よりを戻す意思を示さないかぎり。

いや、それさえできないかもしれない。あんなにも、ひどいこと言ったんだ。よりを戻すなんて都合が良すぎる。

初夏だというのに、今夜の夜風はいつもより寒い。これ以上ないぐらい落ち込んでいる裕也は、ぶるっと身体を震わした。

とその時、前方に異質な人影があることに気がついて、びくっと足を止める。

まず見えたのは、高級そうな皮靴だった。いやな予感を覚えながらも、目の前に立つ人物の靴のつま先からゆっくりと頭を持ち上げた。

スーツとネクタイが目にはいり、心臓の鼓動が速まるなか、さらに視線を上方へ移動させる。

「ひッ」

顔を上げた裕也は、思わず悲鳴をあげそうになったのをこらえて、大きく身体を震わせた。背中に冷水をかけられたように、背筋にぞくぞくとした悪寒がはしる。

視界に映ったのは、無表情で顔で見下ろしている玲二の姿だった。

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42/50話

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