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自分からさよならを言っておきながら、困ったときには助けを呼ぶ…なんてわがまますぎるのではないか。

どちらかといえば硬派な考えの持ち主の裕也は、困ったときだけ一樹の助けを求めるなんて、信念のないチャラチャラした男みたいで抵抗があった。

しかし、その一瞬のためらいが助けを求めるチャンスを逃してしまう。

「えッ!?」

人の気配を感じて慌てて見上げると、即座に腕が伸びてきて手に持っていた携帯電話を力強くたたき落とされた。

手から離れた携帯電話は勢いよく飛び、脇のスチール製のロッカーに派手な音をたててぶつかり、それでも勢い余って床の上を滑っていく。

「どこへ、電話しようとしていたんだ」

玲二の鋭い目が裕也をとらえ、今にも殴りかからんとばかりに怒りを露わにする。

「一樹に電話したのか、ああッ?」

「…してない」

玲二の視線から逃げるようにうつむき、ぼそりと答える。

嘘ではない。電話をする前に、玲二にたたき落とされてしまったのだから。

数メートル先の床に転がっている携帯電話をぼんやり見つめながら助けを求める唯一の連絡手段を絶たれ、絶望感で力なく肩を落とす。

「ん、どうした?恋人に助けを呼べなくて、がっかりしたのか」

少し声質を高くして、からかいが含んだ玲二の声が頭上から降ってくる。

裕也は、恋人という言葉にピクッと反応して小さくつぶやいた。

「もう恋人じゃない。一樹とは、別れたんだ」

玲二は、鼻で笑った。

「へッ。そんなこと、信じられるわけがない。昨日、お前が一樹のマンションに入っていくのは知っているんだ。嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつくんだな」

「嘘じゃない。今日、別れたんだ」

一時的に機嫌が良くなっていた玲二が、訝しい表情に変わる。

「ああ?今日別れたってか。ふざけてんのか、お前は。そんな嘘が通用するわけないだろ!」

「いや、本当なんだ。一樹とは、2時間ほど前に別れたばかりなんだ」

「2時間前だと。ふざけるのもいい加減にしろッ。なぜ、そんな嘘をつく?一樹をかばってんのか?」

聞き入れようとしないどころか、ますますヒートアップする玲二に、これ以上言っても無駄だと思い裕也は口をつぐむ。

「まあいい。俺には関係ないことだ」

玲二が内ポケットから、なにやら黒い物体を取り出した。

それは、前にも見たことがある拳銃だった。


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45/50話

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