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一体なにがおきたのか。 裕也は、真っ白になった頭が現実を直視できずにいて、訳もわからないまま、ぼぅと立ちつくしていた。 室内は、たばこのヤニの臭いに混じって硝煙の臭いがたちこめている。 目の前には、仰向けになって倒れている一樹の姿。 玲二は拳銃を構えて、こちらに向けている。 銃口からは、白い煙。 そういえば、鋭い銃声が聞こえたような……。 除々に状況を理解すると、裕也は一樹の名前を大声で叫んで駆け寄った。 痛みで顔を歪ませ、左肩を押さえる一樹の手にはべっとりとついた赤い血。上着には大きく赤いしみをつくっている。 拳銃に撃たれたんだ。 なんだってこんな……。 混乱しながらも、急いで一樹を抱き起こす。 「ゆ、油断したぜ。こ……この俺が撃たれるとはな」 「大丈夫ッ?」 泣きそうになるのをこらえながら、声をかける。このまま死んでしまうんじゃないかと本気で思った。 「だ、大丈夫だ……」 一樹はそう言うものの、顔には苦痛の色がにじみでていた。 額は汗が滲みでているし、血色が悪くなった顔は苦しそうに眉を寄せて深いしわをつくっている。 とても大丈夫そうには見えない。 「ちッ、はずしてしまったか。しかし、次ははずさねぇ」 再び、銃口が二人を狙う。 「どいてろ、裕也」 一樹は裕也を払いのけようとしたけれど、裕也はぶんぶんと頭を振り、一樹をかばうように覆いかぶさった。背中越しに銃口が向けられているのがありありと感じて、ぞくっとした寒気が背筋をとおる。 しかし、これ以上一樹を傷つけさせたくない。 「やだよ。今度は俺が一樹を守ってやるんだ」 「お前……」 振り向いた一樹と目が合い、胸がじんと熱くなった。 やっぱり俺……一樹のこと好きだ。 改めて実感した自分の気持ちに、一樹を守ってやらねばという強い責任感のようなものが、ますます強くなる。 この命を賭けてでも、一樹を守るッ。 こぶしをぐっと強く握りしめた。 玲二が、なにか、周りの異変を感じてピクリと動かした。 そういえば、やけに外が騒がしい。 人の声とともに足音が、こちらへ向かってくることがわかる。 一人や二人ではない、大勢の人の声と足音だ。 玲二が焦りの表情を浮かべながら辺りを見渡す。 「なんだ?」 「一樹……これは?」 不安そうに問いかける裕也に、一樹はニヤリと笑う。 「やっときたか」 裕也に抱えられながらゆっくり立ち上がると、誰に言うふうでもなく口を開いた。 「組長だ。俺はここへ来る前、連絡しておいたのだ。」 その言葉に素早く反応した裕也と玲二がドアのほうに視線をむけると、すぐに黒服の男たちが事務所に入ってきた。 もともとそんなに広い事務所ではなかったので、10人ほど入ると室内は男たちで埋め尽くされる。 「玲二。お前、なにやっているのだ?」 そして、最後にやってきたのは気迫に満ちた老人――儀竜会の組長だった。 ・+☆+・ 48/50話 _/_/_/_/_/ _/_/_/_/_/ □□ □□□ □□□□ これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。 1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。
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2009年06月28日
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